一章 貴方…………もうすぐ死ぬわ②
「そろそろ……の、はず……」
連れてこられたのはさっきの場所からそう
「
「
木々の間から最初に見えたのは、背中に
すげー、ペガサスだ!
朔の言う通り、ちゃんとペガサスがいたってことは、本当にここ、朔の作った『アスラグ』の世界なのか……!?
直後、
パッと見、
ただ、体長が二メートルくらいあって、顔に目玉っぽいのが五つある。
それが三
「あの子は私が
そんな
マジであんな化け物と戦うつもりか!?
「バカ、
止める間もなく、朔はもう一番そばにいたお化けカマキリ(仮)に接近していて、向こうも朔に気付いて、大鎌を
やられる──とゾッとした
「ひょーん!」
朔が
かと思うと、今度はひらりと高くジャンプをし、
「ひょん!」
二
そういえば『圧倒的
「ひょーん!」
「何!? 何なの、この声!? なんでこんな
絶望した顔で頭を
「そういう設定は作ってなかったのか?」
「作るわけないでしょ! 完全にイレギュラーよ!」
どうやら本人にも不本意な発声だったらしい。まあ、シンプルに変だしな。
せっかく息をのむほど
それにしても、ファンタジー世界に来たからって、いきなり剣を
たとえこれがシナリオで確定された勝利だとしても、もっと
やっぱこいつ、ぶっ飛んでる……と、オレが朔のヤバさを
ガクリと
「
ふっと頬をほころばせた朔だけど、立て続けに仔ペガサスが「ハアハアハアハア……」と目をハートマークにして
「ヒヒーン、ヒッヒーン、ハアハアハアハア」
「お、落ち着け、どうどう!?」
押し
「朔、こいつ、ユニコーン混ざってねえ?」
「なん……ですって!? ユニコーンといえば有名な処女
「言い方!」
だが確かにユニコーンは、
だから朔を異常に気に入ってるのか? まだ子どものくせに早熟というかなんというか。
「私の
「ハアハアハアハア、ヒッヒヒーン、ヒヒーン……」
「興奮しすぎだろ、こいつ! こら、おとなしくしろ!」
ユニコーンが混ざったペガサス、言うなればペガコーンは、バサバサッと羽をバタつかせて「ブルルルル!」と
かと思えば、
ハアハアハアハア、と今度はオレの方へ寄ってくる。
「うわっ、なんでオレまで!?」
「少年もイケる口だったみたいね……ロリコン・ショタコン・ペガコーン」
「最低な
「ユニコーンは処女の
朔が鞘に入った剣で仔ペガコーンの角をパコーンと打ちすえる。
ひるんだところをすかさずオレがヘッドロックして、どうどう、となだめると、ようやく落ち着いた。神秘性も何もあったもんじゃないな。
「ブルルル……」
仔ペガコーンは翼としっぽを振ると、こっちだ、と言うように時々オレたちを振り返りながら、歩き始める。
後をついていくと、少しずつ森に
「
どんどん
「なんかこの辺、空気が違うな……」
自然の中だからもともと
空を
うわー、本当に
でも意外と似合ってるかも?
水をすくうと、ひやりと
「この世界は、千年前に魔王ゾディアークによって
朔が仔ペガコーンの首を
同時に、湖の中央がポワンと
「月の女神は、星魔法『
「もしかして、それがこの湖?」
「そういうことね」
次の瞬間、湖の水がザアアッと朔を中心に左右に真っ二つに割れた。
うおおお、モーゼの出エジプト!? これは熱い。
湖の底の中央には、
「……! ……! ……!」
朔は無言で顔を
やがてふうっと息を
こいつ、表情はいつもほとんど動かないけど、感情はわかりやすいんだよな。
今も
水深は一番深いところで俺たちの身長の二倍くらい。
割れた湖の
水の壁に
やがて
「千年の
朔が剣を引き
少しして視線を
えーと、設定を整理すると、地球で生きてた『最上朔』の前世が、今のアスラグの
いくつ前世があるんだよ! つくづく転生大好きだな、こいつ……。
「……近くで見ると結構ボロボロなんだな、それ」
神剣の剣身は
「まだ本来の力が
なるほど、そういう仕組みか。
しかしながら、ここまで朔が話している通りの出来事が続くということは、この世界は朔が創作した厨二小説の世界であるというのは、認めざるを得ないようだ。
……いや、待てよ。
今までは朔のこと、ただの厨二病だと思ってたけど、この世界は創作じゃなくて本当に朔の前世の世界で、実は朔は前世の記憶持ちの転生勇者だった──なんて可能性もあるのか?
…………いやいや、まさかな。だってこいつが昔、ノートに色んな単語を書き連ねて
朔はただの
オレたちが湖の畔まで帰ってくると、湖底の道には左右から水が流れ込み、湖は何もなかったかのように元の静かな姿を取り戻した。
「で、これから朔はその神剣を持って、魔王を
「壱星だって、『十二聖』の中の一人、
「
「『十二聖』は転生じゃなくて、力が代々引き
そこまで話したところで、ご
「なんだ、どうした!?」
「た……たたたった今、思い出した事実があああるのだけ、ど……おお落ち着いて、ききき聞いてく、れる……?」
「いやおまえこそ落ち着け! ろれつがまともに回ってないぞ?」
朔はブルブル震えながら、視線をキョロキョロと
「とりあえず、深呼吸したら?」
「そそそ、そうね……」
すーはーすーはー、と大きく息を吸って吐いてを繰り返してから、朔は
「あのね、壱星。
…………は!?
「約四ヶ月後、私たちは復活してしまった
説明しながら、
「
「……もしかして、双子の利点を生かし、朔のふりをして身代わりになって、魔王に殺される……とか?」
声を震わせて引き継ぐと、朔はコクリと頷いた。
「前半最大のクライマックスシーンよ」
「………………………………………………………………………………………………」
「………………………………………………………………………………………………」
「…………………………ひ」
長い
「人を勝手に殺すなーー!」「殺すなー」「殺すなー」「すなー」「なー」
オレの全力の
双子転生 厨二な姉が創った異世界で、オレはまさかの死亡エンド!? 藤並みなと/角川ビーンズ文庫 @beans
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