南都編 その7 冬、そして鍋と言えば・・・

「えっ、お前ら全員帰っちゃうの!?」って感じの顔をする王様に見送られ、王城からお家に帰宅したあと真っ先にすることはといえば


「婿殿、小腹がすいた、むしろガッツリと空腹なのである!」

「去年まではそうも思わなかったが一度あの甘ったるいだけ、香辛料臭いだけの料理に疑問をもってしまうと食してはおれん味だからな」

「確かに、ここで出る薄味な中にも滋味深い食事に慣れると家での食事が味気なくて叶わぬ」

「いや、どこのご家庭でも出汁さえちゃんととれば同じ味になりますからね?」


義実家のみんなを含めての夜食タイムである。

『そもそもどうして全員うちに集合しているのか?』などはいつものことなので考えないものとする。

てか屋敷にいる時はいつも結構な人数での食事になるからうちの大食堂、ホテルのレストランのバイキングコーナーみたいにいっぱい机が並べられているという。

料理?相変わらず作り置きのある軽食(飲茶フルコース)を並べた。

もちろんそれだけじゃないんだよ?だって今日は


「ちょっとテーブルの真ん中に調理器具を並べますのでひっくり返さない様に気をつけてくださいね?」


火の魔道具こと『ちょっとお洒落なカセットコンロ』を各ご家庭で集まってもらった食卓の上に並べ、その上には大きめの土鍋、そしてお出汁を注いだら切り分けた野菜、メインとなる『ズワイっぽい蟹』が乗ったお皿をでん!と置いていく。


「いつも海老ばっかり食べてる気がするので今日は蟹にしてみました。中の出汁が煮立ったらさらに味が出るように蟹のお腹の身を適当に放り込んでお好きな具材を煮込んで召し上がってください」

「まさかの蟹ちりっ!?足のサイズでかっ!?タカアシガニサイズだとっ!?・・・閣下、も、もしかして、もしかするとですが、おこめなども・・・」

「ほう?ヤマナシ姉は米を知っているのか?向こうの桶の中に炊いたものが入っているから好きなだけ食べると良い」

「知っているどころか私の地元の主食であります閣下!!うう・・・商国でも見つけられなかったお米・・・まさかここにきて、それも蟹ちりと一緒に・・・閣下、この身、AN○というA○Aをすべて捧げさせて頂きます!!」


家族の前で航空会社からお叱りを受けそうな発言はやめろ。


「ううう・・・おこめ・・・かに・・・おやさい・・・」

「俺がいつも何も食べさせていないと思われそうだから泣きながら食べるの止めて?」

「鍋・・・具材から染み出したすべての旨味が渾然一体となってこれはもう天地創造と言っても過言ではないのである!」

「いくらなんでも大げさすぎます。あといつもの馥郁どこいった」

「蟹・・・まさかこのようなものを隠していたとは・・・」

「隠してたんじゃなくて海老よりも生息域とか美味しい季節が限られてるので仕入れにくいんですよ」


エルドベーレでも大漁!ってほどはとれないんだよねぇ、ズワイっぽい蟹。

たぶん皇国の方ならもっととれるとは思うんだけどね?ほら、国交とか無いじゃないですか?何故だかお姫様はうちにいるのに。

商国の方ではワタリガニ、ガザミ系?の蟹がいっぱいとれるみたいでこちらも大量に仕入れてある。

「蟹食ってるのにみんなよく喋るな?」って?

そもそも足の身は全部むき身になってるしお貴族様は腹(肩?)の身にむしゃぶりついたりはしない・・・いや、馥郁おやじことブルパパは普通に食ってるけれども。あとヤマナシ姉も。 


「閣下、最後におうどん、やっぱりぞうすい、でもおうどん、しかしぞうすい・・・ううううう」

「だからどうして泣くんだよ!」

「だって、だってどっちでシメるか選べないじゃないですかっ!!」

「知らねぇよめんどくせぇな・・・両方食えばいいだろうが」

「その発想はなかった!?」


確かに俺も迷うけどさ・・・。



てことで翌日の朝。いや、あれからおっさん連中と一緒に風呂に入ってだべってたらいつの間には寝ちゃってたからさ。

飲めもしないのに付き合いで飲酒とかするもんじゃないな。

新年早々おっさんと雑魚寝で姫様たちと始める的なイベントは無かったのである。


「そろそろ一度くらいお姉様方とお風呂とかあってもいいと思うんだけどなぁ」

「いいわけがないでしょう!」


朝から元気なフィオーラや


「てかミヅキ、昨日はビックリするくらい食って思いっきり腹がぽっこりしてたのにもうもとに戻ってるんだな?いっぱいう○こしたのか?」

「我はそのようなことはせずともすべて体内にとりこめるからの!」


不思議生物代表のミヅキや


「ふふっ、ハリスちゃん、去年も一緒、今年も一緒、来年も一緒、死ぬまで一緒、死んでも逃さない・・・」

「おめでたい雰囲気ぶち壊していきなりヤンデレるの止めて?」


相変わらずなリリアナや


「今日はちゃんとお洋服を着れて偉いね?」

「私、ちゃんと毎日服は着てるよね!?」

「でも下着は着けてないよね?」

「・・・着けてるよ?」


何故か少し返答まで間のあったヴェルフィーナや


「こうして年明けから顔をあわせてほほえみ合う相手がいるというのは・・・とてもいいものだな!」

「わたしがいるからお姉様はもうお城に帰ってもいいのよ?」

「帰らないからなっ!?」


どうしてだかいついた王族の二人・・・いや、アリシアはちゃんと奥さんだからね?そんな捨てられた子犬みたいな顔しなくても大丈夫だからね?


「むぅ・・・いつのまにかマリンよりミーナの方が出遅れてるのです!やはり一番に懐妊しないとこの遅れは取り戻せないのです!」

「物騒な発言はお控えください」


今年で九歳になったヘルミーナ嬢や


「こうして家族と迎える新年は賑やかでいいわね!そういえば・・・ハリスも私以外の親類はもういないのよね?」

「うちの親は一応死んではいないんだけどね?上の兄貴も元気に働いてるし。そして親類といわれるとドーリスも親類なんだけどね?」

「それは『ハリスちゃん、お姉ちゃんとあなたは血の繋がった姉弟なのよ!』プレイがご希望と受け取ればよろしいのでしょうか?」

「そのプレイについてもう少し詳しく!」


遠い親戚であるヴィオラとドーリス・・・リリおねぇちゃま、そんなプレイはしませんので食いつかないでください。


「閣下!足元がすーすーして頼りないです!大至急鎧着用の許可を!」

「うむ、確かにあまり落ち着かないな・・・私も鎧を着たいのだが?」

「部屋にいるときは二人ともすぐに脱ぎたがるくせに」


お家の中&お祝いなので珍しくドレス姿のメルティスとサーラや


「厚かましくもこのようなお席に混ぜていただいてもよろしいのでしょうか?」

「もちろん。俺が望んで連れ帰ってきたんだから堂々としてていいんだよ?」

「ハリスさま・・・」

「トゥニャサ・・・」


「それだとまるで私は勝手についてきたみたいに聞こえるのだけどな?」

「そうだワン!でもケーシーはちゃんと連れてきてもらったんだワン!」

「私は閣下のお側に置いて頂ければそれ以上多くは望みませんので・・・」

「わ、私も!追い出されなければ大丈夫です!」

「大部屋ではなく個室を頂けましたこと感謝致します閣下」


癒やし担当のトゥニャサ嬢と勝手についてきた代表であるわん子とその飼主の黒い人&付き人の地味子一号。

白い人はマジでお城に帰って?そしてヤマナシ姉、使わせたのは客間であって個室ではない。

なんだかんだで人数増えたなぁ・・・。

そもそもジョシュアじーちゃん以外、メイドさんも護衛の騎士さんもほとんど全員女性ばっかりの屋敷ってあまりないんじゃなかろうか?


「さて、まったく行きたくはないけどこれから新年会だから全員ドレスにお着替えしてね?」


まぁ住んではいないけど頻繁に訪れてくるおっさんはいっぱいいるんだけどな!


―・―・―・―・―


蟹のお腹を『しがむ』って言って伝わる読者様はどれくらいいるのだろう?

そして登場人物が多いと打ち切りエンド感を半端なく感じるのは自分だけなのだろうか?(笑)


あ、知らなかったんですが『マリーシア』ってサッカー用語と言うかブラジル語(?)らしいのでちびシア殿下のお名前が『マリンシア』に変更されましたm(_ _)m

『ずる賢い』って意味らしくてピュアなちびシア殿下には似合わないと思いまして・・・。ピュアとはいったい(笑)

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