北へ南へ編 その15 勇者降臨
外交目標としては予定通り、むしろ商国内にいろいろと楔を打ち込めたし予定以上の成果を出したと思うので後は珍しい農作物を中心にいろいろなモノを仕入れて王国に帰り南都の様子を見れば王都で年末年始のパーティと言うそこそこ過密なスケジュール。
もちろん今年も途中で抜けてやる気持ちマンマンだけどな!
あんなおっさんばかりの臭そうな集団と年越しなどしたくはないのだ!
まぁその前にトゥニャサお姉ちゃんの爺さんが伝えてきた『商議会大会館での歓迎パーティ』に参加しないといけないんだけどさ。
ん?どうしていきなり遠い目をしながら年末年始(来年)の予定の話を始めたのかって?
いや・・・ねぇ?
あれだけ『余計なことをすれば遠距離からでも商都全域を、むしろ海岸線沿いの街や漁村全てを焼き払うことが出来るからいらんことはするなよ?』って伝えてあったのにさ。
「お前がき、きる・・・ナントカ王国から来た貴族か?お前の所の王子から噂くらいは聞いてるかもしれないが俺が勇者だ!」
「ハフィダーザ、頭のオカシイ子供は門でちゃんと止めないと駄目だろ?」
「申し訳ございません閣下!しかし商国内ではこの者を商議員同等の扱いをするよう通達されておりまして」
「子供はお前の方だろうが!失礼な奴だな!」
見ての通りの『勇者様降臨(大惨事)』なのである。まずは『失礼』の意味をサ○ァリで検索してから出直してこい。グ○るんじゃないのかって?だってこいつ、見た目的に絶対にAndr○idじゃなくiPh○ne使ってそうなタイプじゃん?
そして『iPh○ne使ってそう』の言葉からも分かるようにこの子供、現地産の勇者じゃなさそうなんだ。
昔俺が異世界転移した様に地球から来た(連れてこられた?)、それも髪の色や目の色からするとアジア地域、たぶん日本から来た異世界産勇者っぽいんだよね。
いや、もう何ていうの?
出会って五秒なのにその言動全てが非常に痛々しいんだけど?
言葉遣いはコレだし服装が『某電脳世界でデスゲームをさせられていた黒い剣士』の丸パクリと言う。特注で作って貰ったのかな?
でもその衣装は着る人間の顔をとことんまで選ぶと思うんだ。ストレートに伝えるなら『短髪で丸顔』の人間には絶対に似合ってない。
あと俺が大好きなのは『デスゲーム』をしていた作品ではなく『デスマーチ』をしていた作品なのである。
でもデスゲームのヒロインの人の薄いほn・・・多方面から全力で叱られそうなのでこの話はこのへんにしておこう。
てかさ、他国の貴族に対してタメ口。こいつ小学生じゃなく高校生なんだよね?もしかしてこの国のえらいさん(笑)に『楽に話してもらって構わない』とか言われて真に受けちゃってる感じなのかな?
そんなんだとコン○ニバイトの面接にも落ち・・・ないか。たまに(二重の意味で)言葉が通じない人がレジ打ちしてたもんな。
ちなみに言葉が通じないのは客の方にもいるので意思の疎通がほぼ不可能な事もあると言う後ろに並んでる人間にとっては完全な地獄。
そしてその馬鹿の斜め後ろには頬を染めて薄笑いを浮かべる黒髪長髪の『なんちゃって閻○あい風』女子高生。
なぜ女子高生とわかったのか?だって高校のブレザー着てるんだもん。二人の衣装に対する温度差が凄い。
あと女子高生の反応(頬を染めてる)の意味がわからなさすぎて怖い。
「それでそのバカ(勇者様)が私になんの御用なのかな?玄関先を見てもらえば分かるようにそれなりに多忙なのだがな?ゴッコ遊びがしたいなら卿が世話になってるこの国の商人の屋敷の中だけにしておいて欲しいのだが?わざわざ他国の人間に恥部を晒すこともあるまい?」
「おい、この子供やたらと偉そうだぞ!?ふんっ、俺が腰に差してるこの赤い剣が見えガハッ!?」
このバカ、それでなくとも微妙な関係の隣国の貴族の前でいきなり抜剣したぞ?
・・・もちろん音もなくサーラが動いて剣を『拳で』叩き折った上でバカを壁に叩きつけたけど。
「閣下、そこの女ともども細切れにいたしますか?」
「いや、全裸にしてその辺の道端で磔にでもしておけばいいよ。ちゃんと『私は他所の国の貴族様にいきなり剣を向けた無法者です。あと小さいです』って札を足元に添えておくようにな」
サーラがバカ改めゴミの足を持って引きずりながら、ハフィダーザが微妙に扱いづらいモノを扱うように先程よりも顔を紅潮させている女子高生を部屋から連れ出そうとしたところでその子が口を開いた。
「暴虐の限りを尽くす自称勇者より助けて頂きありがとうございます王子様。月見里真利杏(やまなしまりあん)16歳、今日この時、貴方に出会うために生まれ純潔を守っておりました!今すぐ連れ去ってください」
「君は俺が連れ去るんじゃなくてそこのおじさんに連れ出されるんだけどね?」
オカシナ人間のツレもやはりオカシイわけで。
勇者様(アレ)よりこっちの子の方が内容物が濃いだと・・・?
全力で関わり合いになりたくないのでそのままハフィダーザに捨ててきてもらった。
もちろんその日のうちに『おたくの国で飼っている自称勇者がうちの屋敷に来て剣を抜いて騒いだんだけどどうしてくれんの?(サーラが叩きつけた時に)家の中が汚れたんだけど?もしかしてあいつは暗殺者なの?』って手紙を商議会に送りつけたらその日のうちに三十人くらいのおっさん&じいさんが『王国の第二王子を伴って』屋敷まで謝罪に来て庭で額を地面に擦り付けたと言う。
そろそろ晩飯時だと言うのに迷惑な連中である。
「ラポーム候、あれは商国でもかなりの鼻つまみ者でな。行き倒れていたのを保護してしまったからには追い出すわけにもいかずこの国でも難儀をしておるのだ。『他所の国の人間』なのでこちらの常識に疎いところもあるが根はそれほど悪い人間ではないのだが・・・。どうだろう、此度は私の顔に免じ無礼を許してやっては貰えぬかな?」
「そうですね、殿下がそこまでおっしゃるなら・・・この国の年間予算三年分、または保護しているという商人の全財産で手をうちましょうか」
「なっ!?さすがにそれは・・・」
家にやってくる前に議員連中から『それなりの贈り物』でも受け取っているであろう第二王子の顔色が少し悪くなる。
んーこの状況でもまだ王国ではなく商国の肩を持つのかこの人は。国王陛下には悪いけど性格矯正は諦めるべきかなぁ。
まぁ俺の交渉相手は王子ではなく商国人なんだけどね?
「まさか一度ならず二度までも王国よりの使者に刃を向けておいて商議会とやらはその程度の謝罪も出来ぬと?」
「決してその様なことはございません!閣下の寛大なお心遣いに感謝いたしまして大至急お気に召しますよう取り計らいさせていただきますれば」
さすがに今回のこと、異世界人がいきなり暴走したことでこの国を咎めるのは酷なのでは・・・なんて思ってる人もいるかもしれないけどさ、俺的には今回の戦争に商国と第二王子が(陰から)加担した要因の一端が垣間見えた気がする。
ほら、所謂『異世界チート』だと思うんだよ。
もっとも魔法のある世界で高校生レベルの知識で再現できるような科学力が何の役に立つかは疑問ではあるんだけど・・・。まさか大商人連中の前で『金貨はこうやって十枚重ねれば数えやすいよ!』とかやったわけじゃないよね?
てかあいつ(勇者)、自慢げに剣を抜いたところでサーラがワンパンでのしちゃったから全然話を聞けなかったけどそもそも何をしに来たんだろう?
―・―・―・―・―
ここに来てまさかの勇者登場!からの即時退場と言う。
商国には商国でそれなりに戦争に巻き込まれても勝てるであろう『勝算(武器)』があったのだ!
・・・あくまでも『お前(商国)の中ではな!』なんだけどね?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます