北へ南へ編 その1 まずは港を設置します

魔物は出てくるわ、皇女様は出てくるわ、内乱に巻き込まれそうになる(むしろ巻き込まれた)わ、皇帝は死にかけてるわ、ちょっと王国からトンネルを通した話をしにきただけなのにそこそこの騒ぎに巻き込まれた今回の帝国行き。途中で二度ほど帰ってるのはご愛嬌。

てか王国に戻った翌日には相変わらず王国の重鎮の方々がうちに揃うんだけどさ。


「いや、繰り返しになりますが報告は私が!ちゃんと!普通に!王城まで!伺いますので、毎回毎回うちに集まらなくとも大丈夫ですからね?」

「城なぁ・・・何というか固っ苦しいんだよなぁ」

「そもそもお城ってそう言う場所だと思うんですけど。気楽に『今日は家族でお城に遊びに行くか!』とはならないでしょう?あと、お努めのみなさんも頑張ってらっしゃるんですからわがままを言わないでください」


「だって帝国皇帝も譲位するらしいし?わしも今年いっぱいで隠居してここで暮らそうかなぁ」

「父上、王城のトイレが気に入らないと言うだけで駄々をこねるのを止めてください」

「あと隠居したとしてもここで同居はしませんからね?いや、そもそも娘婿の家じゃなく老後はご長男を頼って頂きたいんですけど・・・。まぁ南都がもう少し人が増えて発展すれば保養地としてちゃんとお屋敷をご用意いたしますので二、三十年お待ちを」

「先の長い話だな!?」


「わたしはもうここで暮らしてるのよ?」

「それならわしも構わんのではないか?」

「どうしてちびシア殿下は家主が知らないうちに勝手に住み着いてるんですかね・・・あと子供がお泊りにくるのと国王陛下が御成になるのでは意味合いが全く違いますからね?」


「殿下が良いのならついでにうちの娘も全員ここで面倒を見てもらうというのも良いかもしれないのであるな!」

「全然良くないんですけどね?そもそもその子、勝手に居付いてるだけですし。あと俺、帝国では完全に『小さい子好き』扱いされてましたからね?まぁ原因の半分は某正室のせいなんですけど・・・」

「うう・・・ただただ孫娘と一緒に暮らしたいだけの老い先短い爺を追い出そうとする・・・なんと人でなしの婿じゃろう・・・」


「あんた健康そのものだろうが!」

「酷い・・・わしが、わしが一番お義父さんなのに!あれだぞ?わし、国父だぞ?」

「それを言うなら一番お義父さんなのはガイウス様なんだよなぁ。だって俺の名前にも『ガイウス』って入ってますし」


何か王様が白い神様(ミヅキ)だか白い悪魔(アム○)だかみたいなこと言い出したんだけど・・・。

そして今回の帝国との通商関連の交渉は俺の担当じゃなくヴァンブス公爵の担当だから俺が報告することは特にないんだよなぁ。

大勢でわいわいするのも、もちろん嫌いじゃないからいいんだけどね?なんだかんだで全員家族だからさ。だからご飯食べたら帰ってね?


まぁそんな王都での一幕は置いておくとして・・・東都である、いや、東都じゃなく港町エルドベーレだな。

前回の帝国行きにはブルパパに同行してもらったように今回は『港の整備と新しい軍艦の建造』と言う結構な報連相が発生する一大プロジェクトとなるのでフリューネ侯爵(マルパパ)に同行していただくことに。


「じゃあこんどはおねえちゃまとお出かけだね!」


・・・うん、そうだね、前はヴェルフィーナも付いてきてるし普通にリリアナも付いてこようとするよね?東都には寄らないけど里帰りみたいなものだし特に文句は無いんだけどさ。

いや、そもそもリリおねえちゃまに関してはずっと王都で暮らしてたような・・・。

言うまでもないが今回もミヅキ帯同である。

あ、後今回は国内だし工事もしないといけないので精霊さんにも全員に声をかけておく。


精霊さん、特に土木工事に関してはウサギさんを見返りも無しにこき使ってる様で非常に心苦しいんだけどさ・・・俺の魔法だけより圧倒的に効率がいいんだよなぁ。

一応おやつ(属性の魔水晶)食べ放題、ブラッシング(もふりタイム)完備ってことで納得はしてもらっている。そして建設向きじゃない火のにゃんことか風の子ペンちゃんがちょっと寂しそうに部屋の隅で小さくなると言う。でも寝る時は全員一緒だしな!

もうこれ完全に小動物カフェだからな?普通にお金を払うレベル。


てことで現地と言うかペルーサ商会まで転移、伯爵邸に寄って黒馬車で軍港予定地・・・と言うか今でも軍港として一応は稼働している場所まで移動。

季節的にはそろそろ冬の海だからさ、雪はまだ降ってないけどそこそこ波も荒いし、むっちゃ寒し・・・。

そしてそんな集団をお出迎えするのは


「これはラフレーズ伯爵閣下・・・に、フリューネ侯爵閣下にラポーム侯爵閣下までお揃いで・・・も、もしかして軍船の新造が決定いたしましたか!?」


王国海軍筆頭のセグラース子爵とその配下の海軍武官たちである。

いや、見た感じはどこからどう贔屓目に見てもただの海賊なんだけどね?

ほら予算がないから装備品がさ・・・。一応コレでも全員王国の貴族なんだぜ・・・。


「久しぶりですね子爵、少し帝国まで出向いていたので遅れましたがちゃちゃっと用意しますね」

「はっ!ありがたいお言葉・・・ですがまずは船大工を商国なり皇国なりから連れてまいりませんとどうにもならないと思うのですが・・・」

「普通ならそうですね。そもそも船大工もですが大型の艦船を停泊させるために港の拡張・・・海底をさらって吃水の深い船でも直接横付け出来る桟橋をつくったり、それに伴い大きな波が押し寄せないように消波堤をつくったり、もちろん造船用の施設も必要ですしね?」

「そ、それはなかなかの大工事・・・我々の代ではなく息子の、下手をすれば孫の代までかかりそうな壮大な計画ですな!!」


孫の代までかかるとか言いながらも何故か嬉しそうなセグラース子爵たち海軍軍人さん。今までほぼ放ったらかしだったもんね?

まぁ人力だけで実行するならちょっとくらい魔法使いがいても一年、二年で完成するようなものじゃないのは確かだけど俺には精霊様ブーストがあるからね?


「てことでまずは近辺の海水を引かせます。・・・ラッコ先生、よろしくおねげぇいたしやす」

『キュキュッ!』


俺の頭の上に立ち上がって腕を組み、元気にそう叫ぶラッコちゃん(久々に登場)だった。

いや、誰にも見えてないんだけどね?むしろ頭の上だから俺も見えてないという。

そして『ゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・』と言うお腹に響く音とともに少しずつ軍港より引いてゆく海水。

気分はちょっとしたモーセである。


「ほう、さすがは精霊様のお力。港から潮が引いていく・・・いや、遠くてハッキリとは見えていないが引いた後の潮が壁のように留まっていないか?」

「まぁうちのラッコちゃんは出来る子ですから」


あっという間におよそ二キロに及ぶ砂浜の完成である。

マルパパは慣れてる(諦めてる)のでそれほどの反応はしてないけど他のエルドベーレ組メンバーは目を見開いて口を開いていた。


「主よ、海の底に・・・元海の底だった所に何か色々と落ちておるぞ?」

「とりあえず全部回収しておくか?金目のものは俺のもの、水死体とかは伯爵家のものってことで。あ、でも生き物はしまえないんだよなぁ。よし、近隣住民を集めて海産物つかみ取り大会でも開くか?」

「死体もそちらで供養してもらいたいのだがな!?」


Q:いや、いきなり海の水を引かせるとか行き交ってる商船とか漁船は大丈夫なのか?

 A:軍用の港と商業用の港はそれなりに離れておりますのでそれほどの問題はないです。漁港に関してはさらに遠い(村々に点在)のでまったく問題はないです。


わざわざ海の壁(?)まで近づいてそこから落ちるような奴は自己責任だ。

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