東へ西へ編 その18 突撃!うちの晩ごはん!(食後)
どうしてだか王国貴族慰安会(ただの晩ごはん)に帝国の皇族が参加希望(希望だけじゃなく勝手に参加してたんだけどね?)というよくわからない状況の食事会も終わり・・・そもそも食事会ってか事後報告会だったんだけどさ。
姿勢を正した皇太子殿下がこちらに頭を下げながら
「ラポーム候、今回は関係のない卿等まで帝国のごたごたに巻き込んでしまったこと誠に申し訳ない。そして妹のみならず私の命まで救ってもらったこと、個人として、そして国家として心底より感謝する」
「はっ、皇太子殿下よりのお言葉、このハリス、一言一句違えず受け取らせていただきました!」
てかこの皇子、会う度に謝罪してるよな。
次期皇帝でさえこんなに苦労するんだから人の上に立つなんてやっぱり面倒なだけでろくなもんじゃないのが良く分かって他人事ながら少々憂鬱になりそうなんだけど。
「なお此度の首謀者たるチェルヴォ迷宮都市の元領主であるクレスト元伯爵、及びその繋累については五親等まで辿り全員処刑とし帝国全域に捕縛命令を出している。・・・なので少しだけ時を貰っても良いかな?」
「五親等ですか・・・そこそこの大人数になりそうですね。了解いたしました、まぁ今回のことは帝国内のことでありますので私からは特になにもございません。ああ、もし捕縛に失敗して一人でも逃げおおせた際にはご連絡を。草の根わけ・・・るのは面倒ですので草ごと、むしろ生育地の近隣一帯焼き尽くしてしまいますので」
「そ、その様な心配は無用に願いたい。うちには優秀な宰相がいるからな!」
「そこで私に振るのですか!?・・・帝国の軍属全軍を総動員して必ずや達成させていただきます!」
「しかし卿はあれだな、普段はのんびりとした好青年と言うか美少年にしか見えぬのに事が起こると、特に側にいる女性が関わると人が変わる、むしろ人では無くなったかと思われるほど雰囲気が変わるのだな?いや、その女性の方も人では無くなっていたが」
「ティア、言い方!言い方をもっとこう貴族的な湾曲したものに変えられなかったのかな?むしろお前の最近の発言は全て失言でしかないという自覚を持ったほうが良いのではないかな?」
貴族的と言うと『おっとりした方どすなぁ(とろいなお前、○ね!)』とか『おおらかな方どすなぁ(とろいなお前、○ね!)』とか『のんびりした方どすなぁ(とろいなお前、○ね!)』そういう感じのやつだよね?
いや、別に皇女様の何気ない、素朴な疑問でいきなりキレたりしないからそこまで気を回さなくとも大丈夫ですからね?
むしろ他国の皇族のちょっとした言い回しでキレるとかどんな沸点の低いマッド野郎だと思われてるんだと小一時間・・・。
ん?王宮での食事会の時?そんな昔の事は忘れた。
そう、大切なのは過去ではなく未来なのだから。
「そうですね、私は・・・そう、私の妻を!全員心の底から!愛しておりますので」
「そ、そうか、『全員』の部分にいったい卿の嫁は何人くらいいるのかと、そこはかとない不安を感じないでもないが、それは何というか・・・うん、とても、そう、とても心強いな!これからは、いや、これからも・・・よろしくたのむ、ではなくよろしくお願いします」
「はい?ええ、皇女殿下に言われずとも最初からもちろんそのつもりですが」
「そうかそうか!では嫁入りの日取りの話になるが」
「えっ?」
「えっ?」
「ティア、お前は本当にアレだな!私はちゃんと説明したよな?あくまでも『婚約者候補的な感じの存在として王国に一度遊びに行ってみる感じのアレで』と!」
「兄上、話に『感じ』と『アレ』が2度も入っていて少し頭が悪そうな感じのアレになっておりますよ?」
「皮肉を言っている場合では無いのだがなっ!?」
さすが王国でも『あの』と呼ばれている皇女殿下である。
なかなかに空気を読まないと言うかちゃんと読んでおいてあえて無視してくる。
おかしいな、初見ではもっとこう『カリスマ性のある出来る皇女様』って雰囲気だったのに・・・まぁそれを言うならうちの王女様もたいがい『どうしてこうなった?』状態なんだけどさ。
何というか捕縛されてるくせにのびのびと自堕落な生活をしている皇国の白い人も含めて俺の知っているお姫様の見た目に反してのポンコツ具合が酷すぎる。
そして2人で交わした婚約破棄同盟、事前通達もなく一方的に破棄である。
・・・まぁ最初からそんなに信用はしてなかったんだけどなっ!
「ま、まぁそのへんのご兄妹でのお話は私の居ない時にでもごゆっくりと・・・ほら、気付けば随分長くこちらで(エオリアが)お世話になりましたし、外交的な話も(エオリアが)纏めておりますし、我々はそろそろ一度王国に報告に戻ろうかと」
そして俺はもう帝国には公式な訪問を二度としない事で皇女様とは疎遠に・・・いや、このお姫様何かの際には家出も辞さないタイプだから疎遠になれなさそうだなぁ。
「そろそろ戻るも何も君は半日前にこっちに来たところだよね?」
「そうだワン!そろそろお家に帰るワン!!」
「わん子の帰るお家は獣人国・・・いや、素行不良で追い出されて家なき子なんだったか。まぁペット枠としてなら連れて帰っても良いような良くないような気もしてきたけど」
エオリア、いらんことを言うんじゃない。
あと語尾のワンがそこそこ板に付いて来てるぞわん子。
てかわん子、少し鍛えれば十分以上に護衛として役に立ちそうではあるんだよなぁ。
ほら、なんだかんだで現状屋敷内の警護を安心して任せられるのってメルティス、サーラ、ミヅキしかいないじゃん?
メイドさんの一部もそこそこ武芸に達者ではあるし、アリシア経由でお城から百合百合した感じの近衛騎士団も派遣されてるんだけどね?
ミヅキに関しても直接攻撃的なモノじゃなく補助的な捕縛特化って事なら十分過ぎるくらいに強いし。
てか奴は絶対に第2形態を残している、と言うか間違いなく『どデカい蛇状態』に変身出来ると思うんだ。
「いや、そもそもハリスはこの一週間色々な報告の為に王国に戻っていたのだろう?ならまた少々国を留守にしたとしても別にこれと言った問題は無いのではないか?」
「え?違いますけど?そもそも王国と言うか王都には戻ってはおりませんよ?南都の私の屋敷で2人・・・プラス1人といちゃいちゃしてただけですし?」
「えっ?私がこんなところでこれほど一生懸命に頑張っていたのに自分だけ爛れた生活を送っていたとか何それズルい!と言うかプラス1人と言うのは何なんだ!!」
「ティア、お前はラポーム候がいつ戻ってくるのかと日がな1日ソワソワしていただけで特に役立ちそうな仕事は何もしていなかったよな?あと今回の騒動の原因の何割かは自分にもあると言う自覚を持ってほしいのだが?」
何って言われても・・・俺が留守の間ずっと南都で農産物の回収作業とか他所(奥さん家)から来た新人メイドさんの教育を頑張ってくれてたドーリスをのけものにするなんて出来ないし?
あと王国から出れないらしいラッコちゃんとかほぼ実家に帰ってないであろう他の精霊様とか新犬?の黒柴ちゃんと遊んだりも忙しかった!
・・・もちろん王都屋敷で待ってるみんなにバレたらどうして王都に戻らないのかと詰められる、むしろ絞られるんだけどね?性的な意味含めて。
「そもそもそんなに嫁がいっぱいならわたしが増えるくらいは何の問題もなさそうなので連れて帰ってもいいと思うワン!!」
「ケーシーがそれでいいなら私もペットでいいにゃん!だから一緒に連れて行ってだぴょん!」
「いや、そんな両手で猫の前足ポーズとかウサギさんの耳ポーズを作りながら言われましても皇女殿下は連れて帰りませんが。そしてキャラ的にまったく似合ってなさすぎてただただ痛々しいです」
「ティア、もし今のお前の姿をご覧になられたら父上も義母上も声を出して泣き崩れられるぞ・・・」
てことでこのまま話し合いを続けても平行線、そしてあまり芳しくない方向にしか向かいそうもないのでこの話は終わり終わり!
今からみんなで食後のデザートにしますので帝国の皆様はお引取りを・・・一緒に食べたい?まだ食うのかよ・・・いいけどさ。
味見して気に入ったらちゃんと南都から高級食材をいろいろと輸入してね?
―・―・―・―・―
皇女様のポンコツ度が日を追う毎に増していく・・・。
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