南の都編 その16 ある意味迷宮都市?

 王都の御えらいさん――集まったのは身内オンリーだったけど――に南都建設の方向性の説明も終わったので都の建設の続き、南都の禁則事項ことヴィーゼンに住んでるみんなのお引越し先となる迷宮区画の建設の再開である。

 先に簡単に説明してある通り、魔物の出ないダンジョン及び無害な魔物が出るダンジョンだな。



「そもそもダンジョンって何なのさ?」


 って言う話から初めると説明に三日三晩くらいかかった上で哲学的な話になっちゃいそうなので魔導板さんに説明してもらって俺が理解している部分だけを要約すると


『迷宮核が置かれている近辺に漂う何らかのエネルギーを吸い集める空間』


 らしい。


 そして普通のダンジョンはその集めたエネルギーで魔水晶(魔力の塊)を形成、その魔水晶がさらに魔物やアイテムなどを形成してさらなるエネルギー(そうだね、人間だね)を集めるのに対して俺が求めている物は


『魔物とかいらないから集めたエネルギーで農作物を育てて?あと鉱物資源もいっぱい欲しいのっ!!』


 である。



 新しい迷宮を造る事に関しては今までに集めた迷宮核と魔導板さんの管理の能力があればいとも容易い事なので特に問題はない。

 てか「魔導板さんの全能感パネェな!」と思わなくもないけど情報端末としての正しい使い方とも思えるので案外普通なのかもしれない。


 そして近辺から集める『何らかのエネルギー』を新しい迷宮に使用する事に関しても特に問題はない・・・らしい。

 そもそもここ、南の大山脈の裾辺に広がる大樹海、所謂龍穴と呼ばれる龍脈から流れ込む何らかのエネルギーが溢れ出す場所なのでちょっとやそっと何らかのエネルギーを使っても枯れることが無い程度には何らかのエネルギーに満ち溢れているのだ!!


 何なんだよその繰り返される『何らかのエネルギー』って、いっそのこと『魔力』じゃ駄目なのかよ。

 ・・・だって魔力でも無いみたいなんだよねぇ。

 ふわっとした表現になるけど『王国にあるパワースポット、それも国内でも随一の力場から発生する不思議パワー』だと思って貰えれば差し支えない感じ?


 もしもここが樹海になっていなかったら北都の北にあった『黒竜の住処』みたいなダンジョンがいくつか存在したのではないかと思われる。

 いや、この辺に満ちてる何らかのエネルギーは負のエネルギーじゃないから上手く行けば『聖獣の住処』になってたかもしれないのかな?

 まぁ竜であろうが聖獣であろうが危険度の高い生き物って括りでは何ら変わらないんだけどね?


 てなわけで迷宮、まず1つ目は『おこめ迷宮』である。

「お、お前公共の場でいきなりなんてこと言ってんだよ!?」と空目したあなたは心の汚れた大人もしくは関西人である。そうだね、おこめ券だね!

 ちなみに何を言ってるのかわからない方はその事を誰かに質問したりしてはいけない。何故ならセクハラになってしまうから。

 そしてこの話をあまり掘り下げるとお叱りを受けそうなので先に進むことに。


 どうして1つ目の迷宮がお米なのか?だってすでに美味しいお米の種籾が用意できているから。

 そろそろ丼ものとかおにぎりが食いてぇんだよっ!!

 卵かけご飯?ヌルヌルしたモノが苦手なのでいらないです。

 そもそもちゃんと火を通して玉丼にしたほうが美味しいじゃん。

 さすがに魔導板さんと迷宮核の力を持ってしても知らない(種や苗の無い)作物の栽培は無理なのである。


 ちなみにこの『ダンジョン米』の育成にかかる期間は大凡1週間、1度実ると刈り取るまで腐ったり枯れたりすることもないと言う頑張るお百姓さんに真っ向から喧嘩を売る有能作物である。

 この権能はお米だけに限らず他の農作物もおんなじなんだけどさ。

 まぁ迷宮産の作物はその種を取って蒔いたとしても外では一切育たないし消費期限も普通の作物と同じになっちゃうんだけどさ。

 それでもお米は一般的にこの国で栽培されている小麦や大麦の何倍も長持ちするからね?


 お米に続いて2番目に生産されるのは『くだもの迷宮』。

「もうそれダンジョンじゃなくてただのハウス栽培じゃね?」と思わなくもないけどほら、この国ってかこの世界の果物全般に言えるんだけどさ。

 現代日本で食べてたものに比べると全く甘くないんだよね・・・。種類も無茶苦茶少ないし。


 酸っぱい葡萄(負け惜しみ的な意味合いのやつじゃなく)とか酸っぱい蜜柑とか渋い柿とか輸入物の不味い林檎とかろくな物がない。

 ああ、あと胡瓜と何ら変わらない味の真桑瓜っぽいのもあったな。

 何なの?果物の植生が昔の日本なの?そもそも南部の特産品が栗とかドングリだったからなぁ。ドングリを食べたことは無いんだけどさ。


 もちろんもう少し変わった物も欲しいので最近ご無沙汰気味なペルーサにお願いして色々な国、船で交易している商国などから果物や野菜の種や苗木を確保してもらっている。

 そう、3番目のダンジョンは『やさい迷宮』なのだから。

 やっぱりダンジョンじゃなくてハウス栽培だな・・・。


 だってほら、糖度の高い作物をいっぱい生産しないと特産品になる予定の『砂糖の大量生産』が出来ないからね?

 現状無収入だからさ、うちの領地。国内で使う木材の5年分くらいは時空庫に入ってるからしばらくはそれを売り捌くだけでもどうにかなると思うけど・・・ほら、なんだかんだで引っ越ししてもらった大量の難民的な領民に食料の配給とかもしなといけないじゃないですか。

 うん、細かいことを考えるのはやめよう。そう、それはエオリアの仕事なのだから。

 おいちゃんがんばえー☆と応援だけはしておこう。


 面倒な仕事をエオリアに丸投げするのは決定事項として4番目のダンジョン。

 いよいよ『鉱山迷宮』の出番である。これ、どうしようかと考えたんだけどさ。

 いちばん簡単なのは『頭にコア(心臓部の魔水晶)を付けた動かないゴーレム』を迷宮内に配置(ポップ)させるのがいいかなぁなんて。

 多少良心の呵責に苛まれそうだけど人形にしなければ罪悪感もわかなそうだし頭のコアを潰すだけの簡単なお仕事だからラクチンでいいよね?


 ここで鉄、銅、銀、金・・・そしてこっそりと魔銅と聖銀を産出する。

「聖銀?・・・はいはいミスリルな!てか魔銅って何ぞ?」魔銅、怪しく、赤く光り輝く銅、通称『ヒヒイロカネ』って奴らしい。

 武器などには向いていないけれど生産量の少なさも相まって装飾品として結構なお値段で売れるみたいだ。あと魔力の増幅がウンタラカンタラ?

 銀と金に関しては大っぴらには増産分を国内に流せないんだけどね?時空庫にしまっておくだけなら何の問題もないし他国に持ち込んで・・・ふふっ。


―・―・―・―・―


久しぶりの更新なのにヒロインが一人も出てこないと言う暴挙・・・。

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