新しい同居人編 その30 たぶんきっとそれはヤキモチ

まぁこちらから行かなくても向こうから来ちゃう(俺の近寄ってくるなと言う)空気を読まない人間もいるわけで。


「おお、久しいな、アプフェル伯」

「はっ、田舎者ゆえなかなかご挨拶におうかがいすることも出来ず、誠に心苦しくはありますがご無沙汰させていただいております」


この国の王子様だ。第一王子、てか皇太子だな。


俺が普通に挨拶してる?あたりまえだろ・・・。俺を一体何だと思ってるんだよ・・・。

いくらなんでも特に何もされてない王族相手に唐突に上から喧嘩売っちゃうような態度で接するなんてしないからね?

確か名前は・・・聞いてない気がする。会ったというかすれ違った事がある程度だしさ。

それでも普通の貴族なら王族の名前なんて覚えてて当然なんだけどね?


俺も一応貴族?最近こう思うんだ、大きな男になりたいなら普通じゃいけないよなって。

いや、そもそも貴族関係なく普通じゃないうえに全く上昇志向も無いわ俺。

普通じゃないに納得した奴、後で幼女にしか好かれなくなる呪いをかけてやるからな!

そして皇太子、王族特有の多少持って回った尊大な話し方をするものの普通に常識人だった。

この国の王子様の比較対象先が『ヤク中の俺様系馬鹿(第三王子)』だから九割くらいの人間は常識人にみえるだろうけどさ。



その後も何人か(知らない侯爵様含む)の貴族様と何故かこちらをそわそわした目で見てた王様と話をする。おっさんは恋する乙女か。

てか国王陛下、何の御用かと思ったら王妃様が石鹸とか下着とか魔道具を欲しがってると言うお話だった。

どれだけ偉くなろうとも、例え国のトップであろうとも、嫁に勝てないのは仕方のない話だな。そしてそれらのお話はオーフェリア様にお願いいたします。

あと魔道具に関しては一切の販売をしておりませんので念の為。あくまでも贈答用ですので。


・・・決して王妃殿下が俺の好みの綺麗なお姉さんではなかったから邪険にあしらったとかじゃないからね?

でももう少しお痩せになられたほうが健康にいいと思います。


「何というかこう・・・凄いね、君。聞いてはいたけどさ、本当に三大美女、それに『風の君』まで侍らせてるとか・・・でも本命は小さな子なんでしょう?ついでにうちの妹も紹介しようか?」

「これはこれはエオリア卿、そちらはもしかして噂のご婚約者様ですか?あと幼女を紹介しようとするのは止めたまへ。てか風の君ってもしかしてヴェルフィーナ様のことかな?」

「特にぼくの婚約者は噂にはならないと思うんだけど・・・そうだよ、風の君、あまりこう言う公の場には出てらっしゃらない方だからね。妹御と護衛の赤い髪の美青年は何度か拝見したことはあるんだけど。お美しい方だよね、風の君」


エオリア、たぶんその赤い髪のやつがヴェルフィーナ嬢だわ。

あとあの人、清楚で高潔な雰囲気漂わせてるけど高レベルの露出狂だから。

そしてエオリアのご婚約者の御令嬢、想像より大人しい感じの女性だな。

もちろん『あの4人の方々』に比べれば大概の女性は大人しい感じだけどね?


「ハリス、まさか貴方に同性の知り合いがいたなんて・・・。あと私の婚約者に女性をあてがおうとするのはおやめくださいね?参考までにお名前ご住所ご家族構成など詳しく伺っておいてもよろしいかしら?お送りする人員の選定の参考にいたしますので」

「フィオーラ様、人を見境のない女誑しのように言うのはおひかえください。そして事細かに情報を収集しないでください、それもう完全に暗殺者を送ろうとしてますよね?えっと、こちらのいけ好かない好青年はエルドベーレを治めてらっしゃいますラフレーズ伯爵家のご次男のエオリア卿です」

「君、淑女(レディ)に友達を紹介するのにいけ好かないと言うのはどうかと思うよ?フィオーラ様、エオリアと申します。あと先程のはとても可愛い世間話的な冗談でありますので是非ともそちら様からの贈り物はご遠慮させていただきたいです。アプフェル伯には日頃大変お世話に・・・お世話に・・・」

「そこは言い切れよ!お世話してるだろうが!エルドベーレの在住の商人を粛清したり寄り子の貴族を粛清したり!それも卿の思惑に乗るかたちで!」

「そこだけ聞くとちょっとした虐殺者だけどね?あと連れが怯えるからもう少し温厚な感じの表現でお願いしてもいいかな?そしてぼくが黒幕みたいな雰囲気を醸し出すのは止めてね?」


俺ほど温厚な人間はそうそういないよ?ちょっと沸点が低いだけで。まったくもって失礼な話である。

そして間違いなく黒幕はエオリア君だったと思いますが?俺はただ思惑に乗ってやっただけだし?

てか同性の知り合いと言うか仲の良いおっさんは結構いるんだよ?

中の人もおっさんだからハリス君の同年代の友人が居ないだけで。そこそこ致命的な欠点だなそれ。



エオリアと話をしたあと少しお花を摘みに外に出る。王城であろうとトイレはトイレだったのは言うまでもなく・・・。

思ったよりげんなりとなったので元気の補充の為にお姉様ルームではなく子供部屋に・・・行ったら完全に『婚約者のヘルミーナ嬢が心配すぎてわざわざ様子を見に来た幼女大好きっ子』みたいに思われちゃうよな、あの騒ぎを見ていた人たちには間違いなく。

俺は幼女ではなく幼女のお母さんが好きなんだ!!と声を大にして言いたいところであるがそれはそれで性癖に大問題のある少年になってしまうので控えておく。

普通に年相応なだけなんだけどなぁ。


そして広間にはもちろん幼女(ロリ)だけじゃなく幼児(ショタ)もいる。

あ、コーネリウス様のご長男のご様子を伺いに来たと伝えればいいんじゃないかな!?

だめだ、姫騎士様が抱きついてきていつも通りクルクルまわってるイメージが鮮明に浮かぶもん。

必死に頭を使うべき所を間違えてる気もするが気にしてはいけない。


しょうがないのでもといた広間に戻る。

こうして離れて見るとおっさんはおっさん同士、若者は若者同士、女性は女性同士、それも派閥の人間で固まってるのがよく分かる光景である。

そんな中でも目立っているのはフリーとなった4名の御令嬢・・・失礼過ぎる話だけど他の御令嬢たちと比べれば最新のデジカメで写した高画質のカラー写真と幕末のモノクロ写真くらい華やかさが違うな。

いや、アレはアレで味があって好きなんだけどね?土方さんの洋服姿とかすげぇカッコいいし。


そんな4人が各々に育ちの良さそうな男前に囲まれてる光景。

アリシア王女とかどう見ても『ホストクラブの太客』にしか見えなくてちょっと吹き出しちゃったんだけど?

是非とも頑張って王女殿下のハートを射抜いて欲し・・・いとも思えなぇな・・・それはそれでモヤモヤする。

そう、自分が優柔不断なのは棚に上げておいて言うのも何だが、想像すると非常に気に食わないところが有るのも無きにしもあらず。


視線をアリシア王女からヴェルフィーナ嬢、リリアナ嬢、そしてフィオーラ嬢へと移していく。

全員の表情がすごく・・・真顔です。むしろリリアナ嬢とか完全に不機嫌オーラを撒き散らしてます。

いつも俺に向けてくれるみんなの笑顔が他の男には向けられていないこと、それに安心しちゃう自分が自分で大嫌い・・・でも大好きだったりする我儘な俺であった。


夜も更けていき、年少さんがそろそろ帰宅すると連絡が入ったので俺もそのビッグウエーブに乗り一緒に帰宅することにする。俺、枕が変わると寝れないんだ。


「いや、どうしてハリスが帰るんだい?」

「えっ、だってぼくまだみせいねんだもん」

「ちょっと殺意が湧きそうだからその話し方止めてもらえるかな?」

「なんでやねん、ハリス君可愛いやろ!!」


コーネリウス様にはイマイチ納得はされなかったが気にせず普通に帰る。

時間が経過する毎に脂ぎって加齢臭が漂い出すおっさん連中と一緒に年越しとかしたくねぇわ!

まぁ当然のようにお嬢様方も一緒に帰ると騒ぎ出すわけで。

約1名、そうそこの赤い人のお家はここだからね?どこに帰るつもりなんだよ。


「ではハリス、一緒に私達のお屋敷に戻りましょう」

「いえ、俺は普通にヴィーゼンまで帰りますけど?」


わかりました、取り敢えず送り届けさせていただいますので無関係のガイウス様を睨み付けるのは止めてあげてください、ちょっと斜め下な方向に風評被害が過ぎますので。

えっ?マジでリリアナ嬢とヴェルフィーナ嬢も付いてくるんです?ちゃんとご家族に確認は・・・とったんだ。

まぁ向かうのはキーファー家だから特に問題は・・・あるよな。いや、やっぱりどうして許可が出るのか理解に苦しむんだけど?

はいはいアリシア王女は国王陛下にお許しを・・・王女がお泊りする許可が出るとかおかしすぎるよね?

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