新しい同居人編 その25 それはとても邪悪な者たちだった
確かに黒竜鎧を着けたままバイクに跨る2人は俺が見てもビックリするくらいスタイリッシュ!!
それでいてSAN値のチェックに失敗したら意識を失う程度には邪悪なフォルムなんだ。
想像してみて欲しい
『2匹の表情のない鋼鉄で出来た黒馬が、見えないほどの超高速で足を上下させて牽く黒光りする馬車』
そしてそれを先導するのは
『唸り声(駆動音)をあげる二匹のドッグエイ○アンに跨った2匹のプレ○ター』
子供だけじゃなく大人でも失禁しかねない悪夢のような光景ではないだろうか?
・・・おかしいな?『天馬と一角獣』のはずなのに『羽(角)を生やした犬タイプのエイ○アン』にしか見えないんだけど?
もういっそ開き直って金属的な光沢だけではなく生物的なヌルヌル感も追加するべきだろうか?
・・・2人の女騎士様とヌルヌルプレイ。
字面だけ見れば是非とも自分も参加したいけどその実は『粘液を滴らせた2匹の宇宙生物』と言う。
この女騎士2人はいったい何を目指してるんだろうか?いや、そもそもの責任は全て俺に所在するんだけどさ。
ちなみにエンジン部分は魔道具なので実際にはガソリンエンジンの様な重低音の駆動音は鳴らないので念の為。
こちらの世界では馴染みのない『キュイーーーーン』ってモーター音は鳴ってるんだけどね。
知らない人はきっと魔物の叫び声にしか聞こえないよねこれ。
個人的には大きな音を鳴らすよりも無音なのに高速で近づいてくるほうがよほど怖いと思いました。
あ、世話になってると言えばこのお屋敷でも1、2を争うほど俺がお世話になっている存在。
そう、ジョシュアじーちゃんである。
中庭のすみっこのほうでこっちをじっと見てるから声をかけたらものすごく嬉しそうに小走りで近づいてきた。
「じーちゃんどしたの?てかコレ(犬エイ○アン)に興味ある感じ?」
「ええ、なんと言いますかこう・・・凄まじくわたくしの琴線を掻き立てると申しますか」
「マジかよ・・・じーちゃんなかなかハイカラだな!!よかったら乗ってみる?」
俺が一通りの操作を説明した後でバイクにまたがり、初めてとは思えない、まるで熟年のハー○ー乗りの様な雰囲気を漂わせるじーちゃん。
きっとこう言う人をロマンスグレーと言うのだろう。
おかしいな、うちの2人が乗っただけであれだけ漂っていた邪悪要素が霧散してるんだけど?
いつか何かでお礼したいと思ってたから本人にはおもいっきり遠慮されたけど、新しいバイクと腕輪型の作動キーに当分の燃料用の魔水晶をプレゼントしておいた。
魔水晶が足りなくなったらいつでも言ってね?
あ、あとソレに乗る時は絶対にコレ(黒いつなぎ)を服の下に着てコレ(黒いヘルメット)をかぶってね?
まだまだ迷惑をかけ続けると思うけどコンゴトモヨロシク。
残るは各ご家庭に馬車の配達である。
さすがに最上級貴族様(王家含む)のお宅に現物だけ届けてもらうわけにもいかないのでお供(サーラ嬢)を従えてメルちゃんに馬車を運転してもらって自分で向かう。
最初は一番面倒そうな王城――アリシア王女からなんだけどさ
「て、敵襲!?!?敵襲!!!!魔王軍らしき軍勢!!!!」
お城の門衛が大わらわになった。
あと軍勢って程人数多くねぇわ。
まぁその反応は正しいけどさ。正しいが・・・少し落ち着け。
大丈夫だよーこの2人は・・・危険かもしれないけど、俺はそれなりに安全な人物だよー。
安心感ゼロな慰めである。
ああ、もちろん本日の俺は普通の貴族ファッションだからね?
自作だから少々現代っぽいと言うか料○の鉄人の鹿賀○史っぽいけど。ポイントは黒い手袋だと思う。もちろんゴージャスなマントも完備だ。
・・・これ、果たして令和の時代でも映像として伝わるのだろうか?
先触れはちゃんと出していたので身分証と王女から預かっている指輪を提示して黒竜鎧の2人に顔を出させる事でなんとか――近衛兵に囲まれながらも王城の駐車場――厩と馬車を止めておくための広場まで案内される。報連相はとても大切なのだ。
そして回りの人間を魅了する大輪の薔薇の様な笑顔で待ち構えていたのは
「ハリス!年の瀬にそなたから訪れてくれるとは思わなかったぞ!どうした?年が変わる前に婚約をしておく気になったか?」
「ハハッ、ご冗談を」
もちろん本日も真っ赤な衣装の赤い人。
たぶん遊びに来る友達とかいないんだろうなぁ。そもそも王城に遊びに来ちゃう様な奴は・・・昔のハリス君なら来ちゃいそうだな、うん。
マジで当時の彼の無敵メンタルは是非とも見習いた・・・くはないな。
見習わなくてもすでに身に染み込んでるっぽいけどさ。
一応今日は年末のご挨拶に来てるので貴婦人に対する礼、片膝をついて大仰に名乗るところから始める。
「ハリスはちゃんとその様な挨拶も出来るのだな・・・」
「殿下は俺のことを何だと思ってらっしゃるんですかね・・・」
とても失礼な赤い人だった。そう言えば以前にも似たようなことを言われたな。
俺ってそんな傍若無人なイメージが有るのだろうか?情報収集(エゴサ)とかするべき?
まぁ今日はお歳暮のお届けに来ただけだから気にしないけどな!!
未だにぞろぞろと付いてきている、むしろ先程からどんどんと人数が増えている近衛兵改め近衛兵団を移動させて駐車場(広場)のど真ん中に停めてある深紅の馬車までアリシア王女をご案内。
いや、さすがに王城で時空庫から取り出すのはマズイと俺でも気づくからね?普通にこれに乗ってきた。
・・・あ、帰り・・・どうしよう・・・。
ま、まぁ俺だって画竜点睛を欠くこともあるのだ。
赤く、それでいて透き通る腕輪、赤い稲妻号の起動キーを王女に渡して
「殿下、こちらの魔導馬車は私よりの年末の贈り物でございます。こちらの腕輪が所有者の証になっておりますので無くされませんように」
「これを妾に?・・・ほう、なかなかの結納品」
「年末の!贈り物!でございます」
「そんな遠慮を」
「乗って帰ろうかなぁ?」
「そうだな!うむ、アプフェル伯からの年末の贈り物!確かに受け取った!」
「はっ、殿下に些少でもお喜びいただけましたのならば、キーファー公爵家の臣としてこのハリス望外の喜びでございます」
物凄く腕輪の方を大切そうに胸元に抱え込んでるけど贈り物はそっちじゃなくて馬車だからね?あとおっぱいおおきいですね。
そしてチラチラとサーラ嬢の隣に鎮座しているエイ○アン・・・では無くバイクを見つめてるけどそっちは非売品なのであげません。
黒竜鎧、または簡易版の黒いつなぎとヘルメットの着用ナシで事故でも起こしたら大怪我ですまないからね?
一応起動方法から操縦方法の説明を軽くして・・・当然の様に御者じゃなく自分で運転するんだ?もちろん知ってたけどね?
ああ、街に出たいと?誕生日に新しい自転車買ってもらった小学生の反応だな。
ならついでに公爵家のお屋敷まで送って行ってもらってもいいかな?
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