新しい同居人編 その19 新設!・・・出来ればいいな男爵領衛兵隊!

年末だし(?)みんな大好きなあの人の再登場だ!!


―・―・―・―・―


さて、代官見習いを新領地まで送り届けた次に必要なのは兵隊さんである。

前にも少し触れたけど探索者を適当に攫って囲ってしまおうってヤツを実行するのだ。

北都のギルドにも一応知り合いっぽいのが2人いるけどほら、王都の組合に居たじゃん、おっちゃん。

そう、声を掛けに行くのは『案内おやじ』と言うニッチなサービスを提供していた干し肉のおっちゃんである。

組合で働いてるくらいだからきっとそこそこ使えそうな人材を・・・知ってればいいな。そもそも見た範囲ではそんなに使える人間は居なかったので期待はしてないけどさ。

おっちゃんに関しても腕が治ったらまた迷宮に戻ってるかもしれないけど・・・見に行くのはタダなのだ。


まぁおっちゃん、普通に働いてたんだけどね。ちゃんと腕も生やして真面目に案内の仕事してた。

親御さんもお嫁さんも腕の治療が出来たことを物凄く喜んでくれたらしく、泣きながらそして礼を言いながら抱きついてきた・・・から思わずうっちゃってしまったのは仕方がないと思うんだ。


「で、話は変わるんだけどさ」

「お前・・・感動の再会の場面で人を投げ飛ばしておいて素知らぬ顔で話を変えるとか人としてどうかと思うぞ?」


だって、泣いてるおっさんとか、小汚いんだもの。

そして再会を喜ぶのは前回ので十分だから!


「王都からはちょこっと遠いんだけどさ、衞兵の仕事があるんだよ。給料はそこそこだけど家付きだから家賃はかからないし?海の見える長閑(のどか)でアットホームな職場なんだけど誰か来てくれる人いないかな?そこそこ武器が使えて常識があって真面目なら言うことなし」

「スルーか?投げ飛ばしたことは完全にスルーか?そもそもだな、常識がある真面目な人間は探索者になんてならねぇんだよなぁ。てか探索者上がりでもそんな条件のいい職場があるなら俺が行きてぇくらいだよ!」

「お?来ちゃう?奥さんと子供、ついでにご両親にじじばばも連れて来ちゃう?今なら俺がヴィーゼン衞士隊の大隊長に推薦しちゃうよ?人数はまだ1人だけど」

「大隊なのに1人なのかよ!てか坊主はどっかの貴族様の小間使いじゃなかったのかよ!そもそもヴィーゼンってどこだよ!」


いつもながらツッコミの激しいおっさんである。


「ああ、そういやまだ名乗ったこともなかったよね。俺はハリス、今は東の端っこにあるヴァイデ男爵家ってところでゴソゴソしてる兄ちゃんだと思ってくれればいいよ」

「ゴソゴソって何してんだよ。てか男爵様の代わりに兵士を集めるとかよほど信頼されてないと無理だよな?ちょっと靴とか舐めたほうがいい感じ?」

「(靴が)汚れるから、舐めなくていいから。まぁ男爵様が遠い親戚だからね、そこそこの裁量権はあるんだ。てか真剣に何人か連れて来ない?くっそ田舎だけどもし役に立つようなら最終的に伯爵家の近衛騎士隊長くらいになら押し込むよ?てか自分で言っててなんだけど胡散臭い話だなこれ」

「ど平民に何を押し付けようとしてんだよ・・・。いや、綺麗な姉ちゃんならまだしもこんな貧乏なおっさん騙しても仕方ないだろうから胡散臭いとは思ってねぇよ。てか坊主のこと信用出来ないとか言ったらうちの親父と嫁に殴られるわ」


裁量権と書いて『厄介事を押し付けられてる』と読むんだけどな?


「まぁあれだ、ご家族と相談して前向きに考えてもらえるようならキーファー公爵家のお屋敷まで連絡してくれるかな?」

「どうして東の男爵様の兵隊さんの募集に応募するのに公爵様のお屋敷に行くんだよ・・・」

「だって俺、王都に家とか無いし?大体は公爵邸で取り次いでもらってるし?てか北都で住んでたんだから北の公爵様と知り合いなのは普通だろう?」

「意味がわからねぇ・・・そして住んでたくらいで知り合いになんてなるはずないだろうが!そこそこ長期間北都で暮らしてたけど公爵様のお顔もしらねぇわ!あとそんな大貴族様の暮らしてる場所まで通してもらえねぇよっ!」

「人相が悪いから?」

「顔が良くったって平民が入れる場所じゃねぇんだよ!!」


ああ、確かに出入りするのに内門の衞士さんに止められるよな。


「ふむ・・・でも半分は人相が原因だよね?」

「ちげえっていってんだろがっ!!身分だよ身分!!」

「まぁおっさんが言うならそうなんだろうな、おっさんの中ではな」

「何で俺が言い掛かり付けてるみたいになってんだよ・・・」


「でも連絡が取れないのは不便だな・・・てかさ、探索者組合(ここ)って依頼の報告とかの名目で上級貴族街に出入りとか出来ないの?」

「ん?ああ、もちろん出来る・・・はず?そこそこの依頼料は取られるけどな」

「なら決まったらそれ使って報告してもらっていい?ちゃんと話は通しておくから」

「お、おう、いや、マジでそこそこの依頼料金取られるぞ?」


とりあえず案内のおっさんから受付のおっさんの所まで移動する。

おっさんからおっさんとか何の嫌がらせだと・・・是非ともケモミミの受付『嬢』を採用していただきたいところである。

もちろん俺は受付にいるのが『新人のお姉ちゃん』と『やり手のおっさん』なら普通におっさんの方に並ぶけどさ。



どうも、依頼をしたいんだけど。

うん、さっきのあのおっさんから連絡が来るからそれをキーファー公爵家まで届けて欲しいんだ。

ん?俺?ああ、公爵様のお屋敷で世話になってるハリスです。

身分を証明出来るもの?この短剣でいいかな?それとも家紋入りの馬車でも出そうか?


いやいやいや、特に失礼とかしてないから、大丈夫、物理的にあなたの首は飛ばないから、土下座とかいらないから。

ほら、みんなこっち見てドン引きしてるからね?早く立って立って。

依頼料はいくら?金貨2枚?そこそこするね?

いやいやいや、失礼のお詫びに自腹切ったりしなくていいから、物理的に腹を切る事にもならないから。


じゃあ後のことはよろしくね?




「てかさっきのは何の騒ぎだったんだ?まぁ公爵様のお宅に連絡取り次げとか言われたらあんな態度になるのもわからんでもないけど」

「お前って・・・もしかして貴族様だった?確か前、光の魔水晶を頂いたとか言ってたよな?」

「んなはずねぇだろうが・・・あれは昔の、何ていうかだな・・・。てか、あの坊主ってもしかしてナントカ言う男爵様ご本人じゃないよな?俺、そこそこ失礼な態度とっちゃってるんだけど?」

「えっ?あんなに親しげに話ししてたのに何も知らないのか?」


「名前くらいしか知らねぇよ、その名前もさっき聞いたとこだしさ」

「・・・とりあえずお名前を言ってみろ」

「うん?『ハリス』って名乗ってたぞ?」

「『ハリス様』な?てか何で名前で気付かねぇんだよ・・・今王都で一番有名な名前だろうがっ!!俺も気付かなかったけどさ!!」


「なんで坊主の名前がそんなに有名なんだよ・・・ハリスなんて他だと『竜殺しの英雄』くらいしか知らねぇぞ?」

「知ってるんじゃねぇかよっ!!」


「・・・」

「・・・」


「いやいや、えっ?マジ!?俺、この前の休みに嫁と演劇観に行ったけどあんな顔じゃなかったぞ!?ちなみに俺は『小さな姫騎士と不器用な黒騎士の初恋の詩』がいいと思う!!」

「何で劇にご本人が出てると思ってんだよ・・・そしてお前の劇の好みとか興味ねぇよ・・・。そして間違いなくあの方は竜殺しの英雄で伯爵様だよ!先に言っておくが伯爵家の方じゃなくて伯爵様ご本人だからな!?」

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