東の果て編 その3 元親戚らしい

「いや、普通泊まるのに不便だからってお家建て直す人なんていないわよね!?」

「お嬢様、そもそも普通の方は魔法でお家を建てたり出来ません」

「王都の魔法使いならそれくらいは出来るさ」

「いや、出来んじゃろ?」


おい、そこは話を合わせとけよ蛇。


「じ、じゃあ何が目的なの?やっぱり私の・・・身体?」

「ふんっ」

「こいつ今鼻で笑ったわよ!?」

「ふんっ」

「なんでドーリスもおんなじ様に笑ってるのよ!!」


「まぁただの気まぐれだから気にするな幼女よ」

「そうじゃぞ幼女よ」

「そっちの妹は間違いなく私よりちっちゃいでしょうが!!」


いや、こいつ自称3000歳オーバーだし。


「細かいことが気になるなら使った素材、木材とかガラスとか粘土とか鉄とかを返してくれればいいぞ?鉱山とかあれば手数料として二割貰えるなら素材の回収も手伝うし」


まぁガラスの原料なんて海辺で適当に砂でも回収してくれば錬金でどうにかなるし木材も人気のない所で適当に・・・いや、どっかでボロ屋とか回収するほうが圧倒的に手間がかからなくていいな。

それを考えると絶対に足りなくなるのは鉱物資源。


今回は自称准男爵邸と言う名の壊れかけの体育館で使ってた釘やらなんやらの鉄材でなんとかなったけど余剰がまったくないもんな。もちろんそんなに建物を建てる事なんて無いだろうけど。

あんまり細かくこっちのこと質問とかされるのも面倒くさいし適当に相手のことでも聞いておくか?


「てかどうして幼女はこんな僻地でメイドさんと二人で領主なんてやってるんだ?差し支えなければ・・・いや、面倒くさそうだからやっぱりいいや」

「そこまで聞いたなら最後まで聞きなさいよ。そうね、そもそもヴァイデ准男爵家は」

「主よ、酒とつまみを所望するぞ」

「おう、作り置きのポテチでいいか?メイドさんも飲む?」

「ドーリスでございます御主人様。主に進めて頂いた物を拒否するなどメイドとしてありえません。あ、私にもそのポテチと言うおつまみを頂けますでしょうか」

「真面目に聞きなさいよ!!」


あんまり怒りっぽいと血圧上がるぞ幼女。高気圧ガ○ルならぬ高血圧幼女。ただの成人病予備軍だなそれ。

そこから幼女の話は続くよどこまでも。


・・・

・・・

・・・


「いやいやいやいや、えっ?ここってポウム家の分家なの?」

「そうよ?まぁ分家って言っても本家とはまったく連絡を取り合ってもないただの他人だけどね。特に世話もしてないし世話にもなってないもの」

「そうかぁ、幼女、親戚だったのか」

「私の名前は『ヴィオラ』よ!いい加減に覚えなさい!!って言うか親戚?」


覚えるも何も名前、初耳なんだけど?


「ああ、まぁ元親戚?って感じなんだけどね。俺が追い出された実家が『ポウム家』だからな」

「追い出されたって何したのよ・・・」

「ん?ちょっと侯爵家のお嬢様に懸想して王子様に喧嘩売ったくらい?あとは役立たずだったからかな」

「王子に喧嘩売るってどう言う状況なのよ!?私の想像を遥かに凌駕する無茶苦茶な理由だったわ・・・。て言うかあなたが役立たずならこの国には役に立つ人間なんて存在しなくなると思うんだけど」


そんなことないぞ?そもそも俺にはこの王国に対しての愛国心も忠誠心も無いからな。実質役立たずなのは何も間違ってない。


「でもそう、あなた親戚なの。じゃあこれから私のことは『ヴィオラお姉様』と呼んでも構わなくてよ?」

「なんでいきなり縦ロールのお嬢様みたいな喋り方になってるんだよ。だいたい俺にはあちこちにお姉様がいるから新規契約の必要ないし」

「実家を追い出されてあちこちに姉と呼ぶ女性が居る生活を送ってるってどんななのよ・・・」


オースティアお姉様にマリアお姉様・・・お元気だろうか?

リリアナ嬢?あの人は『おねぇちゃま』だから別枠で。

ああ、別に元実家と親戚だとかなんとかは大して気にする様な話じゃないんだ。


それよりも『幼女がどうしてこんな僻地で領主なんてしてるのか』の理由。まぁ単に前領主の父親が亡くなったので後を継いだだけなんだけどね。

亡くなった原因が『魔物の氾濫による出兵での戦死』なんだよね。それも三ヶ月ほど前の話で。


・・・魔物(うん、黒竜だね)が領域(迷宮)から出てきた話、心当たりがあるんだよなぁ。時期的にも近いし。

たまたまかと思ったけどちょっときな臭い話なのかもしれないなこれ。

まぁ俺には関係ないけど。

もう何箇所かで同じ様な事が起こってるのかもしれないし、因果関係のない単なる偶然なのかもしれないし。


ん?『きな臭いのにほっとくの!?』って?だって俺がきな臭いと思うくらいなんだからこの国の偉い人達ももちろんそう思うだろうしさ。

少なくとも俺の知ってる上級貴族様に無能な人間は居な・・・そこそこ居たな。第三王子とか公爵家の次男とか。会ったことはないけど侯爵家の長男もなんとなく怪しいしな。そしてこの連中がみんな微妙に繋がってるような気がしないでもないし。


「ハリスちゃんはどうかしたの?ボーッとして」

「幼女にちゃん付けで呼ばれるとイラッとするから止めたまへ」


とりあえず部屋にベットと寝具を配置して今日はそろそろ寝るかなぁ。

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