王都公爵邸編 その30 黒竜の暴威
さて、公爵家のお屋敷を出発して早々・・・。
貴族街を抜ける時に内門でバカ御一行が持っている長柄武器をしまえとお説教されるも「ぼくちゃんは公爵家の人間なんだぞ!?」と恥の上塗りを始めてしまい第三騎士団団長がしきりに門衛に謝り倒した以外は特にコレと言った問題もなく王都を出発。うん、馬鹿は○ねばいいのにと思いました。
俺はほら、軽装だから。知らん顔をして先に出てコソッと街の外で待ってたから平気なんだけどね?
まだ出発しただけなのに騎士団の団長さんがどっと疲れた顔になってる。
まぁ今回は竜が暴れまわって・・・は居ないらしいけど、既に村が幾つか襲われているらしいのでのんびりしていられない急ぎ旅・・・のはずなのだが野営はしたくないと駄々をこねるバカ御一行の速度に合わせるために宿場宿場を利用しながら北都まで13日間。
どうしてお嬢様とメイドさん連れだった北都から王都までの旅行の行程より時間が掛かってるんだよ!!
あ、御一行は1日目のお昼には鎧を脱ぎ、長柄武器を手放し、全て騎士団に預けて運ばせていた。
もしも俺に持たせようとしたらならば間違いなくそこらへんに捨ててやったところだ。
ちなみに宿に泊まるのは御一行だけで俺含む騎士団一行は外で野営である。
一応俺が子爵家当主なのを知っている取り巻きの中でもマトモな頭をしている何人かは俺の部屋も取るように進言していたがバカが聞き入れるはずもなく。
騎士団と一緒のほうが気楽だからまったく問題は無かったけどね?
野外でも風呂に入ってベッドで寝る俺だしな!壁はないけど。
北都に到着しても黒竜山脈へ向かうにはさらに10日の日程となる。
が、ここからは北は宿場も少なく寂れてくるので軍の足は早くなる・・・はずなのに到着したのは14日後。
おい、すでに予定より1週間無駄に過ごしてるんだけど?
宿がない、食うものがマズイ、女が居ないなどなど散々文句を言うバカ御一行。
そろそろ俺も騎士団長も「こいつのこと殺して出奔するか?」と覚悟を決めるギリギリで現地近くに到着した。
ちなみに『出奔』と『逐電』の違いは逃げる必死さである。
特にバカを殺しても慌てて逃げる必要性を感じないので逐電ではなく出奔になるのだ。
「ここに陣を張る!ハリス、お前は偵察に行け!」
「いや、偵察と言われましても特にそう言った技能を私は持っていませんが・・・」
「バカかお前は!竜なんて大きいモノ、見つけるにも見張るにも技能など必要は無いだろうが!!」
「いや、おっしゃる通り」などと言いながらにたにたとこちらを見ながら笑う取り巻き。
こいつらに竜の持つ感知能力とか舐め過ぎだろ・・・かと言っていちいち説明するのもめんどくせぇしなぁ。
てか相手は竜なのにこんな上から丸見えの見晴らしのいい場所に陣を張るとか狂気の沙汰だと思うんだけど?
特にこいつらがどうなろうが知ったこっちゃないので何も言わないで放っておくけどさ。
あ、騎士団の方には後で注意しておかないと駄目だな。
まぁいいや、別に見つかって竜に追いかけられたら最悪こいつらに押し付けて逃げちゃえばいいし。
太ってるから旨そうな餌に見えるだろう。
・・・などと思っていたんだけど。
「あぁ・・・偵察、必要無くなりましたね」
「それを決めるのはお前ではなくオレだ!!つべこべ言わずに」
「いや、見えてるものをわざわざ探しに行く必要は無いでしょう?」
ほら、少し離れてるけど空の上、黒いトカゲが旋回してるじゃないですか?
「うん?何を言って・・・なっ・・・なっ・・・ああああああ!?」
さて、遠い所で飛んでるだけでいい感じに竜(むこう)はこっちを気にしてないしみたいだし?狙撃の準備準備。
「騎士団!!何をしているオレを中心に防衛陣を張れっ!!早く、早くしろっ!!」
時空庫から魔導対物ライフル、その名も『落とせるんです』を取り出す俺。
ちなみに銃の構造とかあんまりしらないので先込め式なのはご愛嬌。
これはもうライフルではなくただの派手な見た目の火縄銃ではないだろうか?
なんだっけ、弾と火薬と一緒に紙で包んだやつ。アレとそんなに変わらない感じだしさ。
あ、弾丸を取り出す前に銃と自分に闇魔法を発動させとかないと弾の重さで手が潰されちゃう・・・。
そしてあいかわらず銃弾からなんかこう、非常に不安定な感じにちょくちょく時空を歪めてる感じのオーラが出てる気がするから光魔法で防壁を出しておかないと俺の命の危険が危ない感じがする。
「魔導ライフル銃身内重力カット」「魔導ライフル防御展開」
っと。
ちなみにこの二つの行動だけで銃の左右に装着させてあるひし形の光と闇の魔水晶が空になると言う非常にコストの悪い魔法なのだがどうせ使い捨ての銃身なので気にしない。
「ひっ!?あ、あいつ、こちらに気付いたみたいだぞっ!?こっちに向かってきてるよなっ!?なっ!?」
てか一度も試射はしてないんだけど・・・大丈夫かな?
まぁ銃だけじゃなく自分にも防壁かけとけば平気かな?
「光の防壁(アイギス)!・・・加速魔法魔法陣、多重起動10枚展開」
「来るっ!!おい、お前らっ!!ちゃんとオレの盾になれっ!!うわああああああああ!?!?!?!?」
おおっ!!さすが・・・やっぱこれだよな!!銃身から真っ直ぐに等間隔に伸びる魔法陣!!
にくい事に銃身から先に行くにしたがって魔法陣が一割増しで大きくなると言うう心づかい!!
うん、とてもいい仕事である。よっ!魔導板さん最高!!ヨイショ!!・・・太鼓持ちか俺は。
「目標、前方の黒竜・・・照準、たぶんよし!・・・発射(ファイエル)!!」
銃から弾丸が発射されると同時にパーンと言う軽い破裂音、その後三枚目の加速魔法陣を通過する時にドンッ!!と言う大きな音と衝撃波を置き去りにして――空を飛ぶ獲物、遠くてよく見えなかったけどたぶんあれが噂の黒竜で合ってるよね?の胸から上を吹き飛ばす。
そして最初はゆっくりと、次第に速度を上げながら落下していくドラゴンの下半身。そして腹の底にに響く大きな落下音。
てかあれだ、みんなも言いたいよね?
『ファイエル!!』
忘れてたけど最後に一番大切な仕事が残ってた。
「メテオストライク解除」
そう、発射された弾を消しとかないとどこか人のいる所に落ちたら大惨事になりかねないからさ。
てかさっきの竜の落下地点に人里が無いことを祈る・・・。
もし村が有ったとしてもさすがにあんなのが上空に出たら下にいる人は逃げてるだろうとは思うけど。
もし動いてない奴がいたらそれはもう自己責任だと思う。
「さて、これでお役目は終わりってことで良いですよね?」
そこそこ大層にご登場した黒竜くん特にカッコいい描写もなく終了である。
まぁいくつか村も襲われてるらしいし人的被害が軽微なうちに退治できて何よりではある・・・はずだ。
バカどもがもっと急げば、いや、俺一人で先行すればもっと被害を抑えられた――なんていうのは元勇者の傲慢でしか無い。
うん、分かってる、今は勇者じゃなくただの人だし、分かってるけど・・・。一発くらいは馬鹿のこと殴りたい気分だ。
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