王都公爵邸編 その27 マー○と言う島がある(ありません)
そんなちょっと重い恋愛モノの主人公様みたいな事を俺が考えている頃、北都のさらに北部、黒竜山脈の麓では少々・・・いや、かなりの厄介事が生じていた。
うん、もう名前で出オチ感満載だよね。
『黒竜山脈』
これで起こった厄介事が『コボルトの大群が暴れまわっています!!』とか言われたら恐らく九割以上の人が『なんでやねん!』って言っちゃうよね?
ご想像通り『黒竜』が山脈から、正確には『黒竜山脈』に有る野外領域迷宮(フィールド・ラビリンス)である『竜の住処』から出てきているらしい。
Q:野外領域迷宮(フィールド・ラビリンス)ってなんぞ?通称は迷宮(ラビリンス)
A:地下領域迷宮(アンダー・ダンジョン、要するにウィ○ードリィ的なヤツだな)の様に地下や洞窟内に位置する迷宮ではなく地上に有る迷宮。
Q:野外領域迷宮と普通の森や山はどう違うの?
A:簡単に言うと迷宮の中は『違う世界』なので1キロ四方の森の中に100キロ四方の広さが存在する事もあるという理不尽なところ。もちろん知らないで迷い込んだらヤヴァイ。
Q:迷宮のこともっと詳しく!
A:探索者でもないのに知るわけ無いだろ・・・。いや、たぶん探索者に聞いても詳細は知らないと思うけど。
ん?何故いきなりそんな事を話しだしたのか?それは
「ということだ、お前も付いてこい!」
「はぁ、そうですか。とりあえずお断りいたします?」
「貴様!この俺の言うことが聞けぬというのか!?召使い風情で生意気な!!」
「特に聞く理由がございませんので。お話がそれだけなら職務に戻らせていただきますが」
絶賛この前(第三王子)とは違うバカ(公爵家の次男)に絡まれてるからである。ちなみにここでの俺の職務は・・・特に無い。
てかさ、召使い風情ではあるけれど『嫡男でもない公爵家次男のこいつ』より『暫定ではあるが子爵家当主の俺の方が(建前としては)』位的に上なんだぜ?
そして上の話の流れを簡単にまとめると
『北都の北で竜が出た』
↓
『その地方の貴族(寄り子)が助けて!私のHPはもう0なの!と救援要請』
↓
『特にこれまで武勲もなく社交的でもないので目立たないバカ、これはいい機会とばかりに援軍を買って出る』
↓
『なぜかコイツとは無関係の俺に付いてこいと呼び出しが掛かる』
↑
イマココ。
まとめたからといって意味が分かるとは言ってないからね?
フィオーラ嬢やヘルミーナ嬢やガイウス様、少し譲ってコーネリウス様から声がかかったのならまだしも人のことを目の敵にしてるお前ら母子に声をかけられてどうして従うと思ったのか?コレがわからない。
あと俺に対する命令権が『ガイウス様よりヘルミーナ嬢の方が上』なのは仕様だから仕方がないのだ。何かこう・・・・逆らえないオーラがあるんだよなぁ姫騎士様。うるうるした瞳で見つめてくるとか狡すぎじゃないですか?
そして間の悪いことにガイウス様もコーネリウス様も西都にお出かけでお屋敷にいらっしゃらないからなぁ・・・何でも塩がどうとかこうとか。
「ふんっ、どこまでも気に入らないガキだな!だが魔法が使えるらしいと聞いているからな、気に食わないが連れて行ってやると言っているのだ!」
どうしてこうバカとは会話のキャッチボールが成り立たないのだろうか?
お互いにグローブはめてるから硬球投げてるのに『いきなり海パン姿になってビーチボール撃ち返してくるヤツ』とはこちらがどう頑張ろうとも試合にならないと思うんだ。
いや、方法はあるんだよ?思いっきりスパイクして相手にぶつけるとかさ、第三王子の時みたいに。でも一応バカでも世話になってるお家の御令息だからなぁ。
「そもそもお前はこの状況を分かっているのか?親父も兄貴も居ない現状ではこの家の舵取りをするのは俺なんだぞ?つまり当主代理だ。その俺にたかだか使用人のお前が楯突くとはどういう了見だ?」
「はぁ。しかしそもそも私は公爵家の使用人ではなくフィオーラ様の側使えですので」
「そんなこと関係有るか!!ほんっとうにバカなガキだな!フィオーラの使用人であろうが小間使であろうが公爵家当主の命令に従うのは当然だろうが!!」
当主『代理』な。てかそれも自分で言ってるだけ、思い込んでるだけ・・・いや、きっとあの鬼婆ぁに言い含められて舞い上がってるんだろうなぁ。
オースティア様もこの何日か目に見えてイライラしてたもんなぁ。
「まぁどうしてもご自分お一人では対応しきれないのでお願いしますと頼まれれば吝(やぶさ)かではないですが(本音はもちろんむっちゃ吝かだがな!)。そうですね、その場合はもし私が竜を退治した場合には黒竜の死体その他は素材として全て貰い受けますがそれでよろしいですか?」
「き、貴様・・・。ふんっ、そうだな、お前が黒竜の退治をした暁には素材であろうが塒(しとね)の財宝であろうが全てお前の物にするがいい!」
「ではその様にご一筆頂けますか?あ、もちろん公爵家の方々を信用していないなどという事はないのですよ?(お前ら母子を信用してないだけで)」
「くっ、いいだろう、・・・ほらこれで満足か?明日の朝には王都を出立するからな!自分の装備は自分で用意しておけよ!」
「ちーっす」
部屋を出て扉を閉めるとドアに何かが打ちつけられた大きな音がした。腹立ち紛れに少し煽りすぎたか?
はぁ・・・到着した途端にあいつだけ竜に食われねぇかなぁ。
てか旅の用意しないといけないな。しかし竜退治か。昔ならともかく今のレベルくらいじゃ下位竜でもキツそうだな・・・。
ちょっと本気出して装備を用意しておかないと洒落にならないかもしれないな。
あ、そうだ、緊急連絡用に部屋に『アレ』を設置しておこうかな?毎日夜にでもフィオーラ様に確認だけしてもらえるようにお願いしといて。
いや、特にそんなに引っ張るほどのモノでもないから言うけど『アレ(小さな転送の魔法陣)』ね?手紙とか手荷物程度なら送れるサイズの。
まぁいいや、先に装備品装備品・・・バカが度肝を抜かすようなヤツを用意してやる・・・。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます