王都公爵邸編 その12 ムニュ(無情)
いや、一応お約束としてさ?そしてお前は人じゃなく蛇な?いや、神か。
てわけで石を割ることになったんだけど流石に殴ると痛そうだし・・・あ、あれだ!ここん家に土とか石とか岩とかの扱うのに丁度いい子がいるじゃん。
そう、『大地の精霊様』ウサギさん!クマと遊んでたのを両手で抱えて岩の前まで連れてくる。モフモフモフモフ。
「割れる?」
『フスフス』
「あー、最近霊力が足りなくて力が出ないと・・・。あ、そうだ!これ食べたらどうにかなりそう?」
『フスフスフス』
「おお!良かった。じゃあお願いします」
『フス!』
力が出ないよ―と『ア○パンメン』みたいな事を言うウサギさんにお腹が空いたらスニッ○ーズとばかりに土の魔水晶を食べさせる。
・・・てか俺、どうして鼻を鳴らしてるだけのウサギと会話が成立してるんだろうか?元々が土魔法使いだったから親和性が高いとか?
一応クマとも多少の意思の疎通は出来てるけどそっちはボディランゲージレベルなんだよなぁ。
カリカリと土の魔水晶を食べるウサギさん。とても可愛い。いや、くぁわうぃ。
魔水晶を食べ終わったウサギさん、両手を握り込み肘を引いて空手の正拳突きの様な構えをとる。
身体から立ち上る白く輝くオーラ。
岩を睨みつけそのまま
「完全に殴るポーズだったじゃん!!なのに拳でも魔法でも無く飛び蹴りで壊すのかよ!!」
黒い岩をキックで破壊した。
破壊というより粉砕した。ウサギ、確かに脚力が高そうだけどさ。
粉々に砕けた岩とそこに広がる白いモヤ。
「やっと出られたのじゃ!!」
「おいこらまて蛇」
「おお、世話になったの?」
「お前ぇぇぇぇぇぇ・・・よくも騙したなっっっっっっ!!」
霧が晴れた跡に立っていたのは白い髪に白い肌に赤い瞳の・・・幼女だった。
「なんじゃ藪から棒に?あ、あれじゃな?おっぱい触る?」
「触らねぇよ!ムニュっとしてるんじゃねぇのかよ!!いや、仮にムニュっとしてても幼女のは触らねぇけどな!?」
「ふふっ、お主の聞き間違いか勘違いじゃろ?だって我のおっぱい『無乳(むにゅう)』っとしとるもん」
「子供でも手加減せずぶち転がすぞ?」
い、いや、別に?最初からおっぱい触る気なんて全然ありませんでしたし?だからそのスンッとした顔を止めて下さいお嬢様。
場面は変わって侯爵家の庭から再度リリアナ嬢の寝室へテクテクと移動。昭和の人はこの徒歩移動のことを『テクシー』と呼ぶらしい。
飛び散った岩の破片?木っ端微塵に庭に散らかったままだけど流石に掃除はここの人がするだろ。やったのは俺じゃなくここん家のウサギだしさ。
「おまたせしましたリリおね・・・リリアナ様」
「あれ?どうしたのハリスちゃん、呼び方がいつもと違うよ?」
いや、流石にお父様の前で子供って歳でもない俺が『リリおねぇちゃま』とは呼べんわ!
そしてフィオーラ様のことを『フィーおねぇちゃま』と呼ぶことも無いですから期待した目は止めて下さい。
「まぁそれは追々と・・・。やれ、蛇」
「我の扱い雑じゃの!!」
だって騙されたからな?女性陣が居なければオンドゥル語で罵り倒してるところだぞお前?
おっぱいの恨みは根深いと思い知れっ!!
話を戻してリリアナ嬢の治療。まぁやった本人を連れてきてるので何も難しくは無いんだけどさ。
蛇そして鱗の治療。・・・簡単に言えば脱皮だな。
中途半端だと面倒くさいので1度全身を鱗状にしてから皮をめくるという。どういう原理なのか髪の毛まで。
失礼ながら非常に見てて気持ちが悪そうなので退室しようと思ったのだが
「・・・ずっと側にいてくれるよねハリスちゃん?」
逃げられなかった。とてもいい笑顔なのに少々プレッシャーを感じる不思議。
求められたのでそっとリリアナ嬢と手を繋ぐ。うん、普通なら嬉しい状況なんだけどね?
頭の先から足の爪先まで脱皮する女の子・・・鱗に偏見は無いけれどもそれが剥がれて行く様は・・・夢に見そうな光景だった。
もちろん悪い意味でだぞ?
さて、思ったよりも苦労なく解決したのでお屋敷に帰ろうとしたら
「すまん、実はもうひとり・・・リリアナの母が同じ症状で」
「行きましょう!直ぐに向かいましょう!走って!大至急!」
「お、おう、なぜそんなに全力で食いついてくる・・・」
リリアナ嬢の母君、むっちゃ綺麗なお姉さんでした。
そしてリリアナ嬢よりも大きい。とても大きい。
「ありがとう、えっと、ハリスちゃんでいいのかしら?」
「はいおねぇちゃま!」
「あら、こんなおばさんつかまえておねえちゃんだなんて・・・ふふっ」
「おい小僧、娘だけでなく嫁にまでか!?」
そしてどうやら蛇の祟り改め『脱皮魔法』そんじょそこらのエステなんて目じゃない美肌効果があるようだった。
リリアナ母娘が揃って笑顔で「お肌ぷにぷに」とか「母様、目元の小じわが無くなってます」とか「そのようなものは元々ありませんよ?」とか笑顔で言い合ってる。
美人姉妹・・・じゃなくて美人母娘の笑顔。うん、治療出来てよかった。
いや、フィオーラ様、あなたは十分お肌も髪もツヤツヤですから。そんな恨めしそうな目で見られても困りますから。
「それじゃあ我は少しお礼に」
「お礼じゃなくてお礼参りな」
「クククっ・・・」
「フフフっ・・・」
なんとなくこの蛇幼女とはとても気が合うような気がする俺だった。でもおっぱいの事は忘れないからな!!
十日近くも引っ張っられてたわりにはあっけなく解決した侯爵家の問題。
「何ていうかこう・・・もっと王都を股にかけた大立ち廻りとかしなくちゃいけないのかと思ってましたが」
「いえ、あれはあなたがオカシイだけで普通ならもっと大問題になっていますよ?」
帰宅後はのんびりと
「ハリス!けいこにいくのです!」
「畏まりました姫騎士殿下」
出来なかった。
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