ライブスタート
ドーム内に響き渡るクラッカーの音と共に現れた4人はまずステージの中央に集まり、ポーズをとっていると音楽が流れる。
すると4人は、それぞれ別々の位置へと行き歌い始めた。
最初の曲は[RIZIN]の3番目のシングル曲で初めてオリコンチャートで一位をとった曲、[NO STOP]だった!
[NO STOP]はアップテンポの激しい曲で、盛り上がりやすいので最初に持って来るのはいい判断だと思う。
ファンたちもまだ一曲目だと言うのに、すでにテンションマックスなはしゃぎようで、至る所で、推しの名前が呼ばれている。
「龍様!!」
「王子!!」
「昇兄!!」
「照君!!」
俺が4人を見ていると、偶然にも有栖川と目が会ってしまい、奴が俺に向かってウインクをして来た瞬間、会場中から大歓声と俺の近くで人が倒れる音が聞こえて来た。
俺はすぐに振り返ってみると、本当に倒れている女性が何人もいて、マジで驚愕した。
人がウインクで倒れるのって初めて見たんだけど!あれって、アニメや漫画の世界だけかと思ってたわ!
まるで、ワン○ースのイワちゃんのウインク見たいだ!
この時だけは、心の底から有栖川の事を凄いやつだと思ってしまった事は内緒だ!
もし有栖川に知られたら、絶対に面倒なことになるのは確定だしね!
一曲目が終わると、メンバーが集まってリーダーのリューが話しだした。
「皆さんこんばんわー!!」
リューの挨拶に対して、ファンたちは
「「「「こんばんわー!!!!」」」」
と、軍隊並みに揃った声で返す。すると今度は王子(笑)が
「今日は僕たちのライブに来てくれてありがとう!この後も楽しんでね!それじゃあ次の曲は」
有栖川が先に進めようとすると、柊さんがツッコミを入れる。
「おいおい!まだ紹介がまだだろうが!この馬鹿!」
「あれ?」
「「「「「ハッハッハッ!!!」」」」」
すると会場中から笑い声が上がり、至る所で有栖川を励ます声が響く。
その後、メンバーの紹介や軽いトークを挟んでから次の曲が流れる。
*******
ライブはどんどん進み、ファンのボルテージが最高潮に達した頃、リューがマイクで
「次の曲は、なんとあの「助さん」が俺たち【RIZIN】の為に作ってくれた新曲『Guilty』を歌うぜ!」
リューがマイクを高く上げながら言うと、会場中から
「「「「「「オオオ!!!!」」」」」」
と歓声が上がり、RIZINの他のメンバーたちは
何故かそわそわしていた。
あっ!おれが「助さん」だと、他のメンバーの皆さんと香取さんも知っていたりするので、もしかしたら曲を作った本人がいるからなのかも知れないかな?
ちなみに俺はと言うと、顔を真っ赤にしながら両手で顔を隠していた。
いや、だってめっちゃくちゃ恥ずかしいじゃん!!
たしかに、今日ライブに来た目的の一つに、この曲を聴いてファンがどう反応するのかを知りたかったからってのもあるけどさぁ・・
流石に何万人もいる中で、自分が作った歌が紹介されるとなんだがむず痒くなる。
俺が悶えている中、曲が流れてリューたちがいよいよ歌いだした。
『Guilty』は、俺が高3の時に作った曲を元にして、リューたちRIZINに合わせて歌えるように作り直した曲だ!
当時の俺は、前園さんとの一件で自分が恋愛をする事が出来ない事を知り、自分への戒めの為に作った曲がこの『Guilty』の原曲だったのだが、あまりにもお粗末な歌詞だったのでずっと封印していたら、リューに見つかってしまい、断っても何度も懇願されて仕方なく作り直した。
その為、動画サイトにもアップしていないので、ヒットするかどうか半信半疑だったけど、ファンの反応を見るとその疑問も吹き飛んだ。リューたちが歌い出しすと、会場中から今日一番の歓声が響き渡り、ファンたちがペンライトやうちわを振りながら何かを叫んでいた。
俺はこの光景を見て安堵すると同時に、自分がこの曲を作った「助さん」だと知って欲しいと思ってしまった。
でもダメだ。それだけは絶対にダメだ!
心の中で何度も同じセリフを繰り返す。
今まで俺は曲を作るとに、楓ちゃんとの思い出や俺の罪や罰を元に作って来た。
だから、俺が「助さん」だと公表すると言う事はつまり、また楓ちゃんを傷つけてしまうかも知れないと言う事になる可能性がある以上、俺は公表する気はさらさら無い!
*******
ライブが終わると俺は労いの言葉を言いに楽屋へと向かう。すると予想したかのように香取さんが入り口の所に立っていて、俺を見るや声をかける。
「どうも木村さん」
「お疲れ様です香取さん。もしかして待っててくれたんですか?」
「ええ、きっと木村さんならいらっしゃると思ったので」
「流石ですね!」
「ハッハッハッ、伊達にあの癖の強い彼らのマネージャーをやっていませんよ!」
「あはは、そうですか」
「では参りましょうか」
俺は香取さんと一緒に関係者入り口から楽屋へと向かうと、なんだが嫌な予感がした。
少しして、楽屋のそばまで行くとなんだが人だかりが出来ていて、言い争っている声が聞こえて来たので、俺と香取さんは楽屋へと走る。
すると楽屋の前で言い争いをしている、有栖川と後ろ姿で顔は見えない銀髪ショートの女性がいた。
だが、俺はその銀髪ショートの女性に見覚えがあった。
俺がその女性について思い出そうとした瞬間、女性がこちらの方を向き
「やっと会えた!」
と、笑みを浮かべながらそう言って俺の手を握って来た。
俺は女性の声を聞いて、誰だかすぐに思い出した。
この女性は俺が春に楽曲を提供して、人気になった「真白三葉」だったのだ!!
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