第二十三話 巨大な揺れ
「この通りっす」
「いやいや待て待て。私は弟子など取る気はないぞ」
「そこをなんとか」
ますます深く地面に頭を擦り付けるムサミ。ふむ。どうしよう。告白じゃなかった事でも驚きなのに、まさかの弟子入りしたいだなんて。
どう断ったらいいか困っていると。
「ムサミ。むりやりはだめ。クロノこまっている」
「ペピカ殿。いや、しかしこれはだな……」
見知らぬ幼女がムサミを叱りつけた。
外見的な見た目は青助に似ているが、髪の色や雰囲気、それに声が全然違う。
「誰だ」
「ん。はじめまして。わたしは――」
「『ペピカ』だ。この姿がこの子本来の姿なんだ」
「むぅー。テオ。わたしがじぶんでしょうかいしようとしたのにぃー」
「きゅん。ごめんな〜。ペピカ〜」
テオが別人のように可愛らしくなった青助――もといペピカに抱きついて頬擦りしていた。確かに可愛い。私もぎゅっとしたいなぁ。
けど。
体を見る。
ベタベタしていて臭い。これじゃあ可愛いペピカには抱きつけない。
「おのれトカゲ」
ペピカに抱きつけない悔しさのあまり拳を握る。
するとペピカに抱きついていたテオと抱きつかれていたペピカ。あとペンタの動きが固まり、ムサミが青い顔でわなわな震えながら。
「く、クロノ殿、拙者の弟子入り志願がそ、そそそんなに不愉快だったっすか!?」
「……へ」
「ご、ごごごめんなさいっすぅぅぅぅぅぅ!」
と再び土下座した。
……ああ、私が怒っていると思ったのか。
「いや、違う。弟子入りで怒っているわけじゃない。トカゲの血に怒っていただけで――」
ズンッ! ズゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!
「――なんだ」
「わわわっ、すごい揺れだね」
「皆、足元に気をつけるっす!」
「きゃあああ!」
「ペピカは我に捕まれ」
「うん」
突然大地が揺れた。それもかつてない大きさの揺れで、周囲に木々が無かったからよかったものの、遠くでは木々が揺れの影響によりバタバタと倒れていた。
「ふむ。大地が複数にブレて見える。なかなかの揺れだな」
「クロノ。な、なんでアンタは平然と立ってられるのよ」
「なんでって言われてもな」
別に立てない程の揺れじゃないしなぁ。
「凄いっす。拙者の目に狂いはなかったっすよ」
とムサミがうつ伏せながら感動していた。
同じくペンタ、テオ、ペピカは地面にうつ伏せていたが、私は普段通りに周囲を歩いて観察していた。
「ふむ。マグマはまだ出ているな。それなら一浴びしとくか」
揺れはおよそ20分間もの長い間続き、マグマのシャワーを浴びてスッキリした頃には収まっていた。
が。
「体が、重い」
「気持ち……悪いっす」
「うぅ。はきそう」
「ペピカ。無理するな。ウプっ」
という風に、私以外の全員がぐったりとしていた。
「おいおい。お前ら大丈夫か?」
私はトカゲの血や臭い匂いを洗い流したお陰で、全身スッキリサッパリしていたので揺れる前よりも元気になっていた。
なので(一人で先にスリカ少佐の元へ行こうかな)とも考えたが、地面に倒れているコイツらを見ていると(特にペピカ)、なんだか捨てられた子犬のように放っておくには可哀想だと思ったので、回復するまで一緒にいる事にした。
「動けるようになるまで時間かかりそうだな。よし、それならもっと休憩しやすくしてやる」
「クロノアンタ。一体何する気」
「直ぐに分かる。少し待っていろ」
大地を蹴り、木々のある場所までひとっ飛びで移動し、さっきまでの揺れで倒れた木々を素手で横に何回も切り、切った表面をテーブルのように削ってツルツルに加工した。
そうやって何本もの木を加工して、土台となる丸太が大量に完成した。
「こんなものかな。あとは」
丸太を肩に担いで持ち、狙いを定め、そして。
「よっ!」
次々と丸太を空へと投げていった。
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