第二十二話 告白
「死んだか。つまらん」
光る液体が、消えたトカゲの首元から間欠線のように噴き出る。
もう少し仕返ししてから仕留めようと思ってたのに、つい五月蝿いから殺してしまった。
私は液体を浴びながら、とりあえず死んだトカゲを袋に回収すると、ポイントが112,100と表示された。
……は? 112,100? 数値間違えてないか?
あの雑魚巨大トカゲ一匹で100,000ポインという事は、つまりゴリラ千頭分の強さという事だ。
いやいやいやいや。ありえないありえない。
私としてはゴリラ10頭分くらいの強さしか感じられなかったが……。
と、なると……。
「この袋自体が壊れたのかもな」
思えばゴリラやトカゲから出る光を浴びたり、マグマの中に一緒に入っていたから、それで燃えたり破けないのが普通おかしいだろう。
でもまあ。
「もともとトカゲ抜きでも試験には合格していたから、100,000ポイントが加わったところで関係ないか。
……それより」
服を摘み、ベタベタする血の匂いを嗅ぐ。
臭い。ゴリラの血とは比べ物にならないくらい臭い。
「とりあえずこのベタベタと匂いをなんとかしたいな」
トカゲの血は輝きこそすぐに消えたが、ドロドロベタベタで、さらに異臭も放っているので体や服に付いているだけで気持ち悪い。
ちなみにゴリラの血は、サラサラしていてレモン水のようないい香りで、嗅いでいるだけで疲れが取れるアロマのような癒される血だった。
「竜倒すなんて凄いよ! クーロノーー!!」
ロケットのように勢いよく飛び込んできたペンタに抱きつかれ、血でベタベタしている胸に顔を埋められた。
が。やっぱり。
「うえっ! 何これ、ベタベタして臭っ!」
「お前……」
自分から抱きついたのに嫌な顔で離れるペンタ。納得いかないが、抱きつかないは抱きつかないでなんだか寂しい……。
「く、クロノ殿」
「なんだ」
ムサミの声がしたので後ろを振り向くと、顔を下に向けたムサミが立っていた。
「あの……その……」
ムサミの体は寒いのかプルプル震えていた。風邪か? それともこのトカゲの血の臭さにやられたか?
「どうした。体調でも悪いのか」
私が声をかける。すると突然、バッと顔を上げるムサミ。
「く、クロノ殿……」
そしてモジモジしながら頬を赤らめる仕草で、自分の人差し指同士でツンツンしていた。
この顔や仕草、どこかで見覚えがあるぞ。
確かウルカの読んでいた漫画本に……。
記憶を探ること0.5秒。
思い出した。
この展開。ウルカの読んでいた本では女から男にしていたが。
まさか、今から私にこ、ここ……
そう思ったら鼓動が早くなる。なんだか少し緊張してきた。
いやいやまさかな。相手は出会ったばかりのムサミだぞ。
内心戸惑いながら顔は普段通りのまま、チラッとムサミの目を見る。
するとムサミの目が大きく見開かれ、今度は耳まで赤くなる。
……まさか……な。
永遠のような10秒間の沈黙が流れ、ついにムサミが動いた。
「もういくっす!」
「なっ!?」
ベタベタかつ異臭のする私の両手を勢いよく掴み。真剣な表情で私を見つめるムサミ。
「ちょっ!?」
両手で包むように力強く掴まれ、私の鼓動が更に早くなる。
いやいや待て待て。まだ心の準備が。心の準備がまだ……。
「クロノ殿。お願いがあるっす――」
「お、お願い!?」
リアクション強めで返事を返してしまう。
そうなったのもじっと私の目を見つめるムサミが、漫画本の王子様のように凛々しく見えてきたからだ。
だから少しだけキュンとしてしまう。
人生初の告白か。ムサミにならいいかも――。
と、なんだか漫画本に登場する乙女のような気持ちになりながら告白の言葉を待っていると、握っていた手を離し、ムサミが地面に両手と頭をつけながら。
「拙者をどうか、どうかクロノ殿の
「…………………………は?」
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