第63話 夜空
そよそよそよ。
私はバルコニーで夜風に吹かれて手を伸ばした。
バルコニーから見えるのは満点の星空で、お空がきれいで吸い込まれそうになる。
ここは夜空がとてもきれいで有名な領地なんだって。テオさんが教えてくれた。
テオさんが言う通り、なんだか空がとっても近くに感じて、星がすごいきれいに瞬いてる。
今私は視察先の領地のお屋敷で泊まっているの。
私はちょっと外にでたくて、いまバルコニーにいるんだ。
他の領地をめぐるようになって、私の世界はたくさん広がった。
リザイア家の神殿から外に出たこともなかったのに、いま私はたくさんの場所を見て回っている。どこまでも広がる田園風景。ずーっと続く青い海。綺麗な街並み。
知らなかった景色を視察でいっぱい見れるようになって、いろいろなことを体験できている。
なんだか夢みたい。
ルヴァイス様に神殿から連れ出してもらえて、いっぱい研究もさせてもらえて、しかも大好きなルヴァイス様の婚約者としてお仕事にも同行させてもらえるの。
もちろんいっぱい人がいるから、ルヴァイス様がキスしてくれたり、愛をささやいてくれたりしながらだよ。
ルヴァイス様の甘い声は大好き。「愛してる」って響きがとっても綺麗なの。
キスもね、頬に軽く柔らかい唇が触れてくすぐったくてとっても好き。
ルヴァイス様にとっては演技でも私はすっごく幸せになれるんだ。
幸せすぎてえへへと思わず笑みがこぼれる。
「……ソフィア?」
後ろから声が聞こえて、私はふりかっえた。
ルヴァイス様がバルコニーにでてきて、私は「あー」って微笑んだ。
お仕事が終わったのか、お部屋に戻ってきてくれたみたい。
「番」って設定だから寝るお部屋も一緒なんだ。
……でも、ルヴァイス様は別でソファで寝るのだけれど。
ベッドはすごい広いから私は一緒でも大丈夫なのにな。
『星を見てたの』
私がそう紙に書いて見せると、ルヴァイス様は「ああ」って微笑んで。
「確かにここの夜景は美しいな」
そう言って一緒に見上げてくれた。
『手を伸ばせば星に届きそう』
私がそう言うと、ルヴァイス様が「ふむ」という顔をして、「では試してしてみるか?」と言ってくれた。
「試す?」
私が言うより早く、ルヴァイス様は私を抱きかかえて、ひょいひょいと壁を歩くみたいにして、お屋敷の屋根の上まで上がってくれる。
そうすると、後ろも前も遮るものが何もなくて見渡す限りの綺麗な星空。
なんだか絵画の中に入り込んだみたい。たくさんの光輝く星がすごい綺麗。
「あー(すごい)」
私が思わず手を伸ばすけれど、やっぱり星には手がとどかない。
ルヴァイス様が「やはり届かぬか」と私を抱いたままいたずらっ子の笑みを浮かべるの。
『知ってたのに酷い』
「ソフィアなら届くかもしれぬと思ってな」
そう言って私をおろしてくれる。
よくわからなくて、私が小首をかしげると
「ソフィアは我々がいままで成しえなかったものを、実現してくれた。
今その成果がここにある。ソフィアは不可能をも可能にする力をもっている」
そう言ってルヴァイス様が見つめる先には月明りに照らされて見える畑が広がっている。
ジャイルさんたちと研究所で作り出した作物がきれいに植えられている畑。
「……いま、こうして私達がこうしてここにいれるのはすべてソフィアのおかげだ」
『そんなことないよ。
ルヴァイス様が私のエルフの力に気が付いて竜王国につれてきてくれたおかげ。
いまこうして夢が実現しそうなのは全部ルヴァイス様のおかげだよ。
私はちょっと不思議な力があるだけだもの』
「ふむ。お互い譲り合っていてはきりがないな。
……では、ソフィアと私のおかげということにしておこう」
それがうれしくて私はうんって笑顔になるの。
『嬉しいな』
「嬉しい?」
『ルヴァイス様と一緒に頑張ったから今がある。
私もルヴァイス様の役にたてたとしたのならすごく嬉しい』
そう紙に書いたら、ルヴァイス様に抱き寄せられた。
……ルヴァイス様?
不思議に思って見上げれば、そっと頬に手を添えられる。
「……ソフィア、これから苦労をかけるかもしれぬがともに歩んでもらえるだろうか?」
そう尋ねるルヴァイス様は月明りに照らされて黒い髪の毛が光っていてとてもきれい、瞳は憂いを秘めていて、私は思わず見とれてしまう。
もちろん一緒に歩くよ! ルヴァイス様の邪魔にならないような素敵なお嫁さんになりたいな。
私が「あー」って微笑んだら、ルヴァイス様にぎゅっと抱きしめられた。
「あー?」(ルヴァイス様)
私が不思議に思って聞くけど、ルヴァイス様は私を抱きしめたまま離そうとしない。
それがなんだかドキドキして嬉しくて、私もルヴァイス様の背中に手をまわした。
暖かいルヴァイス様のぬくもり。
こうやって抱っこしてもらえて、人のぬくもりを一杯教えてくれたのはルヴァイス様。
アルベルトにいじめられてたのを助けてくれたのも、デイジアやお母さまから助け出してくれたのも。
他にも竜王国に来てからいっぱいの幸せをくれた。
本当に大好き。
いつか仮初でも演技でもなくて、本当に好きになってもらえるように頑張るからね。
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