第51話 ファテナの花
ルヴァイス様が倒れてから、もう一週間以上たつ。
ルヴァイス様の症状は日に日に悪化していった。
周りに黒いもやもやが多くなって、ルヴァイス様も苦しいのか誰にも会いたくないと私とも少し会ってくれるだけで、それ以上は面会をしてくれなくなった。
テオさんの話では、この状態はまだいいほうらしいの。
ルヴァイス様のお父様はこの状態が何年も続いて……そして最後のほうでは痛みに発狂してしまったと。
ジャイルさんは薬の分析とその材料を集めるのに時間がかかるといったきり研究室からでてこない。
私はルヴァイス様の周りをうろうろするわけにもいかなくて、研究所の人たちに言われた【錬成】を頑張っている。
でも心配でこっそりと研究所の人たちが話している噂話をキュイに姿を消してもらってよく聞くようになった。
研究所の人達は最近測定していると竜王国の聖気が少なくなっているって話してた。
だから神殿からルヴァイス様に渡される【聖薬】の効果が薄くなってるんじゃないかって。
もし私がデイジアに聖気を奪われていなかったら、役立てていたのかな。
今ほどデイジア達を恨んだことはないかもしれない。
あの時力を奪われなければ、ルヴァイス様を助ける事だってできたかもしれないのに。
容態が悪いルヴァイス様のかわりに弟のラディス様が王都にきて、代わりに仕事をするようになってから、町には変な噂が流れるようになった。
私が偽の番でルヴァイス様の呪いを悪化させたって。
私が呪われた業火で燃やされたせいで、その炎の力がまだ残っていてルヴァイス様の呪いを増強させているって。
研究所の人達がそういう噂がたっているって怒っている話をこっそり聞いてしまったの。
もし、本当に私のせいで呪いが悪化したのなら、私はいつだってルヴァイス様のところを去るよ。
でも違う。
ルヴァイス様を救うにはわたしの【錬成】の力が必要なはず。
だからお願い。ジャイルさんはやくお薬を分析して。
今日もお仕事を終わってルヴァイス様のお部屋に来てみるけれど、ルヴァイス様は苦しそうに私に大丈夫だと笑うと、すぐに部屋を出るように言われる。
『でも……』
全身からすごい量の黒いオーラがでていて、ルヴァイス様の体はこの数日ですっかり痩せ細ってしまい、顔色はものすごく悪い。
たぶん私がいるからだと思う。無理に笑ってくれているけれど、全身すごい汗でとってもつらそう。
本当はずっと一緒に居たい。
レイゼルさんが私にしてくれたみたいにみたいにいい子いい子ってしてあげたい。
それでも、ルヴァイス様は私に痛がるところを見せたくないから、私がいると邪魔になっちゃう。
「ソフィア……」
ルヴァイス様が私の頬にそっと手を置いてくれた。
「大丈夫だ。疲れがでただけだ。
ジャイルもテオも別の方法で私の症状が治る手立てを探してくれている。
約束しだだろう、必ず守ると。
ソフィアの地位も研究所も中途半端な状態で投げ出すようなことはしない。
だから……泣かないでほしい」
気が付くといつの間にか涙がでてた。
ごめんね。痛いのも苦しいのもルヴァイス様なのに、私が泣いちゃダメ。
心配かけるだけだもの。
私はうんって頷いて一生懸命笑ってみせた。
絶対お薬をつくってみせるからね。待っててね。ルヴァイス様。
◆◆◆
「……薬の成分はわかった」
そう言って、ジャイルさんが私とテオさんの前にずらーっと記号のならんだ紙を広げた。
私たちはいまジャイルさんの研究室で書類を広げあってお互いの成果を報告しあってる。
「が、見たことのない魔素分子が存在している。似た魔素分子をもつものをいろいろなポーションから探してみたがみつからない。いくらソフィアちゃんの【錬成】でも無から有は作れない」
そんな、じゃあルヴァイス様は治せないの?
「いえ、ジャイルの研究とともに私のほうでも王族だけが入れる古代図書館で救う手立てを調べました。宮廷魔術師で調べた結果、錬成よりも可能性が高いのはエルフの神薬エリクサーです」
「エリクサー? そんなもの伝説の薬だろ。そっちの方が非現実的じゃないのか」
テオさんの言葉にジャイルさんが考えるポーズをしながら聞く。
「伝説ではエルフの道で手に入れることができる『聖なる花ファテナ』で作ることができるとありました。作成方法も【錬成】で材料も記入されております。ファテナの花さえ手に入れば、ソフィア様なら作れるはずです」
そう言ってジャイルさんとテオさんの視線がこちらにむいた。
『聖なる花ファテナ?』
「はい、資料によるとピンク色の綺麗なバラのような花らしいです。
以前ソフィア様が入った【天上への道】に生息していると記入されています」
と、テオさんが絵に描かれた花を見せてくれる。
「たしかそれ昔は地上にも自生していた花だったな。もともとこの花は【瘴気】を【聖気】に変換して養分にする花なんだ。それが故、【聖気】が過剰になり【瘴気】が不足した1000年前にエルフの聖域以外では絶滅したといわれる。エルフの聖域に入れるソフィアちゃんならもしかしたら手に入れられるかもしれない」
ジャイルさんの言葉とほんの挿絵に今度は私とキュイが顔を見合わせた。
「あーーー!!」
『あった!あったよ!そのお花あった!!』
私は慌てて紙にかいて二人に見せる。
「本当か!?」「本当ですか!?」
『たぶん、ピンクのバラのようなお花だった!』
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