SS2/70.5 ヒロインズ三人猫耳化

「にゃあぁ」

「にゃんっ」

「みゃう」


 んんん。窓から入ってくる光によればそろそろ朝だ。


「ご主人様、好きぃにゃぁ」

「ご主人様、好きですにゃんよ」

「ご主人様、好きみゃう」


 あれ、なんかいつもと少し違う。

 まずラニアがいる。どこから潜り込んできたんだ。


 あれ……。

 猫が増えてる。


 ミーニャには金髪の猫耳と猫尻尾が。

 ラニアにも透き通るような青髪の猫耳と猫尻尾。


 シエルにもってシエルは最初から猫耳族だったわ。

 シエルちゃんは猫尻尾も最初から生えている。


 でもなぜか「猫耳族」なのだ。尻尾もあるのに。


 猫耳三姉妹みたいで、なんだかかわいらしい。

 お互いがくっついて、まだ寝ぼけている。


 俺の呼び方まで「ご主人様」になっているし。


「あの、ご主人様、朝ですにゃよ?」


 ミーニャが首をかしげて確認してくる。


「朝のちゅぅを、お願いします」


 俺のほっぺにキスをしてきたミーニャが今度はこちらへほっぺを向けて目をつぶる。

 ちょっと恥ずかしそうに頬を染める。うぉ、その表情はかわいくて破壊力がある。


 ラニアとシエルも俺のほっぺにキスを落とす。

 三人ともキス待ちで待機していた。


「お、おう」


 ちゅ。ちゅ。ちゅ。


 ほっぺに軽くキスをすると、三人の表情がだらしなく崩壊というかトロけて、うっとりとしてしまう。


「はわわ、ご主人様にキスしてもらっちゃった」

「うふふふ、ご主人様のキスです」

「みゃうみゃう、キスすき」


 三人を起こして着替える。


 寝るときは以前着ていた茶色いワンピースのスラム標準服を着ている。

 部屋の隅に畳んで置いてあった一張羅を拾い上げて、三人とも一応向こうを向くとスラムのワンピースをささっと脱いでしまう。

 真っ白な紐パンツ一枚になり、キレイな背中が見えていた。


 さっと服を頭に通すと、ワンピースなのでストンと着れる。

 体の凹凸などが少ないので、ひっかかったりしないらしい。

 もぞもぞと動かして腕を通していた。


 俺も着替えたので、一階に降りる。

 朝ごはんだ。


 なぜかラニアもいるので、みんなで席を囲む。

 対面席に座ると、やっぱりかわいい猫耳がぴこぴこ動いたりしてかわいい。


 ご飯はだいぶ豪華になった。

 今日はイルク豆、卵焼き、ウサギ肉の炒め物、スープ、サラダだ。


「美味しかったにゃ」

「ごちそうさまでした、にゃん」

「エド君ちのご飯はいつも美味しいから好きみゃう」


「しゅっぱつにゃ」


 ミーニャが元気よくいって、学校へ向かった。


 今日も両手にミーニャとシエルがくっついている。

 俺の前にはラニアがひとりで歩いていた。


 ラニアのぴくぴく動く猫耳と、ミニスカートの下から出ている尻尾が右へ左へと動いて、とてもかわいらしい。


 猫耳と尻尾について、ミーニャもラニアも何も言わない。

 昨日までは生えていなかったはずだ。


 疑問に思ったが、ラニアの猫耳と尻尾を見ているうちに学校に着いた。


「えへへ、ご主人様分を補給しなきゃ」

「あ、私も~」

「えへへ、私もみゃう」


 そういうと三人が最近前より柔らかくなった体を俺にぐいぐいとこすりつけてくる。

 まるで匂い付けのマーキングをする猫ちゃんみたいだ。


 押し付けられたところが温かくて、人間味というか謎の安心感がある。

 それになんだか女の子のいい匂いがする。


 もみくちゃにされて、押しくらまんじゅう状態だけど、俺はなんだか気持ちがよくて、ほのぼのしていた。


「充電完了にゃっ」

「ですね」

「みゃうみゃう」


 ミーニャがご機嫌で左隣の席に座った。

 ラニアが俺をちらっと見てウィンクしてから反対側の隣の席に座る。

 シエルちゃんは後ろの席だ。


 右を見ても猫耳、左を見ても猫耳だ。

 ラニエルダにも獣人は何種類かいて、多いほうから猫耳族、犬耳族、それから兎耳族だ。

 兎さんは茶色系と白系と黒系が多い。


 珍しい子としては、狼耳族の子がひとり、あとはアライグマの子なんかがいたと思う。


 俺たちの席は簡易的な机と椅子だ。

 長机なので席はつながっている。


 それで俺は今、ミーニャとシエルからサンドイッチ攻撃を受けている。


「エドぉ、ごろごろごろ」

「ふふ、エド君ぅん、にゃんにゃん」


 肩から顔まで俺にすりすり、すりすりと左右から挟まれる。

 両手に花だけど、ちょっと。


 ギード先生はいつものことだとでも思っているのか、何も言わない。

 視線もよこさないし、別に授業自体は聞いているのでいいと思っているのだろう。


 ミーニャなんかたまに爆睡していることがあるので、それを考えればマシなほうではある。


 体の左右に湯たんぽみたいな柔らかい体が押し付けられているので、気持ちがいい。

 なんだか俺のほうが眠くなってきた。


 ……。


「あっ、寝てた」


 ぱっと目が覚める。

 あれ、家の部屋だ。ラニアがいない。

 ミーニャは俺に抱き着いて寝ている……。猫耳は生えていない。

 シエルはヨダレを垂らして俺の腕にすがり付いている……。猫耳は元からだった。

 さすがにもしシエルの耳が取れていたら俺もびっくりするところだった。


「つまり……ミーニャとラニアの猫耳は夢か」


 うわっ、夢落ちか。

 そりゃそうか。

 いきなり猫耳が生えてしまう病気や呪いなんて聞いたことがない。


 なんだか少しピコピコ動く猫耳がないと寂しい気もしてくる。


 そっとシエルの頭の猫耳を撫でて、耳のないミーニャの綺麗な金髪頭も撫でる。


「むにゃぁ、エドぉ好きだよぉ……むにゃむにゃ」


 まあ猫耳がなくても、ミーニャは猫みたいにかわいらしい。

 ラニアもシエルもかわいいので、俺はほっぺが緩んだ。


「さあ、ミーニャ、シエル、今度こそ朝だぞ。起きろ!」

「にゃああああ、朝、エド、おはよう!」

「みゃうぅ、エド君、あと五分、みゃうみゃう」


 こうして平和な日々は続いていく。

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