30.クエスト完了報告

 引き続き火曜日、昼過ぎ。


 美味しいお昼を食べたので、ギルドへ戻って報告しなきゃ。


「お腹いっぱい……」

「こんなに食べたの初めてかも、です」


 二人とも、お腹をさすっている。

 ぽんぽこお腹の幼女たち、かわいい。


 そういえば平日の昼からルドルフさん、家に居たけど、仕事はしていないのか。

 仕事の斡旋とか何かできればいいんだけどな。

 そういう力はまだ全くない。

 自分のご飯がようやくよくなってきた段階だから、先はまだまだ長いな。


 三人で家を出て城門を通過。


 今日もトライエ市内は賑やかだ。

 どこかの国のように不景気と先行きの見えない不安が渦巻いているよりは、ましかな。

 トライエは現在、景気は上向きで普通、安定している。


 冒険者ギルドに到着。


「こんにちは」

「おじゃまします」

「よろしくお願いします」


 カランカランといつものようにカウベルが鳴る。


 一瞬注目される。

 俺たちは装備も持っているので、冒険者に見えなくもない。

 ただのお使いのガキんちょが武器装備とかおかしいものね。


 しかしみんな、すぐにお昼に戻っていく。


 受付は昼なので、ガラガラだ。


 エルフの受付嬢でいいか。懇意ではないけど受けたときもエルフだったし。


「こんにちは」

「はい、エルフ様。見張り山、無事に行ってこれたみたいですね」

「ええ。これ返事の手紙です」

「確かに受け取りました。クエスト完了です。ギルドカードを出してください」


 ギルドカードを提出する。


「では報酬はシメて、銀貨五枚、よろしいですね?」

「はい」


 銀貨五枚か。

 金貨とかポンポンもらった経験があると、感動するほどではないけど。

 初依頼で銀貨五枚、単純労働で一日一人銀貨一枚よりは、高額だ。


「やったわね」

「お金、です」


「じゃあラニアには銀貨二枚、俺たちが残りの三枚でいいかな?」

「いいんですか?」

「そりゃあ、ウサギを倒したのもラニアだったしね」

「ありがとうございます」


 ラニアはそっと丁寧に銀貨二枚を受け取る。

 さすがに今回は泣かなかった。


「何か、他にも必要なものとかないか、見ていきますか」

「そうだね」

「うんっ」


 左側の売店に行く。

 よく考えたらクエストを受ける前に、必要そうなものを調べるべきだけど。


 なんも思いつかない。


「お姉さん」

「はいなんでしょうか? お客様」


 ちゃんと客として扱ってくれるんだな。


「初心者冒険者に必要な、定番の道具とかってないの?」

「えっとそうですね。緊急用のポーションは持っているといいですね。だいたいはお金がなくて買えないという人が多いのですけど」

「それはあるので、大丈夫です」

「他には、火打石セットとかですかね。万が一野営になるなら必須ですし」

「うーん、それならラニアが火をつけられるので」

「なるほど。ではあとは調味料セットとか」

「そうですね、家から塩を少々」

「はい。では、水筒とか。水ってありそうでなかったりしますし」

「それは欲しい」


 ということで水筒を三つ。人数分。

 共有でもいいけど誰が多く飲んだとか。そもそも一つだと量が心もとない。

 アイテムボックスもあるし、水を入れておいたほうが利口だ。


「銀貨三枚ですね」

「は、はい」


 なんとか足りる。

 頭の中で残金とこれからの増える分、消費予定とかを計算しないと。


 本当は防具が欲しい。

 ラニアはと青と白のワンピースでいいけど、胸当てはあると安心かもしれない。

 胸当てって言ってもブラじゃないぞ。

 まだ六歳。ぺったんこだ。

 急所を守る部分鎧だ。ゴブリンに棍棒で胸を強打とかされるとダメージがデカそう。


 欲しいものはまだまだあるな。

 資金が足りない。


 一応男子高校生だったので、ハック・アンド・スラッシュは心得ている。

 武器相応の敵と戦う→アイテムでお金を得る→強い装備を買う、という行為をループして、だんだん装備とレベルと敵が強くなっていくという意味だ。


 まだ序盤だ。焦らずいこう。

 そういうのなんだっけ。

 そうそう「いては事を仕損じる」だったか。

 他にも「急がば回れ」とか。


「そういえば、君たちスラムの子でしょ? なんかそっちのお店ではお茶とかジャムが流行ってるんだって? 知ってる?」

「あ、うん。スペアミントのハーブティーと犬麦茶だね。ジャムは青リンゴと山ブドウだよ。まだ残ってるかはわからないけど数量限定だと思う」

「そうなんだ。今日の仕事終わったら買いに行ってみようかな」

「もうなかったらごめんね」

「う、ううん。君たちのせいじゃないから」


 在庫がないのは俺たちのせいなんだぜ。

 仕入れ先だもん。


 青リンゴと山ブドウの木は他にもあるかな、探してみればいいんだけどね。

 ゴブリンがたくさん出てきたらと思うと、躊躇ちゅうちょしてしまう。


「では、また来ます」

「頑張ってね」


 お姉さんの応援はうれしい。

 なんかこの販売所のお姉さんは好きだなぁ。


 また空いてるエルフの受付に行って、忘れていた買い取りをしてもらう。


「えっと一角ウサギの皮二枚、魔石二個ですね」

「はい」

「鑑定まで少々お待ちくださいませ、エルフ様」


 この鑑定待ち苦手なんだよな。

 なんか品定めされている時間待たされるのがそわそわする。


「お待たせしました。皮一枚銀貨一枚、魔石は銀貨二枚、合計銀貨六枚です」

「わかりましたわ」


 ラニアが受け取ってくれる。

 やっぱ応対をラニアにやってもらえると楽でいいわ。


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