第75話:ガーバイルの最期
「この辺のはずだが……ん? これは血痕か」
落下地点に血痕があった。
つまり落下したガーバイルは、最後の気力でどこかに逃げようとしているのだ。
「こっちか、か」
落下地点にはガーバイルの死体はなかった。
「これは血痕か」
落下地点に血痕があった。
つまり落下したガーバイルは、最後の気力でどこかに逃げようとしているのだ。
「こっちか、か」
手負いの獣の追跡は得意な分野。
雑木林で視界の悪い河川敷を、俺は追跡していく。
「いた」
少してガーバイルを発見。足を引きずって必死で逃げようといる。
もはや自慢の高速移動と飛翔も出来ないのだろう。
だから俺は前に立ちふさがる。
「往生際が悪いぞ、ガーバイル」
『――――っ⁉ ひっ……』
俺の姿を見て、ガーバイルは悲鳴を上げる。
先ほどまでの高尚な態度は、もはやどこかに消えていた。
『な、なぜ、この“
だが相変わらず高慢な態度は変わらない。血を吐きながら睨んでくる。
「お前のその傲慢さが敗因だ」
だから俺は答えてやる。今回、お前たちが負けたのは、人間を舐めていたからだと。
『くっ……吾輩は人間などには負けておらぬ。負けたのはキサマのその“リリスの力”にだ!』
「“リリスの力”だと?」
初めて聞く言葉だったが、おそらく“付与魔術”のことを指しているのだろう。
『そ、その顔だと、“あの女”から何も聞いていないのか? キマサのその力の“代償”についても⁉』
ガーバイルは意味深な言葉を続けてくる。何か俺の力に関して深く知っているのだろう。
『ど、どうだ、吾輩と取引をしないか? 見逃してくれたら、お前の知りたいことを教えてやろう!』
“
(俺の知りたいこと、か)
この提案は魅力的な内容。世界が崩壊した理由も、聞くことができるかもしれないのだ。
「断る。お前は見逃せない」
だが俺は即座に拒否する。
ガーバイルは危険な存在であり、生かさない方のメリットが大きいのだ。
『――――っ⁉ ひっ、この蛮族め!』
交渉が通じないと理解したのだろう。ガーバイルは脱兎のごとく逃げていく。
『絶対に許さんぞ、この下等種め!』
視界の悪い雑木林を、必死になって逃げていった。
「さて、追うか」
だが俺は見失うことなく追跡していく。高速移動できない奴は、獣よりも追いやすいのだ。
『――――ひっ⁉ 行き止まり、だと⁉』
前方でガーバイルの悲鳴が上がっている。
河川敷の袋小路まで俺が追い詰めたことに、今になって気が付いのだろう。
「さて、止めを刺すか」
――――だが、その時だった。
……ズッ、パァ――――ン!
突然、異音が――――“甲高い銃声”が河川敷に響き渡る。
発射音はガーバイルが逃げていた方角だ。
「まさか……」
俺は周囲を警戒しながら、進んでいく。
少しして開けた場所が見えてくる。
「あれは……」
少し先でガーバイルがいた。
『ば、馬鹿な……このガーバイル様が……』
だが顔を半分吹き飛ばされて、ガーバイルは絶命していた。
もう生きてはいないだろう。
(“アイツ”が、仕留めたのか?)
そんなガーバイルの死体を漁っている人影がいた。
ライフル銃を担いでいるところ見ると、コイツが止めを刺したのだろう。
(魔石、狙いの奴か)
その人物は後ろ向きで顔は見えないが、取り出したのはガーバイルの魔石。
何かを確認して懐にしまい込んでいた。
明らかにガーバイルの魔石を狙って、ここに来た者だ。
だから俺はあえて前に進んでいく。
「獲物の横取りとは、ハンターとして感心しないぞ」
「――――っ⁉」
俺に声をかけられ、人物はこちらを振り向く。
同時に銃口を向けてきた。
(女? 外人か?)
横取りしたハンターは銀髪の若い女。北欧系の顔立ちの整った少女だ。
「кто ты《お前は誰だ》⁉」
銃口を向けながら、少女はロシア語で訊ねてきた。
「……お前、何者?」
片言の日本語で言い直ししてきた。だが鋭い殺気を放っている。
「俺は沖田レンジ。そこのガーバイルという奴を、仕留めた者だ」
「――――っ⁉ コレを“傷つけられる者”、だと⁉ 」
ガーバイルを倒したことが、よほど驚愕だったのだろう。
ロシア少女は動揺している。
「まさか、お前も“使徒”なのか⁉」
“使徒”という意味深な言葉を、少女は発してくる。
殺気を立てたまま、俺の全身を鋭く観察してきた。
「お前も“使徒”なら、私と同じ。でも同じ“獲物”を狙う敵同士。次に会ったら容赦しない……」
そう言い残して、少女は草むらに消えていく。
“普通の人間”では不可能な跳躍力と隠密能力だった。
「あの動きは、まさか……」
少女の身体能力は俺と同等クラス。
つまり彼女も何か異能を有しているのだ。
「追うか? いや、今は放っておくか」
俺の追跡能力があれば、彼女を捕まえること可能。
だが同等の身体能力のため、かなり時間と手間がかかってしまうだろう。
だから優先順位的に放置しておくことにした。
――――そんな時、少し離れた所で、大歓声が上がる。
「「「うぉおおおおお!」」」
これは人間の叫び声。
ホームセンター組と浄水センター組の叫び声。
不確定要素との遭遇と、多少の謎は残った。
だが目的は達成。
「ふう。とりあえず、終わりか」
こうして浄水センターの戦いは、俺たちの完全勝利で幕を閉じるのであった。
手負いの獣の追跡は得意な分野。俺は視界の悪い河川敷を追跡していく。
――――だが、その時だった。
……ズッ、パァ――――ン!
甲高い銃声が河川敷に響き渡る。
発射音はガーバイルが逃げている方角だ。
「まさか……」
俺は周囲を警戒しながら、進んでいく。少し開けば場所に到着。
「あれは……」
少し先でガーバイルがいた。
『ば、馬鹿な……使徒め……』
だが顔を半分吹き飛ばされて、ガーバイルは絶命していく。
(アイツが仕留めたのか?)
ガーバイルの死体を漁っている人影がいた。ライフル銃を担いでいるところ見ると、その人物が止めを刺したのだろう。
(魔石……か)
その人物が取り出したのはガーバイルの魔石。何かを確認して懐にしまい込んでいた。
だから俺は前に進んでいく。
「……獲物の横取りとは感心しないな」
「――――っ⁉」
俺に声をかけられ、人物はこちらを振り向く。銃口を向けてきた。
(女? 外人か?)
横取りしたハンターは銀髪の若い女。北欧系の顔立ちの整った少女だ。
「……お前、何者?」
銃口を向けながら少女は訊ねてきた。片言の日本語だが、鋭い殺気を放ってくる。
「俺は沖田レンジ。そこのガーバイルという奴を、仕留めた者だ」
「――――っ⁉ コレを傷つけられる者⁉ どうやって⁉」
ガーバイルを倒したことがよほど驚愕だったのだろう。銀髪の少女は動揺している。
「まさか、お前も……⁉」
そして意味深な言葉を発してくる。俺の全身を鋭く観察してくる。
「……それなら同じ獲物を狙う敵同士。次に会ったら容赦しない……」
そう言い残して少女は草むらに消えていく。
(追うか? いや、あの動きは……)
少女の身体能力は明らかに普通ではなかった。捕まえること可能かもしれないが、かなり時間と手間がかかってしまうだろう。
――――そんな時、向こうら大歓声が上がる。
「「「うぉおおおおお!」」」
これはホームセンター組と浄水センター組の叫び声。
「ふう……とりあえず、終わりか」
こうして少しの謎を残しながら、だが浄水センターでの激戦は完全勝利で幕を閉じるのであった。
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