第15話 寝ても覚めても。

 寝ても覚めても美沙希のことばかり考えている。

 我ながらこれは重症だ、とカズミは思う。


 彼女の顔が好きだ。

 さらさらの黒髪ショートが好きだ。

 すらっとしたスタイルが好きだ。

 細すぎる腰のくびれが魅惑的。

 長くて美しい曲線を描く手足が好き。

 ルアーを投げる姿がカッコいい。

 クラスの中でひとりぼっちなのすら愛おしい。

 クラスの中であたし以外の友だちをつくるべきだとは思う。いちおうそうは思ってる。

 でもあたしだけがあの子の友だちなのがたまらない。

 美沙希の友だち? あたしひとりでいいじゃん!

 もっともっと彼女の特別になりたい……。

 

 委員長からは「クラスに打ち解けるように言っておいてよ」と言われた。

 美沙希がクラスに打ち解けることなどできるのだろうか。

「おはよー! きのうは40アップを釣り上げたよ。サイコーだった。釣りに行こうぜ!」

 そんなことを言い出す美沙希は……想像できない。

「おはよう。実は私、釣りが好きなの。女の子なのに、変かな? 一緒に釣りに行ってくれる人がいるとうれしいな」

 うわー、もし美沙希がそんなことを言ったら、男子が喜びそう。佐藤くんなんてちょろく釣れそう。

「おはよう……。あの、私、人見知りを克服したいの……。友だちになってください!」

 うん、美沙希から歩み寄れば、友だちはできるんじゃないかな。知られていないだけで、実はやさしい子だし。

 美沙希は対人恐怖を克服したいと思っているのだろうか。

 あたしは彼女のために何ができるのだろう……?

 ああっ、また美沙希のことばかり考えている。


 美沙希からメッセージが届いた。

『ゴールデンウイーク、釣りしない?』

 やった! 美沙希からのお誘いだ!

「行く行く! 美沙希と一緒に釣りまくりたーい!」

『GWは混んでいるから、釣りにくいよ。あんまり釣れないかもしれないけど、それでもだいじょうぶ?』

「平気だよー。あたしは美沙希と一緒に遊ぶだけで楽しい!」

『釣れないと楽しくないよね?』

「あー、釣れないより釣れた方がいいね。精進します、師匠!」

 本当は釣れなくたっていいんだ。

 そばにいられるだけでいい。

『GW初日、自転車で迎えにいく。午前5時出発でいいかな。早いけど……』

 迎えにきてくれるんだ! 何時だっていいよ!

「イエッサー! 準備万端整えて待ってます!」

『つきあってくれてありがとう。楽しみにしてます』

「あたしもすっごく楽しみだよ!」

 はあ〜。ゴールデンウイークも美沙希といられるよ。あたし今、かなりしあわせかも。

 

 スマホの画面に美沙希の写真を表示させた。

 可愛すぎてヤバい。

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