第47話 親友との戦い



「もう楽になれ、エリック。」


ロン様と殿下の戦いは圧倒的に力の差があった。

ロン様が強すぎる、、、。

何度殿下が立ち向かってもロン様はヒラリと避けていた。

殿下はロン様の攻撃を受け止めるので精一杯のご様子だ。


「愛するアンと二人一緒に死ねるんだ、幸せなことだろう?」


ロン様の笑顔に恐怖を感じた。


「僕はどうなってもいい、ただアンだけは守る!!!

君と相討ちになってでもだ!!!」


殿下の限界は近そう。


「お前はその女が聖女だから婚約したんだろう?

他の女が聖女だったら他の女と婚約していたくせに!!!」


ロン様のお言葉に心が痛む。

私と殿下は政略結婚、、、。

私が聖女でなければ、殿下は他の方と婚約していたに違いない。


「そうだな。

新しい聖女になったアンと婚約者として出会った時は、美しい人でラッキーだったくらいにしか思わなかった。

その見た目だけに心奪われた。」


見た目だけ、、、。

数ヶ月前はエミリー様と親しくされていたし、やはり私じゃなくてもよろしいんだわ、、、。


「だが!!!!!

今は違う。

何度も接していくうちに気づいた。

優しく、聡明、愛らしいアンが好きなんだ。

他の誰でもない、アンじゃなきゃダメだ。

もしも明日、聖女の証がアンから消えたとしても僕の生涯愛する人はアンただ一人!!!」


殿下のお言葉に涙が出る。

ああ、私はこの方に愛されていたんだ、、、。


「殿下!!!!!

私もですわ!!!!!

もしも明日、殿下がその地位を無くされても私は生涯殿下だけをお慕い致します!!!」


私が声を出すと、殿下が振り向いた。


「アン、愛しているよ。

死んでも君を守る。」


優しい微笑みを私に向けてくださり、再びロン様と対峙する。




ロン様の振り上げた剣を殿下が受け止める。

ロン様は剣を両手で握り、どんどん体重を掛けていった。

殿下はついに地面に片膝をついた。


「殿下!!!!!」


お助けしようと駆け寄る。


「ダメだアン!!!来るな!!!」


「先にこちらから片付けさせてもらおうか!!!」


ロン様が再び剣を振り上げ、今度は私に向かって振り下ろす。

咄嗟に腕で顔を覆う。


「うっ、、、、。」


うめき声が聞こえ、人が倒れた音がした。




倒れていたのはロン様だった。


「アン!!!

なんて無茶をするんだ、、、。」


殿下が私のそばへ来て、抱きしめて下さった。


「ごめんなさい、殿下。

何もせずにただ見ているだけだなんて出来なかったのです、、、。」


私も殿下を抱きしめ返した。


「くっそ、、、。

まだ終わってないぞ!!!!!」


ロン様がフラフラしながら立ち上がる。


「グリップで腹を殴らせてもらった。

話の続きは王城で聞こう。」


ロン様の背後から大勢の足音が聞こえ、王城の騎士たちが駆けつけていた。

騎士たちは殿下の命令でロン様を捕らえ、連行していった。


「エリック!!!!!!

俺はお前を許さない!!!!!」


ロン様の恨みの篭った声が地下道にこだましていた。


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