第46話 協力者の正体



早く!!!!

早く王城へ!!!!

司祭がお兄様たちに追いつく前に!!!


私は王城へと助けを呼びに行くため、ひたすらに地下道を走っていた。

こんなにもドレスが邪魔だと感じたのは初めてのことだ。


「アン?」


目の前に人影が現れ、私の名前を呼んだ。


「ロン様!!??

どうしてここにいらっしゃるのですか?」


私の婚約者である殿下のご友人、ロン様だ。


「教会で事件があったと聞いて向かっている最中だよ。

司祭のところまで案内してくれるかな?」


そのお言葉にホッとした。

ロン様が一緒に来てくださるなら心強い!!!

お兄様とマリエルを助けてくださる!!!


「こちらです!ロン様!」


私はロン様に背を向け、来た道を駆け戻ろうとした。


「やめろ!!!!!

アンに何をする!!!」


殿下のお声がした。

慌てて振り向くと、ロン様が私に向かって剣を振り上げていた。

後ろには殿下が立っていた。


「え、、、?ロン様、、、?」


予想外の場面に固まってしまう。


「やあ!エリック!

君も教会に用があるのかい?」


ロン様は殿下に笑顔で声をかけた。

剣は下ろされた。


「アン!!!!」


殿下が私の元へ駆け寄ってくださり、私とロン様の間に入った。


「ロン!!!

アンに剣を向けるなんてどういうつもりだ!!!」


殿下のこんなにも怒っているお声は初めて聞いた。


「どういうつもりって、、、聖女様には消えて頂くつもりだけど?」


お顔はいつも私に向けてくださる笑顔だけれど、その声は氷のように冷たい。


「どうしてお前がアンを狙うんだ!!!」


殿下の叫ぶ声が地下道に響く。


「エリック、お前を傷つけるためだよ!!!

成績だって、剣術だって、容姿だって何もかも俺の方が優れている!!!

だが、王子ってだけで評価されるのはいつもお前だ、、、。

昔からずっと王子のおまけだった。

15年間ずっと!!!!」


ロン様のお顔から笑顔が消え、怒りに満ちているのがわかった。


「ずっとお前が羨ましくて、憎くて、大嫌いだったよ、、、。

そんな時に現れたのが司祭と、エミリーだ。

少し前にお前に相談されたよな?

学園内にエミリーの協力者がいるんじゃないかって。

協力者は俺だよ!!!」


「ロン、、、。」


殿下のお声は親友の裏切りへの悲しみで満ちている。


「気づけなくてごめん、、、。

君がそんな思いをしていただなんて、、、。

僕は一度も君を自分のおまけだと思ったことはない!!!

君は本当に優秀な人だ!!!」


殿下のお言葉にロン様が笑い出す。


「ははははは!!!

エリック、お前はいつもそうだ。

自分に敵意を持つ者を許し、受け入れる。

それが相手にどれだけ屈辱を与えているのかも気づかない!!!

無意識に上から見てるんだよ俺のことを。

お前は甘い!!!

だからここまで俺の気持ちにも、裏切りにも気づけない!!!」


殿下の剣を持つ手が震える。


「構えろ、エリック。

ここで決着をつけよう。」


ロン様が剣を構え、殿下と対峙する。


「君の気持ちはよくわかった、、、。

確かに僕は甘かった。

だが!!!ここは譲れない!!!

アンだけは誰にも傷つけさせない!!!」


殿下の手の震えが止まり、構えた剣の先はロン様に向けられていた。


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