第28話 花言葉



次の日も記録係としてアンと共に大教会へと足を運んだ。


「おはようございますう!アン様!」


甘ったるい声がしてエミリーが姿を見せる。


「それは何だ!!??」


エミリーの姿を見て、胸についていたブローチが目に入る。

白いマーガレットのブローチだ。


「ああ、これですかあ?

可愛いなあって思って買ったんですう!

あ!自分で!ですからね〜?」


言い方がいちいちムカつく。

殿下が買い与えたのかと思い、一瞬動揺してしまった自分もムカつく。


「可愛らしいブローチですね!

とってもお似合いですね!」


女神は人にムカついたりしないので、エミリーのブローチを褒めていた。


「アン様〜!

白いマーガレットの花言葉ってご存知ですかあ〜?」


「花言葉には詳しくないのです。

よろしければ教えて頂けますか?」


「いいですよ〜!

私も最近知ったんですけどお〜、秘めた愛って花言葉なんですう!」


わざわざアンに花言葉を教え、自分は殿下への秘めた愛を持っているというアピールか?


「花占いという花言葉もあるんだよ。

マーガレットの花はよく花占いに使われるだろう?」


他の花言葉を教えることで、エミリーの邪魔をすることにした。


「え〜!アン様のお兄様ってば花言葉に詳しいんですねえ〜!」


さっきまでのブリブリした顔はどうした。

引き攣ってんぞ。


「女性に花を贈る際に調べてから贈るようにしているからね!」


爽やかな笑顔で返してやった。


「そうだったのですね!」


アンは驚いて、マリエルの方を見る。

マリエルは僕を見て嫌そうな顔をしている。

悪かったな!シスコンで!


「アン様、そろそろお祈りを捧げましょう。」


マリエルに促され、僕たちは教会へと入った。

エミリーは祈りの仕方を覚える気がないのか、今日もアンをガン見して真似している。

昨日の復習くらいしとけよ!!!!!と心の中でツッコミを入れる。



僕が記録係としてアンに付き添ってから1週間が経過した。

もう夏も終わりそうだ。

エミリーは特に変わった動きもなく、アンと共に祈りを捧げている。

全く覚える様子はない。

大教会から僕らが屋敷に帰ると庭でジョージが向日葵を摘んでいた。


「ジョージ!

その向日葵少し分けて貰えるかな?」


「エドワード坊っちゃん。

まーたお嬢様へプレゼントなさるんですかい?」


僕は庭の花をよくアンにプレゼントしている。


「ああ、アンには向日葵もよく似合うからね。」


向日葵を見ていたらマリエルを思い出す。

向日葵の中心部の色と、マリエルの茶色い瞳が同じ色に見えた。


「花束、2つ作ってくれるかい?」


「おや、珍しい。

お部屋にでもお飾りに?

何本にしますかい?」


「まあ、そんなところだ。

そうだな、、、。

10本と、3本でお願いするよ。」


マリエルにはあまり多く渡すと嫌がられそうなので、3本くらいにしておくことにした。



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