第26話 アンのわがまま



「まあ!殿下!おはようございます!

どうされたのですか?」


いきなりの婚約者の登場に驚いていたが、嬉しそうだ。


「先日のパーティーで君のドレスを汚してしまっただろう?

新しい物を贈りたいんだ。

君に合う物を仕立てたいと思う、今から王城へと来てくれるかい?

いきなりでごめんね、サプライズにしたくて、、、。

エドワード様もぜひご一緒に!」


アンに会えて、ドレスを贈れる。

僕からは今日のアンとエミリーの様子の報告を受けられる。

殿下、一石二鳥の作戦ですね!!??


「アン、良かったね!」


僕がアンに声をかけると何やら考えている様子だった。

まさか殿下のお誘いを断るのか?


「殿下、一つだけわがままを言ってもよろしいでしょうか?」


僕も、殿下も、固まる。

わがまま?アンが?

長年兄をしているが、アンのわがままなんて数年聞いていない。

しかもまさか殿下にわがままを言うなんて!

なんだろう、、、。


「なんだい?アン。

何でも言ってくれて構わないよ。」


落ち着いている風を装っているが、声には動揺が混じっている。


「街でドレスを仕立てて頂きたいのです。

友人達の間で、噂になっている街の仕立て屋がありまして、、、。

腕が良いと評判でずっと気になっていたのです。

ダメ、でしょうか?」


「もちろん、良いよ。」


殿下即答ーーー!!!!!!

アンのお願い、可愛すぎる。

殿下との身長差では完全に上目遣いでお願いされているのだろう。


「ありがとうございます!殿下!

わがままを言ってしまい、申し訳ありません。」


「アンのわがままならいつだって大歓迎だよ!」


僕にも言ってくれ!!!!

僕にもどんどんわがままを言ってくれ!!!


僕が妹の愛らしさに悶えていると、マリエルが僕にしか聞こえない声でつぶやいた。


「シスコン様?

まさか殿下とお嬢様のデートにご同行しようなどとは考えてらっしゃいませんよね?」


背筋が凍ったかと思うほど冷たい声だった。


「いえ、僕は屋敷へ帰ります!!!!」


怖すぎて大声で返事をしてしまった。


「エドワード様?お帰りになるのですか?」


「お兄様、帰ってしまうのですか?」


ああ、一緒に行きたい。

行きたいけど、行ったらマリエルに何をされるかわからない。


「アン、殿下と二人の時間を楽しんでおいで!」


笑顔で返し、僕は屋敷へと帰ることになった。

殿下とのお出かけならば安心だ、王城の騎士が護衛につくだろう。




屋敷に着くと、辻馬車が来ていた。


「エドワード様、急いでお着替えを。」


マリエルからの言葉の意味がわからない。


「着替え?????」


「その服では、お嬢様と殿下にバレます。

私も着替えます。

お嬢様への元へと急ぎますよ!!!!!」


「さっすが!!!!マリエル!!!!」


僕とマリエルは急いで身支度を整えた。

僕は庶民らしい服装をするためオリバーに服を借りた。

護衛のためテオも道連れで着替えている。

無口なテオは何も言わなかったが、顔で引いているのがわかった。



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