第25話 聖女と祈り
「お兄様も一緒に来てくださるなんて、アンは嬉しいです!」
僕と、アン、マリエル、テオは4人で教会へと向かっていた。
屋敷と教会は馬車で5分ほどの距離だ。
これは余談だが大教会から王城も近く、馬車では10分ほどの距離にある。
「僕もアンと共に過ごせる時間が増えて嬉しいよ!」
心の底からそう思っている。
アンの隣に座るマリエルからの視線が痛い。
先日の笑顔が嘘のように冷たい目をしていた。
「それにしても、、、祈りの記録など何に使うのでしょうか?」
僕が大教会へと同行する理由は王城から依頼された“聖女の祈りの記録“ということになっている。
殿下と父が相談して決めたそうだ。
「王城からの依頼だ。
僕らにはわからない理由があるんだよ、きっと!」
我ながら苦し過ぎる言い訳だ。
「そうですね!陛下は思慮深い方ですから。」
女神の笑顔がクリティカルヒット!!!!
ああ、嘘をついているのが心苦しい、、、。
「アン様〜!おはようございますう!」
大教会に着くとすぐにエミリー嬢がアンに声を掛けてきた。
「エミリー様、おはようございます。」
あんなことがあったのに、笑顔で対応するアンには頭が下がる。
「げ!アン様のお兄様だ〜!」
露骨に嫌そうな顔をしている。
パーティーの一件から完全に敵として認識したのだろう。
「陛下からの命を受け、僕が今日から聖女の祈りについて記録を行います。」
「え〜!記録なんて必要なんですかあ?
なんかめんどくさそう〜。」
もう無視することにした。
こいつは視界に入れない。
女神だけを見ていよう。
「アン様、陛下直々の依頼ですから私たちもしっかりお祈り致しましょう?」
幼稚園児に言い聞かせているかのようだ。
「はい、はい、やりますよ〜。」
こいつをぶっ飛ばしていい法律はいつ出来るんでしょうか陛下、殿下。
アンとエミリーによる祈りが始まる。
僕と教会のベンチで見学、マリエルとテオは入り口で待機している。
大教会の大きな女神像の前に二人が膝まずき、手を合わせている。
「女神様、ロヴェイユ王国に加護と繁栄を、、、。」
前にアンにどうやって祈っているのかきいたことがある。
女神像の前に立つと胸の中が熱くなり、エネルギーを感じるらしい。
そのエネルギーを女神様に捧げる、胸から出すイメージをするとどんどん減っていく感じがするそうだ。
全てなくなったら祈りは終わると言っていた。
誰かから教えてもらったわけではなく、痣が現れて女神像の前に立った時そうするのだと頭の中に浮かんだらしい。
5分ほどで二人の祈りは終わった。
「エミリー様、お疲れ様でした!」
「アン様もお疲れ様でしたあ〜!」
話している二人を見ると、仲睦まじい友達のように見える。
エミリーがアンを陥れようとしていなければ、二人にはそういった未来もあったのかもしれない。
「お兄様、お待たせ致しました!」
祈りを終えたアンは僕の元へと来てくれた。
「ああ、お疲れ様アン。」
エミリーはまるで自分の家かのように大教会の奥へと入って行った。
僕らが外に出ると、殿下が立っていた。
「アン!待っていたよ!」
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