第10話 二人で放課後に
いつも帰宅時間に乗る電車を星世と一緒に駅のホームで見送った。ベンチに座りながら
「隼人」
「なに」
「ねえ、ショッピングモール行かない」
「今から」
「うん」
「良いけど。帰りが遅くなるよ。僕は構わないけど」
「いいよ。家に連絡入れて置けばいいから」
「そうか」
それから俺達は、帰る電車で二人の自宅のある駅を通り過ぎ四つ目の駅で降りた。でもまだ午後四時だ。この季節は日が暮れるのが遅い。ショッピングセンターの中に入って何しようか考えてると
「ねえ、ゲームセンター行かない。クレーンゲームしよう」
「分かった」
「あのワンちゃん可愛いわ。あれが欲しい」
「やってみる」
「うん」
…………。
二人共ゲームセンターには、ほとんど来ない。二人して五百円ずつ使って取れたのは可愛いワンちゃん一匹だけだった。
「難しいね」
「慣れてないから仕方ないよ」
「まあ、星世の欲しかったワンちゃんだから良しとしようか」
「うん」
「まだ、少し時間あるね。ちょっとウィンドーショッピングしていい」
「もちろんいいよ」
ゲームセンターを出てからデパートの方に向かった。星世が、べったりと腕を僕の腕に回してくる。もうお互いに心を許しているとはいえ、星世の胸の膨らみが腕に思い切り当たって来る。
さすがにちょっと恥ずかしい。
「星世、歩き辛くない」
「ううん、そんなことないよ。このまま歩こう」
「でも、当たっているんだけど」
「ふふっ、当てているの。隼人が私をもっと感じれるように」
「そ、そうか。俺は星世を十分感じているぞ」
「そんなことない。足らない位だよ。だからね。こうしているの」
「………」
顔を赤くしながら言う星世を可愛いと思いながら、どうしたんだろう。まさかな。
でも…………。
思い切りくっ付いてくる星世に確かめる様に
「分かった。今度の土曜日来る。午後から両親いないし」
「うん、いいよ」
今度は顔を赤くしたままニコニコしながら返事をして来た。
でも二週間前した様な。もっとしたいのかな。
僕達は付き合い始めてから八か月。きちんと節操の範囲内でしていると思っている。だから、星世の言葉にちょっと勘違いしてしまう。
デパートのブランド品を窓の外から見ながら歩いていると
「隼人、もう帰ろうか」
「えっ、いいの」
「うん」
ふふっ、約束取り付けたからいいんだ。季節の所為なのかな。
如月さんが腕に抱き着いている男が彼女の恋人か。知合いを通してちょっと聞いてみた時はいないなんて言ったから、放課後声を掛けてみたが、やっぱりいるんじゃないか。
あれだけ如月さんが積極的という事は………。考える事も無いか。まあいい。状況はつかめた。
「幸助。もういいだろう。行くぞ」
「ああ。今日の所は十分だ」
「なあ、幸助。如月さんというんだっけ、あの子。彼氏いるなら諦めればいいじゃないか。あの雰囲気じゃ付け込むチャンス無いと思うけどな。お前ならこれからいくらでも見つかるだろう」
「そうだな。でも俺は俺の気持ちが有ってな。如月さんを彼女にしたいんだ。理由は簡単。好みだからさ」
「それって、略奪愛ってやつか」
「難しい事は知らない」
二人で電車に乗り自宅の有る駅に着くと
「隼人、あの公園にちょっと寄って行かない」
「いいよ」
改札を出ると星世は、隼人の左手を握った。隼人が指と指の間に自分の指を通す様に握りなおしてくる。
いつの間にか、この手の握り方も慣れたなと思いながら、駅から十分程の所にある少し高台になっている公園についた。
風が良く通り、晴れている時は、遠くの山並みも見える。
人影が少なくなった公園に着くと人影もまばらだった。
「あそこ座ろうか」
「うん」
ベンチに座りながら、二人で西から南に変わりつつある風にあたりながら景色を見ていると星世が顔を俺の肩に乗せて来た。
「ねえ、ずっと一緒にいれるかな。私、学校が違って隼人と会う時間が少なくなってから不安な気持ちが大きくなって………。いっそのこと私が大北高校に転入しようかと思ってしまう時もある。どうすればいい」
「星世。僕もずっと一緒に居たい。学校が別々になって会う時間は少なくなったけど、なるべく会う時間作ろう」
「どうやって作るの」
「朝の通学、僕が星世を迎えに行くとか。帰りは、どちらかが遅れても時間を調整して必ず一緒に帰るとか。土日はなるべく一緒に居るとか」
「でも、それじゃ、隼人息が詰まっちゃうよ。会わない時間は長いけど、会った時、濃い時間にしたい」
「濃い時間………?」
「うん、濃い時間!」
二人で顔を赤くして下を向いてしまった。
しばらくして顔をゆっくり上げると星世が僕の顔をじっと見ている。僕は、周りをちらちらと見て人がほとんどいない事を確かめると彼女の耳にかかっている髪の毛をすくい、耳の後ろにするようにして小さくて可愛い顔を僕の手で優しく包んだ。
顔を近づけると星世が目を閉じた。柔らかい唇が僕の唇に触れた。
優しく手を背中に回してあげると彼女も僕の背中に手を回した。
…………。
どの位経ったのだろう。日がだいぶ山陰に落ちて暗くなり始めている。
ゆっくり唇を離すと
「星世、帰ろう。送るよ」
何も言わずに彼女はコクリと頷いた。
歩きながら
「隼人、今度の土曜日、隼人の家に十二時でいい」
「うん、いいよ。お昼どうしようか」
「私作ってあげようか」
「えっ、で、でも悪いよ」
「えへへ、こう見えても少しは出来るのよ。オムライスはどう」
「うわあ、嬉しい」
「じゃあ、十二時少し前に隼人の家の近くのスーパーで二人で買い物しよ」
「うん」
「えへへ。嬉しいな。お昼食べたら、どうするの」
「それはその時に考えよ」
星世と僕は、ゲームとかはしない。いつも一緒に本を読んで感想を言い合ったり、ビデオ映画を見たり、偶に勉強したりしている。今回もそんな感じかなと思っていた。
―――――
高田幸助、不味い考えの持ち主ですね。
隼人は、星世をどう守るの?
その前に、次回はお家でデートですかね。
次回をお楽しみに。
面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価頂けると投稿意欲が沸きます。
感想や、誤字脱字のご指摘待っています。
宜しくお願いします。
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