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巨大な魔猪との戦いを経て数日、鉱山都市ベローガモへと到着した。
深い森を切り開いた山道で、徒歩で向かうには適当とは言い難い道を僕たちは無事に歩ききった。半分無謀と言わざるを得ないかもしれない。僕たち以外に徒歩で移動しているのはほどんど居なかったからだ。居るとすれば訓練をしている兵士くらいだ。
殆どは安全のために多人数で、更に馬車を使って高速に移動していた。まぁ、そんなところだ。
とは言っても、そこまで危険は無い。
道中ではしっかりと宿場町が整備されていて、魔物に怯えて夜を過ごすそんな日は一日たりとも無かったのだ。
「拍子抜けしたと言ってもいいのかな?」
「??」
ベローガモの城壁を見上げながらぼそりと呟きを漏らしてしまったが、フラウは何のことだかさっぱり、とコテンと首を傾げていた。
言葉だけを聞けばそうもなるか。
そんなこんなで無事に鉱山都市ベローガモへと入ったわけだが……。
「さて、今日の所はどうする?」
フラウに尋ねるのだが……。
日が暮れ始めて来たので当然のような答えが帰って来る。
「歩き疲れたからさっさと宿で休まない?」
「まぁ、そうなるな。じゃ、さっさと探すとしようか」
男だけだったら疲れも何のその、と夜の街へ繰り出してお金を散財するってのもあるかもしれないな。まぁ、フラウがいる僕にはそんな事は考えもつかないけどね。
そして、探し出した一軒の宿。
食堂から食欲をそそる何とも言えぬ臭いが漂ってきた宿にふらふらと入ってしまったのだが……。
「いやぁ、この宿正解だったな」
「ほんとね!ご飯は美味しいし、綺麗だし、安いし!」
フラウが口にした通り、食欲をそそる臭いの通りにご飯は美味しく、寝そべっているベッドはふかふかで埃も殆ど立たず綺麗、そして想像以上にリーズナブルだった。
これで満足いかない、とは言えないだろう。
まぁ、山の中腹に位置するだけあり、食材は豊富とは言い難い。
肉を主体にしたメニューだったが、生野菜が少なかった。根野菜は多かったけどね。
でも、バランスは取れていたので、不満が出るほどではない。
「それでこれからの予定なんだけど……」
鉱山都市ベローガモが目的地ではない。
僕たちが目指しているのはここよりさらに北にあるシーケント要害だ。
道を塞ぐようにそびえる壁を作っているから要塞と言った方が良いと思うが、名称としては要害なのだそうだ。何故なんだろうね。
で、その要害を目指して更に進まねばならない。
見学したいってだけなんだけどね。
シーケント要害の見どころは基本的に道を塞ぐように作られた建物、それだけ。
軍事施設として使われてきただけあり、それ以外の施設はないのだ。
多少の土産物を買うお店くらいはあるだろうけどね。
お土産屋に記念木剣とか三角形の旗とかあるのだろうか?
「いいわよ。直ぐに出発しても」
「おぉ、有難い!」
シーケント要害を見学したい僕としては、フラウの申し出に思わず声を出して感謝の意を現す。フラウ、素敵!
「ここから一日の距離だし、見学もすぐ終わるでしょ?」
「まぁ、見るところなんて沢山ある訳もないからな。入れない場所も沢山ありそうだし」
宿の給仕達から仕入れた情報によればそうなる。
軍事施設の見学など、させてくれる場所が少ないからね。
見せてくれるだけでも有難いと思わないとね。
それでも、どんな所なのかわくわくが止まらない。
何だろう。
イベントの前日の子供みたいになってきたな、僕……。
「ま、明日の事は決まりね。で……」
「え?これから」
明日はシーケント要害へ向かうはずだが、フラウはそんな事お構い無しのようだ。
胸をはだけて迫って来たよ。
確かにご無沙汰だった、ってのはあるけど……。
はぁ。
体力が有り余っているのかねぇ?
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