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「その後、暫くしてとある研究で成果を出して研究員から准教授へと昇格し、教会から派遣された人員が私を手伝うようになったのだ」
恐らくだけど、教授が惨殺現場を目撃したのを教会騎士もわかっていたのだと思う。その場で殺してしまうのは簡単だけど、教授が何処の誰で、何処で働いているのかを
その後、教授が惨殺現場を目撃したなど一向に口にしないとわかり、この世から退場させることなく監視だけに留めたのだと思う。
監視に留めたのは王立高等教育学院に勤めているとわかったこともあるだろうが、その後、研究員から准教授へと世間的に無視できない地位を得た事も理由の一つだろう。
たぶん、だけどね。
あくまでも僕の予想だよ。
「この旅程に助手はいないが、何処かで監視はされてると思うぞ。まぁ、防音の魔道具を使っているから話は聞かれていないだろうがな。後で聞かれるかもしれんからその時は、まぁ、猥談って事で口裏を合わせておいてくれ」
そう言うと布で仕切られた向こうに寝ている御者に視線を向けた。
フラウはまぁ、あんな感じで僕ともイチャコラしているから問題ないけど、布の向こうの御者はそこまで経験豊富……じゃなさそうだから、って理由にしておくことにした。猥談を聞かれて夜も寝られず……ってなったら馬車を操りながら居眠りされそうだし。
これで通じる相手かは不明だけどね。
「帰ったら早速資料を漁ってみる事にする。何か見つかるかもしれんからな」
そう言いながら教授は防音の魔道具の効果を切った。
「明日も馬車に揺られなきゃならんからこの辺で楽しい時間は終わりにするとしよう」
「そうですね。御者が居ると言っても誰かが代わりを勤めねばならなくなる、そんな事もあるでしょうからね」
僕たちは、さも楽しい話をしていた時間を過ごしたと言葉に出して装った。
何処かで聞いているかもしれない見張りに向かって一応の言い訳を言うのだが……。
騙せているといいな~。
その後、僕たちを乗せた馬車は夜盗や魔物の襲撃を受けることなく、無事に王都へとたどり着いた。
その間に暇で暇でしょうがなく、誰もがうとうとと昼寝をしてしまい、眠れぬ夜を過ごしたことが数日あったことは別の話。
「無事に到着したな……」
「ですね、教授……」
王都の門を潜った僕たちを乗せた馬車。そのまま教授の勤め先の王立高等教育学院へと到着したのだが……。
クリガーマン教授とヴィリディスの言葉に覇気が感じられないんだよな~。
まぁ、それもわからないでもない。
だって、馬車の中にはこれでもか!って教授の研究成果や資料が乗っているんだから。
研究室へ運び込むのも大変だろう。
さらに整理すると考えると、卒倒してしまう。僕だったら。
「運び込むだけは手伝いますよ」
「すまないね。馬車も次に使うのがいるかもしれないから、早く返却する必要があるから……」
そう。馬車旅を始める前に決めた事だけど、護衛の他に馬車に積み込んだ資料などを研究室に運び込む仕事も請け負った。教授から頼み込まれたってのも一つの理由だけど、王立高等教育学院がどんな所なのかって興味があったってのもある。
ヴィリディスはちょくちょく足を運んでいたみたいだから興味は無いだろうけど。
「それじゃ、やっつけちゃいますか」
「頼んだぞ」
「って、教授もですよ」
「えぇ~~~」
「可愛く言っても気持ち悪いだけです!」
僕たちは王立高等教育学院の荷物搬入口に横付けした馬車の荷台から抱えられるだけの資料を持ち、教授の研究室へと運び込んだ。
僕たちに任せてしまえと企んでいたクリガーマン教授だったが、機先を制して逃走を阻止した。渋々とヴィリディスに従う教授が何とも可愛らしく見えたのは僕だけなのだろうか?
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