-40- トロール狩り12
「皆さん、ご苦労様です。亡くなった兵士には申し訳ないですが、トロールを撃退でてきてホッとしてます」
四体のトロールを何とか打倒した僕たち。
教授が皆を集めてぺこりと頭を下げている。
兵士達から何名か犠牲が出てしまった。当然、当初に吹き飛ばされて生死不明の三名も含めてだ。
それでも四体のトロールをそれだけの犠牲で済ませられたのだから上出来と言ってもいいだろう。
僕も体のあちこちに擦過傷を作っている程で、あれは苛烈な戦いだったと今になって恐怖がよみがえってくる。
四体ものトロールを打倒せたのは理由がある。
簡単に言うとトロールに備わっているはずの治癒能力が四体とも働いていなかった事だ。
兵士たちが使っている槍はトロールに効果が薄いのは当初からわかっていたことだ。何故、槍を主力の武器としていたかは戦術にある。槍を使ってトロールを牽制し、剣を使う兵士が止めとばかりに首を刎ねる、これを基本戦術としていたのだ。
その戦術が上手くハマっていれば苦労はしなかっただろうが、一度に相手にするトロールの数が多すぎてその戦術が使えなかった。兵士たちは一度に二体までと考えていたが、それよりも多かったのが理由だ。
想定以上のトロールを相手に槍が活躍できた理由は先程理由に挙げた治癒能力が働かなかった事だ。
痛みに対して鈍いトロールだったが、何度も何度も槍で突かれればその傷から血液が流れ出し動きが鈍くなっていった。頭で考えている動作が出来なくなり次第にイライラが溜まり、終には大きな隙を晒して首を刎ねられた。
治癒能力が働かなかったとはいえトロールの怪力には相当苦しんだ。
ゴブリンが身体強化魔法で己の身を強化していた時と違い、素の状態であの膂力は狡いと思うしかなかった。
「でも、まだいるんだろう?あれらよりも強いのが……」
僕はポーションをグイっと煽りながら溜息交じりに呟いた。
最初に現れた三体の小型トロールは全てがオスだった。ハーレムから弾かれたのだろう事は今は確実だ。
次に現れた四体の標準トロール。これらは全てメスだ。見たくは無いが体の特徴に現れているから直ぐに判明した。まぁ、股間にぶら下がっているモノが見えないのだから当然だろうね。
で、その四体は恐らくだがハーレム要員。だからその四体を囲っているボスがいるはずだ。
「あぁ。恐らくあと一体。ボスが残っているはずだ」
と言うのが教授やヴィリディスの考えみたいだ。
それなら早く倒してしまおう、と思うのだが、周りを見ていれば誰もが満身創痍。息も絶え絶えで戦いどころではなさそうだ。襲われれば仕方ないが、今は少しでも体を休めるべきだろう。
「教授が連れてきた魔法兵もなかなかの腕だったなぁ」
「訓練しているのだから当然と言えば当然だな。だが、教授が魔法を使うともっと凄いぞ」
「ん?教授って魔法を使えるの」
僕の魔法は牽制程度にしかならない土魔法だ。
僕よりもずっと魔法の腕が立つのがヴィリディス。何時も助けられている。
そのヴィリディスと同等かそれ以上に巧みに使っていたのが魔法兵。
ヴィリディスも舌を巻く使い手だった。威力はヴィリディスに一日の長が有りそうだったが。
まぁ、乱戦になって近接攻撃をしていたから、活躍の場はそこまで多くは無かったけど。
そんな巧みに魔法を扱う魔法兵よりも凄いのが教授だと言う。
だが、ここまで魔法を一つも使っていなかったので僕は魔法を扱えるとは思わなかった。
生粋の研究者とばかり思っていた。
「ああ、使える。だが、教授が魔法を使ったら、このあたり一帯が更地になるぞ?」
ヴィリディスが言うには、教授は魔法を使えないのではなく、魔法を使うのが苦手らしい。先天的に魔力を出すが出さないか、それしか出来ないのだそうだ。
だから魔法を使う、イコール、魔力全開の魔法を扱うしか無いのだとか。
「教授が魔法を使うのは最終手段だから、そうならないようにしないとな」
「それ、初めて聞いたんだけど……」
思わぬ衝撃的発言に僕は盛大に溜息を漏らすのだった。
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