-13-
ヴィリディスの合流から暫くの間、安定した稼ぎを見せていた。
フラウが見つけ、ヴィリディスが牽制し、僕が止めをさす。
この必勝パターンは何処からどう見ても隙が無い。
冒険者ギルドのランクも上がってしまうのではないか?そう思っても良いですかね。
まぁ、狩りの依頼しか受けてないのでランクが上がることは早々は無いでしょうが。
それよりもですね、この二日ばかりヴィリディスの様子がおかしい。
不満があるようにも見えないので、なにか悩んでいるのかと思うのですよ。
ただ、彼の事。うっかりと踏み込んでしまうと精神的に問い詰められそうで少し怖いんですけよね。
そんな事を思っていた時もありました。
そのヴィリディスが僕とフラウに話があるとかで冒険者でごった返すこの朝に酒場のテーブルで向かい合っているんですよ。
何でしょうか、このシチュエーション……。
「二人に少し話がある」
「今さらワタシに告白……って事は無いでしょうけど?」
「当然、そんな事は無い」
フラウ、今、茶化している時じゃないと思うんだけど。
ほら、ヴィリディスの顔が陰鬱になってる。
とりあえず、僕の口からも聞いてみようか。最近の事だろうけど……。
「聞かないでもないが、最近機嫌が悪いのと関係があるのか?」
僕そう尋ねると、驚いた表情を見せた。
ヴィリディスは平静を装ってたみたいだけど、僕たちにはバレバレだ。
気を抜かずに仕事に向かっていたから言うのをはばかってただけなんだけどね。
「そこまで言われちゃ仕方ない。今日、仕事を休みたいんだが良いか?」
「今日だけ?」
「その予定だ。明日には戻る」
今日だけ抜ける、そう言った。
何故、今日だけ?
何か隠している?それとも僕たちに知られると拙い事?
憶測が憶測を呼び、悪い予感が脳裏を過る。
いいのかなぁ、こんな感覚を浮かべて……。
「……それじゃ、ワタシたちでヴィリディスを手伝うってのはどう?ぼちぼち懐も温まって来たし一日、二日は休暇に当てても良いと思うのよね~?」
僕の嫌な予感はともかくとして、あくせく働かなくても良いとフラウは言った。
確かに順調に蓄えは増えている。武器などのメンテナンスを行ったとしても、だ。
贅沢しなければ、数日どころが二、三ヶ月は何もしなくても大丈夫だろう。あくまでも贅沢しなければだが。
それならば、今日、明日は仕事を休みにしてヴィリディスの不安を取り除いても良いかもしれない。まぁ、ヴィリディスが首を縦に振ってくれたのなら、だけどね。
「オ、オレに付いてくるってのか?」
「そうよ。そう聞こえなかった?」
「確かにそう聞こえたが?」
「なら、耳は正常みたいね」
あっけらかんと答えるフラウ。ヴィリディスの答えを聞かずとも手伝うのは決定事項のようだ。
まぁ僕も、懐事情を鑑みれば反対には回れないな。かなり暖かいし。
むしろ賛成に傾きつつある。
「……ま、人に会いに行くだけだからいいか。退屈かもしれんが」
一瞬思考を巡らせた後、僕たちが付いて行っても問題がないと判断したのだろう。お許しの言葉を貰うと、僕たちはお互いの手を叩き合わせて喜んだ。
冒険者ギルド名物、朝の喧騒が過ぎ去ったころ、僕たちはウェールの街へと繰り出した。
目的地は……ヴィリディスが案内してくれるので付いて行ってるが、僕たちにはあまりなじみのない場所と言った所だろう。
冒険者相手の安宿を定宿にしている僕たちにとっては。
ここは僕たちよりも裕福な、と言っても豪商とかそんなんじゃなく、ある程度の一定収入を得ている人達が借りているアパートが立ち並ぶ区画。閑静な住宅地とはちょっと違うが、昼間は住人が仕事へ行ってしまっているので、閑静なと呼ぶには……まぁ、少しは当てはまるかもしれない。
そこをヴィリディスと歩いていると目的地へと到着したのだが……。
「なんかあったのか?」
その不思議な光景に僕はぼそりと言葉が出てしまった。
彼が視線を向けている場所に立ち入り禁止のロープが張ってあり、さらに、歩哨の騎士がその前を塞いでいたのだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます