-12- 教会2
「大司教様。無事に処置を終えました。その御報告です」
「うむ、ご苦労」
今いるのは、ウェールの街から三日ほど南に歩いたところにあるレスタートンの街にある教会の一室である。馬車移動できるとは言え、三日の移動は腰に来ます。
優しく腰をマッサージしてもらいたいくらいです。
綺麗な司教様に……。
一仕事終えたのですからその位のご褒美は欲しい所ですが……。
「しかし、信徒が一人、天に召されておりますが」
「その位は仕方ないだろう。彼に安らかな眠りを……」
「安らかな眠りを……」
大司教と共に、天に召された信徒へ送る言葉を述べる。
少々強引ではあったが、無事に事が済んで良かったと思う事にしよう。
それにしてもどんな手を使って、更に従順な信徒にしたのでしょうか?
神の力によるものなのでしょうか?
それよりも、あの殺し屋は何なのでしょう?
敵の事ではありません。
物静かな雰囲気で間違えてしまうかもしれませんが、アレは違います。大人しくしていたのは牙を隠していただけ。どのように人を殺すか、それしか考えていないのです。
確かに悩める子羊たちを導くのが教会の仕事ではあります。
ですが、少し道を誤っただけで生きると言う道を外すのはどうなのでしょうか?
進んでいる道が間違っているから正した、とは言いますが……。
あ、いえ。教会に疑問を抱いている訳ではありません。
もう少し別の方法で道を正すべきではないかと思うのです。
「さて、司教よ。これで一つ憂いを取り除くことができた、ご苦労だったな」
「勿体なきお言葉」
道を誤ったあの男を天に通ずる道へと進められた、そう思う事にしましょう。
これ以上の考えは不毛であると思いますからね。
あの男が一つだけ教会に利益をもたらしたとするならば、新たな遺跡を我々に示したことでしょうか。
そこだけは有難いと思う事にしましょう。
それよりもですよ、大司教に有難いお言葉を頂きました。
一層、仕事に励むとしましょう。
「それで奴はどうだった?」
「はい。一応、致命傷を与えて跡を付けましたが、何処に属しているかわかりませんでした」
「ん?それは……」
そうです。
殺し屋とあの男の一騎打ち。それの間隙を縫って信徒の一撃。
すぐにこの世から退場とまでは行きませんでしたが、その男のアジトは特定できました。
ですが、アジトには何もありませんでした。
と言うか、アジトと呼ぶには大げさすぎます。ただのアパートと言うべきでしょう?生活感もあり、誰が尋ねて来る訳もない。ベッドと生活用具があった、それだけです。
まぁ食材もありましたから、生活していたのは間違いないでしょう。
背後関係を認められなかったので一匹狼としか思えませんね。
後に調べたら賃貸物件。本当にアパートでした。
「なるほど、よくわかった」
「ふむ、司教よ。お前もそろそろ幹部の仲間入りをしてもよさそうだな」
「そのようなお言葉を頂き勿体なく思います」
「いや、本当にそう思うぞ。これまでの働きに対し、褒美を出しても良いくらいにな」
ですが、幹部になればこれまで以上に教会に尽くす所存です。
是非とも
「うむ、やる気に満ちているようだな。それでこそ幹部に相応しい」
「恐縮です」
ですが、次の言葉は
「では、一年ほどある場所で幹部教育を受けてもらう。拒否は許さんからな」
「はいぃ~?」
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