第26話 同じ願い
夕食が終わったのが22時、さすがに2人とも疲労の色は隠せず、今日は早くベットに入ろうということになった。代わる代わるシャワーを浴び、早々に寝支度を済ませた我々は、昨夜より2時間も早く横になった。昨夜と同じく、私に身体を寄せる斉藤の頭を撫でながら、「今日は誰と一緒だったんですか?」「クマちゃんだよ、めっちゃアイドルの布教された。」「ウケる、どうでした?」「よくわからない。」「クマさんドンマイ。皆さんに会いたいなぁ。最近全然バイト入れてないから寂しい。」、そんな他愛もない話をしていた。
「そういえば、イッシーって彼氏いないんだっけ?」
唐突な質問に、いないですよ、と答える。
「気になってる人は?」
そう質問され、答えに窮した。
「最近、よくわからなくて。よく遊ぶ男の人はいるんですけどね。」
と返すと、どんな人?付き合わないの?キスは?エッチは?と尋ねる斉藤に、もう1つのバイト先の社員で、身体の関係はあり、周りにも付き合ってるのかと聞かれるがそうではないこと、嫌いではないが好きかと聞かれるとわからない旨を説明した。すると私の胸に埋められていた彼女の顔が離れ、部屋の冷たい空気が2人の間を割った。彼女が何か言いたげなのを察し、髪の間から指を抜き、彼女と同じ目線になるまで布団に潜った。今度は斉藤が私の頭を撫でる。
「人のこと言えた義理じゃないけど、イッシーには、幸せになって欲しいなぁ。」
ありがとうございますと答えながら、彼女の腰に腕を回し、その豊かな胸に顔を押し当てた。柔らかく、温かい。とてつもなく幸せで、このまま時が止まれば良いのに、と思う。その時、昨夜より控えめに、心臓がキュッと締め付けられるのを感じた。
「私が男だったら、それかイッシーが男だったら、迷わず付き合うのになぁ。」
「どっちかって言うと私が男の方が良いですね。聖子さんが男になるの、勿体ない。」
「どういうこと?」
「こんなにふわふわで、温かいオッパイは、人類のために残すべきである。人を癒す力がありますよ、ここには。」
そう語りながら、彼女の胸の谷間で顔を左右に振る。バカだなぁという苦笑が耳に入るが、私を撫でる彼女の手からは慈しみがしっかりと伝わってきた。
「このまま、時が止まれば良いのにな。」
斉藤が言う。
「偶然ですね、私もさっき同じこと思いました。」、敢えて口には出さず、壊れものを扱うようにな優しさを込め、精一杯の力で彼女を抱き締めた。すると、何故か涙が溢れてきたので、気付かれないよう、そのまま眠りについた。
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