第二章

プロローグ

 夢を見ていた。


「いいかい、迷宮ラビリンスは凄いんだぜ? 兵士だの役人だのは退屈がすぎる。魔力に目覚めて迷宮ラビリンスに行かないってなぁ、そりゃあ鳥に生まれたのに飛ぶ楽しさを知らないみたいなもんさ」


 彼女は雄弁に、それでも半分はにかみながら言った。


「ほら、君の番だ」


 俺?


「君は、どうしたい?」


 どう、って。やりたいことは……ないかな


「じゃあなりたいものだ。何かないのかい」


 ……ない


「つまんねーやつ」


 仕方ないじゃないか。

 そういう性分なんだ。期待なんてされたことないし


「本当にそう思ってるやつが、物語なんて読み耽るかね?」


 うっ。


「言ってみな。笑わないから」


 本当に?


「もちろん」



 じゃあ言うけど──



 そうだ、これは記憶。

 ずいぶん昔の、何も知らず、何も起こってなかったときの夢。

 相応に心の奥底にしまっていた幼稚な願望を、彼女に曝け出した。



「小さい頃、魔法使いに憧れてた」


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