第65話「宝箱ゲット」
「それじゃあ。お互いに首尾よくやろう。無事にここから脱出するために」
ジェイドはそう言うと、ベリルとともに捕虜牢を後にした。
捕虜牢の前室には、大工長の灰の山が今も残っている。その近くに、立派な装飾が施された銀縁の木箱があった。ちょうどテーブルの真下の大工長の足元に置かれていた箱だ。木箱に気づいたジェイドが、その箱を引っ張り出した。
両手で抱えられるくらいの大きさだが、まさに宝箱と言った感じだ。
「また追いはぎごっこ!? バカなの!?」
ベリルは、この状況でもこういうことをする兄に面食らった。いつ海賊たちがやってきてもおかしくないのだ。
「待てって。これ、さっきこいつが賭けてた宝だよな……」
手下と大工長がギャンブルをしていた時に、そんな話をしていたのだ。
ジェイドは、灰の中からあの鍵束を引っ張り出した。束についていた小さな銀の鍵。それと箱の装飾はよく似ていた。銀の鍵を鍵穴に差し込んで回すと、木箱は難なく開いた。ベリルも、思わず近寄って覗き込む。
入っていたのは、革のベルトに収まった銀色の斧だった。木こりが木を切るときに使う物ではなく、戦闘の際に使われる片手で振れる戦闘用の手斧、バトルアックスだ。
「すげえ。特別な武器なのかな?」
ジェイドは、斧を手に取ってながめた。
長い間、箱に収まっていたと思われるが、不思議とその斧は、錆びることも黒ずむこともなく輝いている。グリップの部分は、赤く染められたレザーが格子状に丁寧に編み込まれて巻かれている。そして、装備するための革ベルトまでついていた。
「いいね。いただいておこう」
ジェイドはそう言うと、ベルトを腰に回して、銀色の手斧を装備した。
「さ、早く行こうよ」
「ああ、ヴッウウンッ!」
ベリルの問いかけに、ジェイドは顔を歪ませて咳払いした。
「ジェイド?」
ベリルの目の前で、ジェイドは床につばを吐き捨てた。それは、どす黒い血だった。
「
「ナイフで切れちゃったんだね? 傷、深いの?」
「さあな。ま、仕方ねぇさ」
喉を押さえながらジェイドは言った。
海賊たちに捕まった時、甲板長がジェイドの髪をつかみ、首をのけぞらせた。その時に喉が圧迫されて切れたのだった。刺すような痛みが、ジェイドの喉を襲ったが、なんとかごまかしてきた。
「さ、行こうぜ」
「うん」
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