第62話 永遠の彼方ってかっこいいよね?1

 俺と宗一郎がパンパンに詰まったスーパーの袋を持って屋上に転移すると、龍之介たちに爆笑された。


「ふふっ、ふははっ! こいつらバカだ」


「あんた達、どれだけ飲み食いするつもりよ……一応言っとくけど、このあと実技の授業だからね?」


「ごもっともです……」


 完全に調子に乗りました。


 普段コンビニなんて行かないから、品揃え豊富すぎてちょっとテンションが上がったのは否定しない。

 でも、多分8人いるし、龍之介とか宗一郎はそこそこ食べると思うし、結構適量だと思うんだけどな……


「ま、まぁ最悪余ったらカレンちゃんに食べてもらおうよ。ね、朱音」


「うん。そうだね。カレンならこの量でも10分もかからないかも」


「さっすが朱音さん大好きー!」


「きもい」


「ぐはっ」


「俺は毎回思うけど、こいつの馬鹿さ加減には涙も出てこねぇよ……」


 綺麗に龍之介が落としてくれたおかげで、屋上には楽しそうな笑い声が響いた。


 空は快晴。

 風も心地よく、屋上でご飯を食べるにはもってこいの天気だ。


 むしろ、こんな日も食堂でご飯を食べていたらもったいなかったと後悔していたかもしれない。

 なんだかんだで、ちょうどいいタイミングだったのかもね。

 まぁ、下の様子を見ていると、他の生徒達は空を見る余裕すらなさそうだけど……


 いつの間にか、朱音の機嫌も戻ってるし、よかったよかった。

 しばらくは少しだけ気を向けるようにはするけど、朱音のことだし結局は本人で解決しそうだ。


 ただ、朱音は一人でなんでも抱え込むことも多いから、少しだけ心配だ。


「朱音」


「ん? 蒼どうかした?」


「俺はお前のことを信じてる。だから、何も聞かないよ。だけど……本当にどうしようもなくて、泣いてしまいそうなその時には……全力で俺の名前を呼んでくれ。そうしたら、俺は世界の裏にいてもお前のことを助けに行くよ」


 俺は朱音にだけ聞こえる声で……正確には防音の魔法を使って朱音にだけ聞こえるようにしてそう言った。

 少しだけキザっぽく、そして何気ないように、俺はそう言った。


 俺は主人公じゃないからね。


 道化師っぽく、悪戯な笑みも追加しておこう。


「……なにそれ。意味わかんない」


 朱音は俺にだけ聞こえるように、そう呟くとそれ以降なにも言わずに宗一郎達の輪に入っていった。

 返事はなかったけど、しっかり聞こえてたみたいだからよかった。

 可愛い女の子が困ってる顔をするのも非常に萌えるけど、やっぱり朱音たちは笑顔が一番映えるからね。


「あ、誰だ俺の焼きそばパンを取ったのはっ!」


「残念。朱音様に献上しなさい」


「ぐわぁぁぁぁぁ!!! 俺の焼きそばパンちゃんがぁぁぁぁぁ!!!」


 くそッ焼きそばパンを口に入れてる朱音が可愛いからなにもできない!

 せっかくさっきちょっとかっこよく決めれたと思ったのにすぐこれだよ。


「ほら蒼、私のおにぎりあげる」


「うぅ……ありがとう透。はむっ。あれ?」


「一口だけね。あとは私のもの」


「まだ具まで辿り着いてなかったのにっ」


 ひどい。

 この悪魔達は俺をいじめてそんなに楽しいのだろうか。


 さっきから宗一郎は幸せそうにメロンパンを頬張ってるし……俺も余ったパンとおにぎりを食べよ。

 最初から薄々こうなることはわかってたもん。




 全然悲しくないもん……



 結局その後、なんだかんだで買ってきたもの全て食べ尽くした。

 最初は無理だと思ったけど、意外と女性陣もガツガツ食べてたので、すぐに無くなった。


 朱音達も普段あまり菓子パンとか食べないから新鮮だったんだろう。


「そういえば、蒼はクランを作りたいって」

 

「いいんじゃない? 私は賛成」


「俺も意義なし。多分、蒼が一番適任だろ。宗一郎は忙しそうだしな」


「おいこら俺は暇そうだってのか」


「実際暇だろ?」


「まぁ暇ですね。ってことで、クランを作ろうと思うんだけど、みんな入る?」


「「「「「「「もち!」」」」」」」


 実に仲のいいことである。

 普通、学園生活を大きく左右することのはずなのだが、彼ら彼女らには一切の躊躇がなかった。


 まぁ、俺も断られるとは思ってなかったけどね。


「お金は俺が払っとく……というか、獅子王アプリで入金できるしもう作っちゃうか」


「葛木先生の許可は大丈夫なの?」


「さっき帰りにもらってきたから大丈夫。なんか一年生のうちは監督者がつくらしくて、柊木先生と葛木先生がそのまま担当してくれるって」


 実は、こうなることを見越して先に許可はもらってきてあるのだ。

 というか、説明の途中ですでに許可をくれるようなことを話していたから、一応の確認である。


 葛木先生も笑顔で了承してくれたので、あとは獅子王アプリでお金を入金して、クラン設立申請をするだけである。


「えーっと、入金っと」


「普通そんなに軽く10億も払わないんだけどね……」


 宗一郎は若干呆れているけど、俺に取っては10億で宗一郎達と楽しい学園生活を送れるならむしろ安い方だ。

 ちなみに、この10億は自分で稼いだお金なので安心してね。


 決して妹から貰ったりしてないから!


「登録完了っと、あとはクラン名だね。どうする?」


「蒼が決めちゃいなよ」


「了解……なら、『永遠の彼方』で」


「かっこいいじゃない。私たちの不老と掛けたのね」


「さすが琴葉。御名答」


 永遠に生きる俺たちのその先は……ってちょっとロマンチックじゃない?

 琴葉の解説を聞いて、他の仲間達も異議はないようで、そのまま俺たちのクランの名前は『永遠の彼方』に決まった。


 こうして、獅子王学園で最強クランがまた一つ出来上がった。

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