第33話 閻魔召喚2
第二ラウンド、今度は閻魔が何か仕掛けるようだった。
少し離れたところで透と琴葉も激しく戦っているけど、閻魔と酒呑童子はその域を超えていた。
二人とも、透と琴葉に危害が加わらないように気をつけているみたいだけど、それもそろそろ限界のようだ。
明らかにさっきから危ないシーンが増えてきた。
「ミカエル、あの二人の結界をもう少し強めてあげて」
「はい。ですが、このままでは……」
「ミカエルも少し力を使っていいよ。大丈夫、責任は俺が持つよ」
「いえ、さすがに蒼さまにそこまで……わかりました。では、少しだけ力を解放させます」
ミカエルはそういうと、先ほどよりも力を込めて透と琴葉に結界を張ってくれた。
さっきのミカエルが通常だとすると、今のミカエルはそれの2倍ほどステータスが上がっている状態のはずだ。
これでもなおミカエルは全力ではないし、単にステータスを上げるだけならほぼ無限にできるはずなので、ミカエルが敵になると非常に厄介だ。
まぁ今はこれくらいの力でも問題なく二人を守れるはずだ。
閻魔も酒呑童子も少し熱くなっているみたいだけど、それでも二人の感覚的には戯れ合いの延長線上のはずだ。
本気で殺し合いを始めたらこんな可愛い戦いじゃ済まないからね。
殺し合いなら多分初手でこの学園が消滅するくらいの魔法が飛び交っているはずだ。
「酒呑童子、これならどう?」
「ふむ、複合魔法陣か。なかなか面白いが、まだまだ芸が足りんぞ?」
「えへへ〜。じゃあ魔眼でこの魔法陣を強化してみるね! しっかり相方を守らないと、死んじゃうかもよ?」
「その辺りは心配ない。妾がいなくとも、ミカエルと蒼がなんとかするはずじゃ。お主もあまり調子に乗ってると後でミカエルに怒られるぞ?」
「僕は閻魔だよ? なんで大天使ごときに気を使わないと……っ⁉︎」
ニコニコしながら会話をしていた閻魔だったが、空中に浮いていたはずが最後まで言い終える前に地面に叩き落とされていた。
その犯人はミカエルである。
俺たちどころか厄災級3位相手にも知覚できない速度で閻魔に近づき、そのまま拳で閻魔を殴ったのだ。
閻魔も油断していたとはいえ、ステータスアップしているミカエルがここまで強いとは酒呑童子も閻魔も思っていなかったのだろう。二人とも冷や汗を流していた。
「それで?」
「い、いや。今日も君は綺麗だね」
「あなたに言われても嬉しくありませんね。無駄口を叩いてないでさっさと戦ってください。あぁ、ちなみに蒼さまや透様たちに危害を加えた場合私があなたを消しますので気をつけてくださいね」
「酒呑童子、彼女怖いよ!」
「み、ミカエル。その辺に……」
「ロリ体型が何か?」
「な、なんじゃと! 妾と喧嘩がしたいなら買ってやるぞ!」
ロリ体型と言われた酒呑童子はひどくお冠のようだ。
まぁ、身長は小さいし胸も残念だがそれが好きな男もいるはずだ。しかも酒呑童子も覚醒した時には確かスタイル良くなってた気がするからそこまで怒ることでもない気がする。
「いいね。僕も参戦するよ」
「いいでしょう。あなたたちとは一度しっかりと格付けしておく必要があるみたいですね」
「「「いざ、勝負!」」」
「はいちょっと待った」
流石にこれ以上三人を遊ばせておくわけにはいかない。
「向こうの勝負がついたから、これで模擬戦はおしまいね。これ以上戦うっていうのであればロキたちも連れてくるけど、どうする?」
「「謹んで辞めさせていただきます!!!」」
「よろしい」
うん。魔を司るものからすればロキは天敵なのだろう。
あまり虎の威を借りるのは好きではないが、この二人にはこれが一番効くので使わせてもらうことにした。
ちなみに勝負は琴葉の勝ちである。
透も善戦したようだが、まだまだ琴葉の方が上手だったようだ。
「二人ともお疲れ。はいこれ飲み物」
「はぁ、はぁ、ありがとう」
「ありがと」
二人のもとに行くと、透は息が上がってしんどそうだったが琴葉は少し汗をかいただけのようだった。
透だって弱くない。
そんな透を相手にここまで圧倒的に勝てる琴葉が異常なのである。
「透、一応回復魔法をかけておいたけど、疲れただろうから控え室で休憩してきていいよ」
「んー。わかった、そうするよ」
若干不服そうだったが、透はそのまま控え室へと向かっていった。
あそこにはシャワーやエアコン、仮眠用のベッドなどもあるので体力を回復するにはもってこいの場所のはずだ。
「蒼、マッサージして」
「……ここで?」
「逆にどこがあるの?」
「今のお前えっちぃからやだなんだけど」
息は乱れていないが、少し汗を書いている琴葉は非常に扇情的だ。
この状態で、しかもみんなに見られている中マッサージをするのはちょっとまずいんじゃないでしょうか?
流石に俺だって恥ずかしいよ?
「つべこべ言わずにさっさとやりなさい」
「かしこまりましたよお嬢様」
最終的に俺には拒否権がないので、大人しく端っこにマットを用意してそこでマッサージをすることになった。
いつもなら俺にこんな雑用をさせようものならミカエルが黙っていないのだが、琴葉や朱音たちが絡むと一気に何も言わなくなる。
それどころかマッサージ用のタオルやローションまで勝手に用意してくれてるから何だかなーって感じである。
今は朱音たちの方に行って指導しているみたいだった。
「んっ、相変わらずあんたのマッサージは気持ちいいわね。私の執事になりなさい」
「絶対嫌だ」
「もったいないわね。私の執事になりたい人なんて死ぬほどいると思うけど?」
「確かに、お嬢様だし可愛いし、しかも強いし。お前将来モテそうだな」
「残念。現在進行形でモテまくってるわ」
「嫌味にしか聞こえねぇ」
なんてくだらない話をしている間にも俺は慎重に琴葉の体をほぐしていく。
しょっちゅうこうしてマッサージをしているので、どこが懲りやすいとかどこが気持ち居場所なのかとか大体わかるようになってきた。
最初は女の子の体を触るなんてっ! と思っていたけど、今はもうなんとも感じなくなった。
「蒼、手つきがエロい」
前言撤回。全然緊張するし雑念が湧きまくりである。
だって仕方ないじゃん。幼馴染とはいえこんなに可愛い女の子のマッサージをしてるんだよ?
俺だって男だ。
いつまで経っても女の子には緊張するのである。
「ってかお前エステとか行ってるんだろ? 俺いるか?」
「あんたにマッサージをしてもらうと気分がいいのよね。奴隷を働かせてる感じがして」
「おいこら乳揉むぞ」
「やれるもんならやってみなさい。その瞬間あんたの息子がこの世からグッバイするでしょうけどね」
「……リアルで寒気がするからやめてね?」
琴葉ならやりかねないのが怖いところである。
結局、俺はその後10分ほど真剣にマッサージをしてからみんなの元に戻るのであった。
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