第15話 VSお坊ちゃん②

「なっ……」


 一瞬、反応が遅れた。

 

 今、雪空を頂戴とか言ったのか……?


「あれ? 聞こえなかったの? オークションに出されていたその飼恋人セフレを僕にちょうだいって言ったの」


 マジか……えーと……。


「君も飼恋人セフレを連れているなら常識はあるだろ? 他人の飼恋人セフレは奪うことができない」


「うん、知ってるよ。だからお兄さんが契約を解除すればいいだけだよね。それなら主人はいない状態だし、何も問題ない」


「何も問題ないって……」


 相手は小学生。

 自分の欲しいものは全部くれると思っていてもおかしくない。


 ……とんでもない奴が現れたな。


「坊ちゃま。ここは私が代わりに話を」


 隣にいたお姉さんが前に出た。


「久城様は大学四年生、そろそろ就職活動の時期でしょう。そこで条件があります」


「……条件?」


「そちらの飼恋人セフレを譲っていただけた暁には、我が芳賀グループに入社できる権利が与えられます」


「はっ?」


 つまり、会社に入れてやるから雪空を渡せってか?


「お兄さん、宝くじが当たったんだよね。それも12億。でもそんなの一瞬でなくなっちゃうよ? 今、その子を渡せば将来は安定した収入を得られる。たった一人の飼恋人セフレを渡せば一生裕福な暮らしが約束される。こんなの、どうすればいいか分かるよね?」


 得意げに話すお坊ちゃん。


 確かに彼の言う通りだ。

 今回も1億もいう大金を使った。

 人生何が起こるか分からない。

 宝くじのお金だって使ってしまえばなくなって当然。

 

 なら、飼恋人セフレを差し出し、勝ち組人生を選ぶ。


 ——普通の人なら流されるかもしれない。


 だけど俺は、絶対そんな事はしない。


 飼恋人セフレを、雪空を……大切な幼馴染を渡すわけにはいかないッ。


「……ふざけんな。ふざけるな! 自分の大事な人を権利で取り上げようとするなんて馬鹿げてるッ。子供の頃からそんな横暴だといつか痛い目に遭うぞ!」


 言い終わった後で、ハッ、と口を押さえる。


 しまった、いくらイラッとしたとはいえ、小学生相手に言いすぎたか……?


「……む、しぶとい」


 良かった、泣いたりはしてはいない。


 中々、引かないようだな。

 こうなったら……


「ふふ、万尋くん、そんなに怒ってはいけませんよ」


「っ、アンタは……」


 飼恋人セフレの中から現れた女性。見覚えがあり、目を見開く。


 こんなところで再会するとは……


「また会えて嬉しいです。久城くん……」


 笑みを浮かべ、お坊ちゃんの隣に並ぶ女の子。この前、大学で告白してきて、詩乃にビンタを喰らわした女子生徒だ。


「お姉ちゃん、この人しぶとい……」


「ふふ、そういう一途なところが久城くんのいいところなの」


 腕輪は白。彼女以外に白はいない。

 つまり、仮恋人セフレでお坊ちゃんの姉なのか……。


「驚かれていますね。私の本名は芳賀未來はがみらい。大学では偽名を使って通っています。芳賀グループの娘とバレると色々と厄介ですから」


 姉弟は似るってか……。

 横暴なところはそっくりだ。


「離れ離れになるのが嫌なら、全員買いましょう。残りの飼恋人も、ねぇ……」


「ひっ……」


 芳賀さんが詩乃の方を睨み、詩乃が短い悲鳴を上げ、俺の服を掴む。


 ……この人に買われたら間違いなく、詩乃が酷い扱いを受けるに違いない。


「ふふ、怯えなくても大丈夫ですよ〜。優しく指導してあげますから。本来の飼恋人セフレの価値というものについて……」


「このまま話しても埒が明かなそうだし、強制的に連行するしかないかも」


 パチンと坊ちゃんが指を鳴らしたと思えば、どこからか現れたスーツを着た女性が周りを囲んだ。


「詩乃……」


「お姉ちゃん……っ」


「まーくん……」


 このままじゃ絶対絶命だ——何もできなければ。


「……ふふっ」


「ん? 肩を震わせてどうしたの? もしかして譲る気になった?」


 勝ち誇っている顔。

 しかし、今度はイラっとしなかった。


「ふふっ、ふふふっ……あはははっ」


 笑いが漏れる。

 ……あー、我慢できなかった。


 俺が笑い出すと、坊ちゃんと芳賀さん、周りは唖然としていた。


「な、何がおかしいんだよ……!」


 笑い声は気に入らなかったのか、坊ちゃんは顔を赤らめて声を荒らげた。


「いや、悪い悪い。大人しく聞いていれば面白い事ばっかりになるからさ。さて……お坊ちゃんにそろそろ分からせてやるか」


「? 僕を分からせる?」


 そんな事できる訳がないと、鼻で笑われる。


 俺はそんな姿を尻目にポケットからスマホを取り出した。




〈あとがき〉


 最近、疲れて学校から帰ってきたら寝てしまいますね、あはは……。


 ここから反撃だ!(꜆꜄꜆˙꒳˙)꜆꜄꜆オラオラオラ

 次回もお楽しみに!

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