89限目 注目を集める
翌日。
レイラが教室の自分の席に座るとすぐにレイラ付きの特待Aである夢乃に話しかけられた。その横には藤子がいた。
朝早かったため、まだ教室にはレイラと夢乃、藤子以外に生徒はいなかった。
「おはようございます。早いですわね」
「当たり前です。コレ、教えてください」
夢乃はそう言って、自分の端末にきているメールを指さした。そのメールの件名は“桜花扇子について”となっていた。もちろん、レイラにも同じメールが桜花会から届いてるため内容を知っている。
(質問攻めとか好奇の目を避けるために早く登校したんだけどなぁ)
「もしかして、レイラ様めんどくさいと思っています」
「……」
「当たりですね」
嬉しそうに話す夢乃にレイラは眉を下げた。
「夢乃さん」
藤子が困った顔をして彼女の名前を呼んだが、彼女の行動を強く止めることはしなかった。レイラは、椅子に座り直すと彼女たちを見た。
「教えるも何もそこに書かれるている通りですわ」
「それではレイラ様が亜理紗様に扇子を渡したのですね」
「ええ」
「そうですか。これで、色々と落ち着きますわね」
夢乃は安心したような顔した。
「落ち着く……?」
「ええ、はっきり言って亜理紗様は桜花会の癌ですわ。彼女の特待Aに任命されて特待をやめた生徒もいるのですよ」
夢乃はレイラの方に身を乗り出して語った。
(そんな話を聞いたことがあるが、高待遇を受けられる特待をやめるとは相当だよな)
「特待やめた生徒は退学したのですわよね」
「桜華の学費は高いですからね」
レイラがうなずいた。
「基本的に特待には拒否権はないのですよ。拒否するということは特待をやめなくてはならないのです。そもそも、配属拒否は桜花会への冒涜となり退学です。もちろん、そんな決まりはありませんがそうせざるえない環境です」
「配属先は生徒会が決めますから誰も口を出せません。だから、私はレイラ様につけて幸せでした」
ずっと黙っていた藤子がゆっくりと嬉しそうに語った。それに続いて「私もですわ」と夢乃が言った。レイラはそれを嬉しく思い礼を言った。
「そう言って頂けて幸栄ですわ」
しばらくすると教室に生徒が増え始め、チラチラとレイラの方を気にする生徒の数が多くなった。レイラに直接質問する人間はおらず、遠巻きにレイラを見ていた。
「おはようございます。レイラ様」
楽しそうに声をかけてきたのは、生徒会で特待Sの彩花だ。彼女はレイラを気にする周囲を見てニヤリと笑った。
「おはようございます」
「そういえば、亜理紗様に桜花扇子渡したのですよね」
彩花はわざと周囲に聞こえる声で話をした。それに夢乃は彩花を睨みつけた。藤子は困った顔をしているが何も言わない。
「ええ」
「では、亜理紗様は上級生ですがレイラ様より下となるんですよね」
「そうですね」
彩花に質問にレイラは淡々と答えた。
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