第30話 ライル捜索
「うーむ…………」
ライル捜索をしていたルベルトは、何とか歩き回って、手掛かりを追っていたのだが、そう簡単に見つかるようなものではなかった。
ライルが逃げたと思われる場所や、犯行を行ったと言われている村にも行ったが、まるで手掛かりはない。
アッシュとは現在別行動をして、情報の収集をしている。
今は待ち合わせている酒場で、アッシュが来るのを待っているところだった。
チラリと酒場の壁に貼ってある、指名手配書を見る。
ライルの指名手配書が貼ってあった。
(あれのどこがライルじゃ……まあ、本気で探す気は今のところないのかもしれんのう……)
ライルの似顔絵を見るたび、ルベルトは安心するような呆れたような気分になっていた。
ライルは現時点で魔法が使えないので、帝国に取って脅威となる人間ではないのは間違いない。
悪行をでっち上げて、悪逆非道そうな似顔絵を描いてそれを帝国内に配り、ライルの名誉を貶めようとしているという狙いは、ルベルトにも分かった。
(こうなると名誉の回復は難しいじゃろうな……ライルの無罪を晴らして、正当な報酬を皇帝陛下に約束させるというのは、もう無理かもしれぬ……)
それでも生きていれば、幸せに生きることは出来る。
今は、追放され、味方が誰もいないであろうライルには、味方になるような人物が必須だと、ルベルトは思っていた。
しばらくすると、慌てた様子でアッシュが酒場に飛び込んできた。
「ど、どうした?」
「目撃証言があった。トレンス王国から来た奴なんだが、ライルと似ている奴を目撃したらしい」
アッシュとルベルトは、手配書に描かれている、全く似ていない似顔絵ではなく、自分たち絵師に依頼して描いて貰った、ライルらしい似顔絵を持って、捜索していた。
「本当か!?」
「髪はこれより長いらしいがな……ただ、あまり自信はなさそうだったな……多分そうかもくらいな感じだった」
「まあ、じゃろうな。ライルはあまり顔に大きな特徴がないし。この似顔絵だって、だいぶ苦労して描いて貰ったからのう」
長年、付き合ってきた者も、ライルは顔にあまり特徴がないと感じていた。
「うーん。それだと本当にライルかは怪しいところじゃな……」
「ほかに手掛かりは見つかったか?」
「いや、ない。うーむ……」
ルベルトは悩む。
トレンス王国は、今いる場所からは決して近くはない。
もしも行ってみて空振りに終わったらダメージは大きそうだった。
しかし、こうして悩んでいるだけでは、何も進展しないのは事実である。
「いくか、トレンス王国に。具体的にどこで見たのじゃ?」
「ラーマスって街らしい」
「ふむ、有名な町じゃな。人口も多いし、探すのは骨が折れそうじゃのう。行くか」
ルベルトとアッシュは、トレンス王国のラーマスへと出発した。
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