第151話 それなりに疲労を抱えて集合場所に辿り着く件
「それで、スキル宝珠は誰が覚えるの、叔父さんっ!? あっ、他のスキルの相性チェックは、みんなで先にやっといた方が良いよね?
忙しいなぁ、集合場所に着くのはあとどれ位?」
「1時間も掛からないよ、今日は
確かにやれる事は、今のうちにしておいた方がいいかも」
「上級の鑑定の書は、何枚かドロップしたんだっけ? 香多奈、アンタちょっとチェックしときなさいよ、後は順番的には誰になるのかな?」
姉の姫香に鑑定しろと言われて、それもあったと騒ぎ出す香多奈は通常運転である。まぁ、家族旅行と言うイベントが加味されていると思えば、許せる範囲だろう。
そんな訳で、車内では色々と鑑定大会が開催される気配。何しろいつもの妖精ちゃんサービスで、実に20個近いアイテムが魔法の品であると報告されたのだ。
この結果には、さすがの子供達もビックリ。あのダンジョンに探索に入るチームは、随分といなかったのかもねぇと取り敢えずは自分達を納得させて。
それからまずは、スキル書とオーブ珠の相性チェックから。
問答無用でペット達も巻き込んでの結果は、まずスキル書3枚に関しては残念ながら該当者は無しの結果に。順当に青空市で売るか、それとも新しい仲間に振る舞うかまでは未定。
それからオーブ珠については、何とコロ助が初の特殊スキル獲得に至って。妖精ちゃんによると《韋駄天》と言うスキルらしい、おそらく駆け足が速くなるのだろう。
もう1つの宝珠だが、妖精ちゃんチェックによると封じられているのは《豪風》と言うスキルだとの事。この辺から小さな淑女は、一緒に回収したモモ缶に意識を吸い取られ。
香多奈にうるさく、これを開けろとせっつき出す始末。果物と言えば虹色の果実も3つあるねぇと、紗良の報告にカオス度はより増す事態に陥って。
結構な話し合いの末、《豪風》は姫香が覚える事に。
「何か『旋回』と相性が良さそうだし、私も魔法系のスキル覚えた方が良いかもだしね。その代わり、レベルアップ果実は護人叔父さんが食べて良いよっ!」
「そうか……それじゃあ1個頂くかな、他はレイジーとミケにでもあげてくれ」
そんな訳で虹色の果実の分配も決定、ただしミケは果実を食べようとしなかったけど。仕方なく余った1個は、物欲しそうな顔をしていたコロ助にあげる事に。
そして鑑定の結果だけど、今回のドロップの鑑定の書ではとても足りなくて。前回の余りを引っ張り出して、何とか全ての品の鑑定をする事が出来た。
【羅刹の腕輪】装備効果:敏捷up・小
【鬼切丸】装備効果:鬼特効・小
【人食い鬼の牙】使用効果:対人特効・骨素材
【鬼の額当て】装備効果:奇眼付与
【朱塗りの薙刀】装備効果:敏捷&筋力up・中
【武将兜】装備効果:腕力up・中
【身代わりのお守り】装備効果:ダメージ身代わり(1/1)
【健康のお守り】装備効果:全耐性up・中
【般若の仮面】装備効果:ステup・中
【羅刹の剣】装備効果:闇属性付与・中
【桃の枝】使用効果:破邪効果・木工素材
【桃の実】服用効果:長寿&健康・秘薬素材
【鬼殺しの鎧一式】装備効果:破邪効果・中
【強化の巻物】使用効果:破邪付与(白の魔石使用)
【打ち出の小槌】使用効果:ステup30min・大
【巾着袋】使用効果:空間収納・中
【魔鬼の首飾り】装備効果:魔力up・小
それにしても武器や装備品が、これでもかとドロップした気がする鬼のダンジョンだった。しかも何気に、良品の素材も混じっているし。
妖精ちゃんもこの結果には満足……と思ってたら、香多奈の開けたモモ缶の中身に夢中だった。もうすぐ夕食なのに、待てなかったのは意地汚いと言うか何と言うか。
それより新しい空間収納の鞄を入手して、これは姫香が持ってなさいとの護人の言葉で。これで取り敢えず、家族全員が魔法の鞄を所有するに至った次第。
それからすぐに分配出来て有効そうなアイテムだが、『身代わりのお守り』を最年少の香多奈が持っておく事に。それから『健康のお守り』を紗良が所有で決定して。
他の装備品は、良く分からないので家に帰って再分配と言う事に。
「え~っ、奇眼付与とか打ち出の小槌とか、面白そうなのがいっぱいあるのにっ! 姫香お姉ちゃん、般若の仮面とか使ってみたら?
性能はとってもいいし、ピッタリだよ?」
「アンタはいつも、一言多いのよ……さっさと鑑定しなさい、もう1枚は久々にルルンバちゃんの鑑定してみよっかな?
護人叔父さん、ついでにツグミに『魔鬼の首飾り』っての、あげていい?」
自分の相棒をちゃっかり強化する姫香だが、それは勿論愛情が元の行動なので。護人も構わないよと返事をして、これにて本当にアイテム分配は終了の運びに。
そして香多奈とルルンバちゃんの鑑定結果だが、色々と驚きの結果に。
【Name】来栖 香多奈/Age 10/Lv 13
HP 11/18 MP 16/34 SP 17/19
体力 E- 魔力 D 器用 E 俊敏 E+
攻撃 E- 防御 E+ 魔攻 D- 魔防 F
理力 E- 適合 F 魔素 E 幸運 C+
【skill】『友愛』『応援』『魔術の才』『天啓』
【S.Skill】《精霊召喚》
【Title】《溢れる奇才》
【Name】ルルンバちゃん/Age 08/Lv 12
HP 89/102 MP 10/19 SP 21/48
体力 C+ 魔力 F 器用 D+ 俊敏 D
攻撃 C+ 防御 B+ 魔攻 F 魔防 C
理力 E+ 適合 D+ 魔素 D 幸運 E+
【skill】『吸引』『馬力上昇』
【S.Skill】《合体》
【Title】《床マイスター》《庭師》
何と後衛専属で、いつまでもお茶っピイだと思っていた香多奈だけど。いつの間にかレベルが13になっていて、10歳にしては素晴らしい成長具合。
ただしステータスは年相応と言うか、それは当然なのだがどこかホッとする面々。幸運の値が少々高い程度で、後は前回よりちょっと成長した程度だろうか。
それよりも、いつの間にやらスキルに新しく『天啓』なんてのが生えているのが大問題だ。それを見た本人も、あちゃあと言った顔で黙り込む始末。
ただまぁ、MPの数値の上昇は本人も嬉しかった様子。これで家族に貢献出来ると、我儘で探索について行ってる免罪符を貰ったような感覚なのかも。
それにしても、やっぱり称号の《溢れる奇才》は酷いと思う。
対するルルンバちゃんだが、こちらも成長
ある程度は仕方無い事で、それよりはステータスの優秀さに目を向けるべきであろう。特に体力や攻撃力、防御力に至ってはBと秀逸な彼である。
そしていつの間にか生えていた、称号の《庭師》は彼にとっても誇らしいあだ名には違いなく。お手伝いこそが、彼がこの世に生を受けた本分なのである。
それは今後も、変わる事のない性分でもあるに違いなく。
1人と1機の鑑定の書での成長振りを眺めながら、ワイワイと騒がしい子供たち。ハードな探索業が終わったばかりだと言うのに、まだまだ元気いっぱいなのは褒められる点だろうか。
それが明日も続いてくれれば良いけどと、護人の心配はもっともである。引き返しの道中は順調で、天気もこの調子なら変に崩れる事も無さそう。
騒がしい車内のBGMを聴きながら、キャンピングカーは進んで行く――
長いトンネルを後戻りして辿り着いた集合場所には、既に何台かの車やらサポートカーが停まっていた。それぞれ距離を置いて、お互いテリトリーを主張するように。
護人もそんな連中と距離を置きたくて、ある程度離れた場所にキャンピングカーを停車させる。これから夕食だし、どうせ子供たちは騒ぐだろうから安全策だ。
話によると、ガラの悪い探索者チームもあると言うし。全く、数合わせとは言えそんなチームを招かなくてもとは、護人の偽らざる思い。
とにかく、この大規模レイドのリーダーにまずは挨拶に行かないと。
「それじゃあ、挨拶行って来るからみんなは車で待っててくれ。戻って来てから、一緒にキャンプと夕食の準備をしようか」
「私たちで先にやってるよ、お腹空いたしっ! いつもの手順で良いんだよね、叔父さんっ?」
キャンプに慣れている香多奈は、どうやら自分で全部やりたいお年頃らしい。それじゃあ任せるよと、紗良と姫香にそっと合図して護人はスマホを手に車の停まっていた場所へと向かう。
このレイドのリーダーは、ギルド『羅漢』から出向した雨宮と言う名前の人物で。会った事は無いが、オーバーフロー騒動で大変な向こうが出せた最大の誠意らしい。
その吉和の噂は、護人も協会を通して何度か聞いていたのだが。実際挨拶をした雨宮も、どこかやつれて大変そうな顔色をしていた。
それから、午後の8時に1度チームのリーダーが全員集まって、軽く明日の為のミーティングを行うとの事。それまでは自由時間で、夕食なり休憩なり好きにして良いそうだ。
今は夕方の6時前、一息ついて食事をするには充分に時間がある。
護人が戻ったら、キャンピングカーの周囲は結構な準備が整い始めていた。出迎えてくれたハスキー軍団は、車から出られてテンションが上がっている模様。
レイジーだけは、置いて行かれて不服そうだったけど。彼女は仕事に忠実で、護人の護衛仕事をおざなりにされると常にこんな感じで不満を表明するのだ。
とは言え、キャンプ拠点の方が重要防衛地には違いなく。姫香と香多奈には護衛犬が付いているが、紗良を守る者がいないのがネックで。
いや、ミケやルルンバちゃんを信用しない訳では無いのだが、この1匹と1機は自由過ぎるのだ。少なくともレイジー以上に、護衛業務に忠実な者はいないだろう。
そして護人が戻って来たのに、気付いて騒ぎ始める子供たち。
「あっ、護人叔父さんが戻って来たっ……キャンプの準備は着々と進んでるよっ、火をおこしたいから薪になるモノ取って来ていいかなっ?」
「ああ、ツグミをちゃんと連れて行くんだぞ、姫香。何も変わった事は無かったようだな……近くに他の探索者チームがいるから、刺激しないようにな」
「何か、喧嘩売って来るような怖いチームもいるんでしょ? 平気だよ叔父さんっ、ハスキー軍団が凄く張り切って護衛してくれてるから!」
どうもハスキー達も、近場に力を持つ探索者がうろついている現状が気に入らないようで。必要以上に張り切ってると思ったら、彼らを警戒しているらしい。
それはともかく、紗良の夕食準備は順調に進んでいる模様。車を利用してタープの屋根が掛けられて、その下にキャンプ用の机と椅子が綺麗に並べられている。
香多奈は姉が持って来た小枝に火をつけようと必死で、終いにはレイジーに着火を頼む始末。考えたら凄く便利な護衛犬である、普通はスキルをそんな事に使用しないだろうけど。
夕食にはバーベキューをするみたいで、ご飯はキャンピングカーの電気を利用して炊飯器で炊いていた紗良。
時短の目的も兼ねて、そこは妥協した模様である。
今年はキャンプでカレーをやってないとの香多奈の言葉で、今日の夕食はカレー+バーベキューに決定。特に手は込んでないけど、来栖家の畑産の野菜がたっぷりだ。
キャンプムードでテンションが上がっている子供たち、この一連の日程も大いに楽しむのはある種の才能かも知れない。明日もちゃんと舵取りしないと、何しろ半日作業なのだ。
10チーム参加の、大規模レイド開始まであと半日と少し。
――波乱の大規模レイドの幕開けまで、あと半日と少し。
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