第十三夜 夢の中では

 深夜にいつも目覚める男がいた。

 なぜ、目覚めるのか。それは、内容の違う奇妙な夢を毎晩見てしまうからである。

 それは、男がバイクで追いかけまわされたり、空から落下したり、はたまた指名手配犯になったりと多種多様な夢であった。

 男は、夢自体は気分の良い物では無かったが、一度目覚めてしまった後はしっかりと眠ることが出来たため、特に奇妙な夢を見ることについて、気にしてはいなかった。

 そんなある日、男はこんな夢を見た。

 男はとあるマンションの一室に居た。すると、そこで怪物に襲われている女がいる事に気が付いた。

 夢の中では、男は力を持っていた。そして、すぐさまその怪物を吹き飛ばし、女の怪我を治療した。

 男は女に感謝される……という所で目が覚めた。

 いつもの夢より比較的平和であったことに安心しつつも、いつもがいつもであるので、

 何か裏があるのではないかと疑ったが、所詮は夢である為、すぐにその違和感を忘れる事にした

 そして、男は再び眠りについた。

 次の日の朝、いつもの習慣で朝のニュースを見ていると、殺人事件が報道された。

 なんでも、女性が男性を刺殺したという事であった。

 男は、その報道に目を見開いた。

 というのも、加害者の顔写真が、昨日夢の中で助けた女の顔と完全に一致していたからである。

 因みに、殺害動機は痴情のもつれらしかった。

 男は、自分はとんでもない人間を助けてしまったのではないかと思った。

 同時に、夢の中で人を助ける場面に遭遇したことが何回かあったことを思い出した。

 男は、自分が気づいていないだけで、同じような事が今までもあったのではと考え、

 能天気に捉えていた自分の見る奇妙な夢が、急に怖くなった。

 それから、男は夢を見た後の寝付きがとことん悪くなり、とうとう壊れてしまった。

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