第九夜 根付く
景色の良い写真が添えられた海外土産を、友人からもらった女がいた。
そのお土産は、食用の種であった。
因みに、よく食べられる種として挙げられる、向日葵の種でも、かぼちゃの種でも無く、日本にはない
品種のもので、それがローストされ、塩で味付けされていた。
女は、種を食べる事に特に抵抗は無く、酒のつまみにそれを食べた。食感はカシューナッツに似ていた。
それから、女の身体に異変が現れた。段々と食欲が減退し、食べてもすぐに吐いてしまい、満足に食事を摂ることが出来なくなったのである。
一週間ほど経ち、とうとう女は病院に行った。
かかりつけの病院で、目に見えて体重が減った女の事を医師は心配した。
最初は、レントゲンを撮る流れになった。
何とかしてバリウムを飲み、女は検査を受けた。
すると、胃の中に影……植物のような影があった。
そう、通常ならあり得ない事であるのだが、女が食べた新種の種は、胃の中に根付いていたのだ。
これには医師も驚き、胃カメラの検査も行うことになった。
そして、そのカメラには、緑で覆われ、何やら食虫植物のようなものが根付いた胃の中が映し出された。
女はそれを認識したとき、胃の中からナニカがせり上がってくるように感じた。
その瞬間、その得体のしれない胃の中の植物は、女の気管支までも支配した。入れていた胃カメラはその植物に絡めとられ、癒着した。
医師があり得ない現象に呆然としている間に、女はあっけなく命を落としたのであった。
その後病院側は、胃の中に植物が生えていた、女の奇妙な死を隠ぺいした。
女の胃の中に植物が生えた要因を追及する人は、いなくなってしまった。
その為、女が貰った土産の種は、生産中止になる事も無く、今も世界のどこかで流通しているそうである。
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