第七章

第七章 一話 「帰還」

 解放戦線の一員としてマークされているため、ズビエに直接向かうことは出来ない幸哉は山下とともに隣国のゾミカで飛行機を降りると、ズビエ南東の国境から目的の国へと侵入した。


 数ヶ月ぶりに肌で感じる熱帯の湿気と暑さに目眩を感じそうになりながらも、行軍を続けた幸哉は直接前線へと向かう山下と分かれ、部隊の本拠があったプラへと向かったのだった。


「おお!幸哉!よく戻ってきたな!」


 化学兵器による攻撃から復興したプラの集落に戻ってきた幸哉を最初に出迎えたのは彼の戦友の一人であるエネフィオクだった。


「突然居なくなったもんだから、皆で心配してたんだぞ」


 恐らくは二度と戻ってこないと思っていた幸哉が帰ってきた事に興奮気味であるエネフィオクに対して、幸哉は冷静だった。大切な人を裏切り、暖かな幸せを日本に置いて、再びズビエにやって来た彼が関心のある事は唯一つであった。


「狗井さんの居場所が分かったのか?」


 開口一番、再会の挨拶よりも先に飛び出したその言葉にエネフィオクは一瞬呆気に取られたように呆然としたが、すぐに表情を引き締めると、無言で頷いた。


「だが、狗井さんの救出の前に俺達には大事な任務がある」


「大事な……、任務?」


 先程までの浮ついた様子とは違い、真剣な表情でそう告げたエネフィオクに幸哉は問い返した。この数ヶ月の間、ズビエを離れていて何も把握できていない青年の顔を見返したエネフィオクは再び静かに頷くのだった。


「ちょうど一時間後にその任務に関する作戦説明がある。指揮センターに来い」


 そう言って、背中を見せて立ち去っていったエネフィオクを見送った幸哉の胸の中ではまだその内容を知らない任務への関心が湧き立っていたのであった。

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