第65話 蜂狩り解禁3

 群れ全体の動きを観察しながら、蜂の群れに接近した。


 群れとは言っても、全ての蜂が川魚の群れのように同じ動きしている訳ではなく、三匹ぐらいの群体の集まりに過ぎないと見て取れた。


 (群れから少しでも離れた蜂から潰していこう)


 ルピナスに釣りの指示を出すと、僕の意図を理解してくれたらしく、一番外れを翔んでいた蜂に【風刃】を当て、こちらに一匹だけ引っ張ってきた。


 蜂狩りに一番慣れているディーネが、素早く【スプラッシュアロー】を放ち、狙いはたがわず蜂の頭部に突き刺さった。


 呆気なく一匹を仕留められた僕は、ディーネの準備を待って、ルピナスに二匹目の釣りを指示した。予想はしていたが残りの二匹は同時に襲ってきた。


 三匹には何らかの繋がりでもあるのか、一匹が倒された後は残りの二匹の動きに明らかな変化が見られ、小刻みに震えるような動きを見せ始めた。恐らくその動きが蜂の警戒状態なのかもしれない。


 空を飛んでいる有利さの薄いルピナスを消すと、一気に僕めがけて二匹が襲ってくる。

 

 準備していた、ディーネの【スプラッシュアロー】が一匹目の頭を撃ち抜いた。


 ディーネの【スプラッシュアロー】は連射は出来ないが、多少時間を置けば使用可能になる。


 再使用可能になるまで、残りの一匹は僕が受け持つ事になる。


 蜂は空中をかなり素早く自在に動けるようで、相手を翻弄するように動き回る。


 だが、麻痺針での攻撃時に一瞬空中で停止するので回避や、盾で弾くのは僕にとって其ほど難しい事ではなかった。これが二匹以上で連携してこられれば厄介に違いない。


 実際のところ、空中での素早い動きの最中に、近接武器を当てるのはなかなか困難に思われた。


 (蜂狩りが流行らないのは良く分かるな、釣りが上手くいかなくて三匹に一度に来られたら、パニックになりそうだ……)


 蜂からの二度目の攻撃の瞬間を狙い澄ましたように、ディーネが【スプラッシュアロー】を放ち、最後の蜂を仕留めてくれた。


 (蜂狩りに関してディーネの慣れた動きに、かなり助けられているなあ)


 僕は急いで仕留めた蜂から魔素吸収を行った。


 実際に吸収してみて感じた事だが、一層のレッサーラビットと比べると魔素濃度が濃くて精霊石も【おいしい】と言ってるように感じた。


 やはり層が深くなると、魔物の大きさに関係無く魔素吸収の効率が良くなる、強くなるには下層に降りるしか無さそうだ。


 小物狩りでも下層に行けば強くなれる、僕の今のやり方でも強くなれるのだ。


 三匹狩るのに、それ程時間もかからなかった。何よりウサギ狩りのように獲物を探索する必要もない。


 僕は短期間で更に強くなれるかもしれないという思いに、少し高揚した気分で、次の獲物に向かっていくのだった。

 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る