第49話 蜂蜜騒動2
「おい! 何も射つ必要はなかったんじゃねえのか? 子供みたいだったぞ!」一人の探索者らしき男が慌てたように、もう一人の男に叫んでいる。
「何、慌てなさんな、ありゃ妖魔だ、全くチョロチョロしやがって! さっきから、目障りで仕方がなかったんだよ!」小柄な男がそう悪態をついた。
「だからってよう」もう一人の男は大柄だが気弱な雰囲気だ、
「ケッ! デカイ図体して気弱なのがオメエの欠点だぜ! まったく何で俺ら風の牙がこんなチマチマした雑魚、占有してまで狩らなきやなんねえんだよ! いい物笑いだぜ!」小柄な男は相当気が強いらしい、頻りと文句をいっている。
「仕方ねえじゃねえか、俺達のクランは、ローダンヌ商会の支援を受けてるんだから」大柄の男がそう言った。
(どうやら、二人はローダンヌ商会に雇われた風の牙の一員らしい……でも確か妖魔って言ったよね)
僕は昨日シルフィーに聞いた妖魔の事を思い出していた。大人しいらしくて、蜂蜜が好物らしい。
(人間に攻撃する程、好戦的じゃないみたいだし、蜂狩りにきて巻き込まれたのかな?)
「そんな事は俺も分かっているよ、クソッ! 命中したと思ったんだが避けられたのか? 雑魚狩りし過ぎて腕が鈍っちまったぜ! えらい勢いで向こうの森にすっ飛んで行っちまいやがった!」
僕は嫌な予感がしたので、その男達に気がつかれないように、男の指差した方角に向かって、急いで走り出したのだった。
◻ ◼ ◻
慌てて走り出した僕だったが、方角以外に目算があった訳でもない。なかなか妖魔を見つける事は出来なかった。
(凄い勢いで逃げて行ったみたいだから、もう近くには居ないのかもな……無事だといいけど)
僕は、相手がダンジョン精霊と呼ばれる存在なら、浮遊精霊のルピナスなら居場所を見つけられるかもしれないと考え、ルピナスの召喚を行った。
「ルピナス、妖魔の居場所を探して!」僕は何ら確信があった訳でもなかったがルピナスにそう命じた。
「ピピッ!」暫く周囲を旋回していたルピナスが何かを感じたように一声鳴くと、更に森の奥に向かって飛んでいった。
暫く飛んでいたルピナスだったが、「ピッ!」と一声鳴くと地上に降りていった。
上空を飛んでいたルピナスを必死に追っていた僕が、慌てて駆けつけると、そこには人間で云うところの三歳くらいの大きさの子供が倒れていた。
子供は黒い色合いの服を着ており、薄黒い肌をしている。この子供が妖魔に違いないと思ったが、さてどう対処して良いのか困ってしまった。
迷っていても仕方ないので、ポーチからポーションを出し、矢を抜いてから傷口に少しだけポーションをかけてみた。
(妖魔にポーション効くのかな……せめて悪影響無ければ良いんだけど……)
僕の心配を余所にポーションは効果を発揮し、傷口は徐々にふさがり見えなくなった。
だが、傷口から魔素が抜けた為だろう、妖魔としての存在が希薄になってきており、全体的に薄く透明になってきている。
(このままにしておいたら、間違いなく消滅してしまいそうだ……)
僕はいよいよ困り果ててしまったのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます