第42話 初めての納品
探索者ギルドの前まで来て、獲物を持ってどうしようかと入り口近くで突っ立っていた。ギルドまで来たのは良いが獲物をどこに持って行くのか分からなかったのだ。
(この前ギルドに来た時は、獲物なんて持ってる人いなかったよね……という事は場所は別なんだろうな)
僕が周囲をキョロキョロ見ていると……
「坊主そんなとこ突っ立ってると通行の邪魔だぜ! 納品なら裏回りな!」後ろからやって来た、口は悪いが親切な中年探索者に教えられた。
「すみません! ありがとうございます」僕は慌ててギルド裏に向かってみることにした。
ギルド裏はちょっとした広場になっていて、レッサーボアなどの大物を降ろした探索者がギルド職員から獲物の検分をうけている。
(ギルドの建物に裏口があったのか、ここに入ればいいのかな?)
裏口から中に入るとカウンターらしき物があり、中年のギルド職員らしき人が立っていた。
「おお、レッサーラビットかよ! 珍しいじゃねえか」
表のギルド受付嬢達とは随分違う、砕けた感じの口調でそう話しかけてきた。
「このまま、お渡しすればいいんですか?」僕は勝手が良くわからないので、そう尋ねた。
「ああ、納品は初めてか? そのままで構わない。身分証持ってるよな?」
僕はポーチから身分証を出して手渡した。そして、もう一匹のレッサーラビットを出し、追加でカロさんに解体してもらった、皮と魔石も納品した。
「ほお、綺麗に皮取りしてあるな、それに獲物も首筋だけの傷でとても良い状態だ、これなら皮も買いとれるな」
(不意討ちや、ルピナスのおかげで、手間どらなかったからな……)
「レッサーラビットの解体料金は一匹当たり銅貨五枚だ、皮は一匹分で大銅貨一枚、魔石は銅貨五枚だな」そう言って、身分証を返してくれた。
「その身分証に今回の受け取り情報が記録されている。適当な依頼書を選んで受付に渡してくれ、清算してくれるはずだ。本当は事前に受付して貰うんだが、ウサギの依頼は余ってるから問題ないだろ」
僕は身分証を受け取り、表の受付エリアに繋がっている通路を教えてもらった。
(獲物持ってたらここ通れないのか)
一方通行の通路を通り、清算するため受付エリアに向かうのだった。
◻ ◼ ◻
受付エリアの掲示板で残っている依頼書から、ダンさんの依頼書は直ぐに見つかった。
(ウサギの依頼もそれなりに余ってるけど、まあボア肉で代用が十分訊くしダンさんみたいに困っている人は珍しいかな)
今どんな物が求められているのか知りたかったので、ついでに依頼書を見て回った。
僕が読んでも全く分からない魔物の素材なんかを軽く読み飛ばしていると……【急募蜂蜜のお願い、このままでは焼き菓子作れません!】という何やら、切迫しているような、いないような微妙な依頼書が目にとまった。
依頼書の内容は本人が記載し、ギルドが受け付けるようだったので、その依頼書が子供の字なのが気になってしまったのだ。
キャロが猪鹿亭で美味しそうに、焼き菓子を頬張っていたのを思いだした僕は「焼き菓子を作れないなんて大変だ」と呟きながら、その依頼書とダンさんの依頼書を剥がした。
そして、受け付けて貰うためにマリアさんの列に並ぶのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます