第27話 旧市街へ
昨日の夜は、色々考えてるうちにいつの間にか眠ってしまい、朝まで夢も見ることなく熟睡してしまったようだ。
少しばかり昨日より遅めに起き出した僕は、朝食を頂いた後、昨日借り受けた装備をゼダさんに紹介された鍛冶屋で見て貰うつもりだ。
半年前に引退したゼダさん達の装備は長らくマジックポーチの中で放置されていた。
これから本格的に使用するにはメンテナンスが必要になるだろうと言われたのだ。
猪鹿亭を出るときラナさんに、今日はダンジョンに入らず鍛冶屋に寄ってから、今日は時間があるので都市を見てまわるつもりだと伝えると、今日はウサギの煮込みと串焼きですと言われ、夕食が楽しみで仕方なくなった。
村では僕が食事の用意をしてたので、誰かに美味しい食事を準備していて貰えるのがこんなに嬉しいものだとは思わなかった。
◻ ◼ ◻
僕がこれから向かう所は旧市街と呼ばれる場所で、この地でダンジョンが発見され最初に入植が行われた場所である。
その後ガザフの急速な発展に対応出来なくなり、現在の南門と北門を結ぶ中央通りを中心に現在の新市街が新たに区画整備され、東に位置する一帯が旧市街と呼ばれるようになった。
猪鹿亭は南西部にあり、森林区画と呼ばれ、北西部にはこの地を納める辺境伯の領邸が存在する。
今回の目的地の旧市街へは、猪鹿亭を出て真っ直ぐ東へ向かい、交差した中央通りを越えて更に東へ向かう事になる。
暫くすると真新しい建物の多い新市街を外れ、少し古びた感じの石積みの家や、木の丸太を組み上げた村でよく見る家など統一感の無い街並みが見えてきた。
旧市街の中央通りに当たる、旧中央商店街通りには普通の店構え以外にも屋台や、露店も多数存在し、活気や品数だけなら、新市街の中央通り沿いに軒を連ねる商店に引けを取らないように思われた。
この都市に慣れない僕からすると、新市街の人を寄せ付けない少しよそよそしい雰囲気より、この場所の雑然としながらも親しみのある雰囲気が好ましく感じられた。
(昨日、中央通りの武器防具店で、相手にされなかったのが影響してしまってるな……)
目的の鍛冶屋を探して通りを北に向かう、暫く歩くと目印であるハンマーと金床の絵が書かれた看板が見えた、ダリル鍛冶屋が今日の目的地だった。
ダリル鍛冶屋はとても小さな店構えで商品等が置いてある訳ではなく、注文を受け武器や防具を作ってくれる。鍛冶屋とはそういうものらしい。
「うん? ここは子供の遊び場じゃねえぞ……ああ客かすまんな」いきなり怒られたので、僕は慌てて取り敢えず盾を出して見せた。
「防具のメンテナンスをお願いに来ました、ゼダさんという方からの紹介で……盾以外もあります」そう言ってレザージャケットを取り出した。
「随分酷い状態じゃねえか! それにこの防具は見覚えがあるな、テメエ紹介と言ったな、何があった!」
凄い剣幕で怒られてしまいました……
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