『黄金の骸骨』を探す30年の旅路の果て、あなたはきっとカタルシスを得る

戦後間もない昭和20年代前半、1949年夏。
1951年からの朝鮮特需、その後の高度経済成長など見通せない時代。
飢餓で行き倒れが珍しくない時代、ある養護施設『しあわせの村』で巡り合った4人の仲間たち。
「日没に骸骨が踊るらしいぜ。すげぇんだ、黄金なんだってよ」
1人がこう切り出して、4人は『黄金の骸骨』を探しに旅に出る。
幾多の川を越え、泥道を歩き、時に命の危険もある冒険の旅へ――。

丹念な時代描写が特徴の巧みな筆致は、その時代を知らない私たちの脳裏に、色彩のある光景を映し出す。
この作品は映画を見るように読むことを勧める。映画の中身が理解できなくて、もう一回眺めてみると違った理解が広がる。
キャラクターの関係性を理解したいなら、プロローグから第1章が終わる第4話までとりあえず読み通してみて、もう一度プロローグから読んでみると良い。
そうすると、プロローグで描かれた一人ひとりが誰か、よくわかってくるだろう。
そして、キャラクターの味がインプット出来たら、後はエピローグまでワクワクしつつ読み進めることができるはずだ。
一人ひとりの人間の生き様が、醜くも美しく描かれる感動はレビューに書きようがないほど、見事である。

プロローグは1977年の話、本編は1949年の話と、年代が行ったり来たりする。
その点に少し困惑するかもしれないが、本作は「1977年の主人公による一種の回顧録」なのだと言われれば、ご納得されるかもしれない。

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